Members Column メンバーズコラム

真摯に向き合う

藤川昌浩 (有限会社デジタル・マイスター)  Vol.74

藤川昌浩

私は2002年9月6日に有限会社デジタル・マイスターを設立し、代表者と
して今日に至っておりますが、拙い経験の中で迷うことがあります。
特に、セミナーの講師や高名な方の言葉の中には、素直に納得できることも
あれば、そうでない場合もあります。例えば、「苦しいときほど明るく振舞
え」という言葉には納得できるところがあります。逆に、会社設立セミナー
の講師が「会社を設立するときには経営理念はいらない」という台詞には反
発を覚えました。しかし、中にはどのように解釈してよいか、あるいはその
時の自分と照らし合わせて悩むこともあります。

あくまでも一例ですが、私を悩ませた言葉の中に「部下を叱れない上司は失
格だ」というのがありました。
若かりし頃の私は、上司から叱られ続けながら鍛えられてきたタイプです。
叱られながら成長して行くものかな、と思ったこともありました。また、部
下を抱えるようになった頃は部下をほめたり、叱ったりしながら育成してき
た気になっていた頃もありました。
しかし、そのようにして育てられた自分ではありますが、最近では部下を叱
らなくなりました。その理由やポリシーという大げさなものは持ち合わせて
いませんが、「叱る」という方法とは別の方法で部下を育てることをしよう
としているからかもしれません。
それは、山本五十六の「やってみせ、云って聞かせて、させてみて、誉めて
やらねば人は動かじ」という言葉に出会ったからかもしれませんが、人を育
てる方法はいくつもあって1つの方法にこだわることはないと思い至ったか
らだと思います。すなわち、その人を育てるために叱る必要はないと私が思
えば、別の手段を講じることにしています。
これはひとつの例でしたが、この手の類の言葉に出会うと、ついついその時
の自分の姿と照らし合わせて迷うことがあります。
そのようなときに迷わないようにするために決めたのが「経営理念」のはず
ですが、具体的な方針や計画、アクションプランに落とし込んでいくとき、
他人の言葉を耳にしたときに迷いが生じます。そんな時、「真摯に向き合っ
ているか」と自問自答するようにしています。真摯に向き合ってその方針を
決めたか、真摯に向き合った結果がこの計画か、という具合です。本来はど
うあるべきか、尊敬するあの人ならどうするか、等々の思いもめぐらせなが
ら、時としてKJ法の真似事をしながら自分の仕事に取り組むわけですが、
「真摯であるかどうか」という切り口でも自分自身をチェックするようにし
ています。ここで書いたように簡単なことではありませんし、実際にどこま
で出来ているのかはわかりませんが私自身は心がけえているつもりです。
先に「叱る」例を書きましたが、真摯に向き合った結果が部下を叱るのも、
真摯に向き合った上で部下を叱らないのも、どちらも正解だと思い至るよう
になりました。
仕事に対して真摯に向き合って行動すれば、自ずと小さな変化が生まれ、新
しい光も見えてきて、やがてはイノベーションにつながって行くのではない
かと思っています。
話は急に変わりますが、今、日本は原発問題で揺れています。この問題はあ
まりにも大きいので、リーダーは迷いに迷って場当たり的な対応で四苦八苦
しているように見えます。また、電力会社の幹部や技術者を呼び付け怒鳴り
散らしたとも漏れ聞きました。こういうときこそ、リーダーは自分の職務に
真摯に向き合うべきだと思います。

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