Members Column メンバーズコラム

人との出会いは不思議なもの

安田耕三 (NPO法人メディカルルーツ 事務局)  Vol.281

安田耕三

人生どの時に誰と出会うのか、今までの生活を振り返ってその不思議さ、重要さに気づきます。
あの人と出会ったからこうなった、これが出来た。出会いはひょっとしたら人生を楽しくするために、神様が人に与えてくれる贈り物なのかも知れません。現在行っているNPO法人メディカルルーツも、このジャンルに入るのかも知れません。
メディカルルーツ設立のきっかけは、甲南大学で実施していた甲南ニューフロンティアサロンに端を発します。甲南大学のフロンティア研究推進機構に所属していたときに、甲南大学のOBの方と始めたサロンは、毎月1回30名程の方々にお集まりいただき、企業の方が企業の宣伝をしてもらっても良いなどゆるゆるの規約でスタートしました。

このサロンに、元京都大学の医学部の先生だった田中紘一先生がこられたのが始まりでした。田中先生は生体肝移植の分野で多くの手術の実績があり、国内はもとより国外の病院でも積極的に生体肝移植で多くの方々を手術されて、その数は2000例を超えます。田中先生には、2~3回このサロンで話題提供をしていただきました。その時のご縁で、ポートアイランドに循環器専用病院(神戸国際フロンティアメディカルセンター、通称KIFMEC病院、)を作るのだという強い想いを持っておられた田中先生の想いを、何かの方法でサポートしてみようと思うようになりました。
KIFMEC病院が漸く設立されることになり、建設が始まった頃、患者家族を支援する組織が出来れば、多くの患者家族が助かるのだけれどとの話を聞いて、患者家族の為になるような組織としてNPO法人の立ち上げを検討しました。あくまで患者家族が中心で、これまで各病院ごとに患者会がありましたが、これを横断的に結びつける全国組織を目指す団体です。
理事には患者家族及び趣旨に賛同をいただいた方々になっていただき、2013年からNPO法人の申請に向けた検討を行い、設立に向けた設立総会を開いて基本となる定款等を決め、2013年11月には神戸市に法人の申請を行い、2014年3月末には法人としての登記を行ってNPO法人メディカルルーツが誕生しました。法人の年度が6月1日から翌年の5月31日までと決めたため、初年度は2ヶ月の活動、二年度目で漸く一連の年度計画を作って運営する形を整えました。
2014年度は、計画に従い理事会、総会、そして宣伝の為にホームページの作成及び記事の掲載、講演会やシンポジウムの開催などを行いました。その間KIFMEC病院が完成してそのお披露目が2014年11月に行われ、順次生体肝移植の手術も病院で始まりました。NPO法人として患者家族の支援の立場から、病院に入院されている家族の方に、退院後の食事のアドバイス等の活動を行いました。
その頃KIFMEC病院での手術で助からなかった人が多いことが、テレビや新聞報道で大々的に報道されて、KIFMEC病院における手術に待ったがかけられる事態が発生しました。多くの報道は残念ながら助からなかった患者さんにのみ焦点をあててKIFMEC病院のあり方を避難する内容となっていましたが、患者家族の立場からは大きな違和感がある報道となっていました。
そもそもKIFMEC病院は神戸の医療特区で、多くの病院群と協力して高度な医療を提供する事をコンセプトに設立された病院です。その特徴は生体肝移植でしか、治療できない患者さんの手術を行って行く事が最大のポリシーとなっています。多くの大学病院等で、手術は出来ないと断られた患者さんに、希望の光を与えてくれる病院です。
その病院が手術をできない状態になれば、多くの助かる可能性のある命が助からない事になりかねないとの強い危機感から、マスコミ各社にNPO法人メディカルルーツとしての声明文を送って、私たちの想いをぶつけました。
今後どの様に事態が推移していくか解りませんが、助かる可能性のある命を、助けるのが医療の本質であれば、KIFMEC病院での手術の再開を祈るしかありません。

以上の様に、田中先生との出会いが、今のNPO法人メディカルルーツの設立に繋がり、法人の活動が現在の医療現場の種々の問題と向き合う事になろうとは夢に思っていませんでしたが、これからも出会いを大切にして、世のため人の為になる活動を行って行きたいと思っています。
出会いの大切さは、必ず飲んで騒ぐKNSも全く同じだと感じる今日この頃です。

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