Members Column メンバーズコラム

梅田の夏祭~露 天神社(お初天神)例大祭~

大野賢一 (阪急阪神不動産)  Vol.752

皆様、こんにちは。5年ぶり2度目の登場、阪急阪神不動産・大野でございます。

先月末から今月初め、当コラムでは、梅田地区に新たに出現したまち「グラングリーン大阪」について、積水ハウスの神門様や弊社の橋本(武士)君から寄稿があったところですが、今回は、誰にも望まれたわけではないのに勝手に、それに続く三弾目として梅田地区に関連するお話をお届けしようと思います。

さて、このコラムを書いている現在では、近畿地方が既に梅雨入りしたものの、すっかり夏、というか猛暑になって、日中の気温とともに不快指数が急上昇してきているのですが、例年この季節になると梅田地区で就業している僕は、いわゆる『夏祭り』の準備でそわそわバタバタし始めます。

え?なに?梅田にお祭りってあるの??と思う人は多いと思います。大阪で『夏祭り』といえば7月25日に行われる大阪天満宮の天神祭や生國魂神社の生國魂祭、住吉大社の住吉祭などが大阪三大祭(諸説あり)として有名ですが、梅田というまちでは(ここ十数年は、弊社らが関係している梅田地区エリアマネジメント実践連絡会の活動の一つとしての『梅田ゆかた祭』はありますものの)、古くからの伝統的なお祭りってあまりイメージが湧かないのではないでしょうか。梅田は、ご存じのとおり明治7年(1894年)の大阪駅の開業以降にまちとして発展してきた経緯があるので、歴史も130年と浅く、これはしかたないことかなと思います。

ところが、(言われてみれば皆さん思い出す筈ですが)キタの繁華街「曽根崎・梅田地区」には、総鎮守『露天神社(つゆのてんじんしゃ)』(いわゆる「お初天神」)が鎮座されておりまして、しっかりと古くからのお祭りが残っております。僕が先述した『夏祭り』とは、同社の例大祭のことを指します。

同社の創建年は不明で(奈良時代以前とのことでひょっとしたら欽明帝(在位:539~ 571年)の御代に遡るかも?だとか?諸説あり。)、社名についても平安時代、やはりあの菅原道真公が大宰府に左遷配流される途中、太融寺への参詣の道すがらお詠みになった露の歌にちなむとのことで(諸説あり。)、いずれにしてもかなり古くからあったようです。

露天神社例大祭は、大阪の三大夏祭や京都の祇園祭のように、梅雨明け直後でこれから暑くなる時期にむけ、人々の健康を祈るために行われたものだったのだろうと思われます。同社では、7月第3土曜日に夏祭(本宮)が行われますが、生國魂祭や祇園祭もだいたいこの前後ですし、天神祭はこの後の24・25日に、住吉祭も本宮は月末ごろに行われます。

露天神社例大祭の本宮はお昼前くらいから神事が神社内で斎行され、正午から「役太鼓」(太鼓を積んだ地車(だんじり))が、6人の打ち子と呼ばれる装束に身を包んだ太鼓の叩き手(十代の若者たち)を乗せ、たくさんの曳き手たちとともに宮出し、氏地である梅田、曽根崎そして曽根崎新地(北端)に向けて元気よく出立していきます。次いで、「舞獅子・お囃子・傘踊り」(主に児童が多い)で構成)」が宮出し、「役太鼓」とは若干別経路で、時にはお囃子を演奏しながら華やかに氏地を練り歩きます。

「役太鼓」と「舞獅子等」はそれぞれおよそ100人超くらいでしょうか、子供から大人までの大軍団が、阪神百貨店や大阪駅前ビル周辺、ヒルトンプラザや、ハービスENT/OSAKA、大阪駅、お初天神商店街など繁華街やらビジネス街を、猛暑の中を約10時間かけて巡行していきます。

行く先々では、巡行を待つ人々(地権者さんやビルオーナーさん)が待ち受けていてお迎えし、お初穂をお納め(これが一番重要)して、「役太鼓」では「手打ち」(「大阪締め」とは微妙に違いのある独特の締め)をして言祝いでもらい、「舞獅子」が到来した際には獅子に頭を噛まれて、商売繁盛や家内安全を祈念します。そのほか、梅田の各所には地元の町会さんが中心となって接待所が設置されていて、巡行する人々を冷たい飲み物や食事などでおもてなしをします。ちなみに僕は、もともとは25年以上前、阪神西梅田Ⅱ期開発(ハービスENT)の街区整備を担当していた際に、梅田2丁目の地元の方々に大変お世話になり、このお祭りを知りました。以来、通算で約20年、ハービスOSAKA東端の円形広場内に設置された梅田2丁目振興町会さんの接待所に詰め、地元の方々と共にお接待をして、獅子に頭を噛んでいただいております。

お祭りの見どころは二つあり、一つは夕方16時ごろの大阪駅前交差点内(文字通り、大阪駅の南出口の正面の道路です)での「役太鼓」の切り回しです。この時だけは、信号が赤であろうが青であろうが、大阪駅前線の一般通行車両は、お祭りに随行しておられる曽根崎警察署の交通課規制係長以下皆さんの見事な裁きによりピタリと規制され、何者もいない交差点内に進入した「役太鼓」の一団が元気よく地車をグルグルグルグル曳き回し、「手打ち」を派手に行います。この僅か2分ほどの間は、まさに息詰まる必見の瞬間です。(こんなにエキサイティングで大がかりな交通整理が可能なのは曽根崎警察署さんだけかと思います。)

二つ目は、まさに祭が最高潮に達する夜の宮入りです。蒸し暑い夜21時ごろ、氏地内すべての巡行を終えた「役太鼓」「舞獅子」の一団は神社に帰り宮入りします。

「役太鼓」の宮入りは、鬼気迫るものがあります。曳き手の皆さんは、疲れた体で最後の力を振り絞り、神社の参道を境内に向かってもの凄い勢いで突進しては急停止し、また参道に戻っては再度突進して退出、と、奉賛会長以下役員の皆様のお許しが出るまで何度もこれを繰り返します。

お許しがようやく出て、「役太鼓」が境内に入り最後の手打ちを盛大に行った後もまだ終わりません。「役太鼓」上の打ち子たちが、祭の名残を惜しむ様に6人息を合わせ、太鼓の1本締めを行います。これを観衆も固唾をのんで見守り、蒸し暑い夏の夜にシーンと静寂と緊張が漂います。これも、役員の皆様が納得する一打が出るまで静かに繰り返されます。最後は、祭りの余韻を楽しむかのように頷く奉賛会長の「よし」という一言で、ようやく皆ホッとして終了。そして境内からは拍手が沸き起こり、また汗がどっと噴き出す。この瞬間がたまりません。

こんな猛暑の中、朝から晩まで、例大祭の日は本当に疲れます(境内でのお神酒の振舞など頂戴するとなおさらです笑)。巡行される人たちは、大人も子供も大変です。不思議なことに、例大祭が雨に見舞われた、とか雨で中止、など経験したことがありません。何回もこのお祭りを見てきましたが、たとえ前日まで物凄い豪雨が降っていたとしても、この例大祭本宮の当日だけは嘘のように上がり、ギラギラした日差しのもと陽炎の立つ梅田に、太鼓や囃子が響き渡り梅田の夏が始まります。今年は7月19日(土)に行われます。ご興味ある方はぜひ、お昼から梅田にお運びいただき、夏の始まりを全身で感じていただきたいと思います。

なお、その日と翌20日は、前述の「梅田ゆかた祭」のメインコンテンツ(盆踊り)が開催される日でもあります。「梅田ゆかた祭」は、梅田地区エリアマネジメント実践連絡会(JR西日本、阪急、阪神、グランフロント大阪TMO、大阪メトロの5者で組成)が中心となって催行する大きなお祭りで、今年で12回目を迎えます。梅田の伝統的なお祭りと、新しいお祭りの両方が体験できるまたとないチャンスですので、皆様ぜひ浴衣を着てお越し下さったらいかがでしょうか。お待ち申し上げております!

露 天神社 https://tuyutenjin.com

梅田ゆかた祭 https://umeda-connect.jp/yukata/matsuri2025/

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