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兵庫県立大学での『経営診断実習』について

樽谷 昌彦 (株式会社関西経営サポートセンター)  Vol.672

みなさん、こんにちは。樽谷昌彦と申します。また順番が回ってきました。

今回が4回目です。最初は、2010年「私にとってのKNSとは?」(56才)、2回目、2012年「独立開業後の5年半を振り返る」(59才)、3回目、「人生100年時代において、今までとこれからを考える。」(67才)、そして今回(70才)です。

今回も寄稿のご連絡を頂き、色々と悩みましたが、兵庫県立大学大学院での「経営診断実習」の指導員としての取組みについて、書かせていただくことにしました。

初めに、少し自己紹介をさせていただきます。私は1976年に大学を卒業し、尼崎信用金庫(以下、尼信)に入庫しました。尼信では、営業店勤務や本部勤務を経て、2007年4月に退職し、5月に(株)関西経営サポートセンターを設立し経営コンサルタント業として独立しました。独立できたのは、このKNSに入会し様々な方々とのご縁ができたからと思っています。

独立後の主な仕事としては、今回ご紹介させていただく、兵庫県立大学大学院での指導員の他、(独)中小企業基盤整備機構近畿本部での地域資源活用のアドバイザーや、全国信用金庫協会での信用金庫職員向けの研修等に取組んでいましたが、本年で70才になり、昨年から少しずつ減ってきています。今は、数社の企業様の顧問をさせていただいています。

まず初めに、ご紹介させていただく、兵庫県立大学大学院で担当させていただいている、「経営診断実習」について、説明させていただきます。

兵庫県立大学では、2010年4月に MBA (経営専門職大学院)を開設し、 地域や企業の活性化を担う高度な経営専門家の育成を図っており、その中に 国公立大学、西日本では初めてとなる「中小企業診断士登録養成課程」を設置されています。

この「中小企業診断士登録養成課程」は、2年間となっており修了し卒業すれば、MBA と中小企業診断士の資格が取得できます。また、この期間の中で、色々な形で実際に中小企業を訪問し「経営診断実習」を5回実施します。私は、この「経営診断実習」の4回目の

「戦略策定Ⅱ」というパートを1期生から担当させていただいており、今年は、13期生を担当し先日終了しました。毎年、10月中旬~11月初旬(13日間)の実施です。学生は、主に社会人の方々で、中小企業診断士一次試験合格者となっています。

尚、こちらの内容については、本年9月に開催された「第75回定例会 in 流通科学大学」において、秋山秀一先生から「働きながら学び、交わる~兵庫県立大学大学院 MBAコースの取り組み~」というテーマでご紹介をしていただいていましたのでお聞きいただいた方々もおられるかもわかりません。また、数名の卒業生の方々もプレゼンをされていました。

https://www.u-hyogo.ac.jp/mba/outline/course.html

ここで、「中小企業診断士」の資格取得について、少し補足説明をさせていただきます。

資格取得には、まずは、中小企業診断協会が実施する第1次試験に合格することが必要です。第1次試験合格後、次の2つのうち、いずれかの方法により、中小企業診断士として登録されます。

(1)協会が実施する第2次試験合格後、実務補習を修了するか、診断実務に従事する。

(2)中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程を修了する。

兵庫県立大学大学院で実施しているのは、この「(2)登録養成機関が実施する養成課程」です。この(1)の第2次試験がなかなか難しいために、(2)の方を選択される方々もおられますが、第2次試験を受けずに、登録養成機関へ行かれる方も見受けられます。特に、兵庫県立大学大学院では、2年間しっかりと勉強し、診断実習も5回経験する方が将来に役立つと考えておられるのではないかと感じています。

養成課程の実施内容は、各養成機関によって異なりますが、兵庫県立大学大学院では、卒業すれば、MBA と中小企業診断士の資格が取得できます。現在、養成機関としては近畿圏では、兵庫県立大学以外には大阪経済大学、関西学院大学も実施されています。 

前置きが長くなりましたが、兵庫県立大学大学院の「中小企業診断士登録養成課程」での取組みについて、少し記載させていただきます。

1期生から担当させていただいていますが、まずは、担当させていただくまでの経緯から記載させていただきます。

独立後に、以前から存じていた中小企業診断士の方から電話をいただき、お誘いを受けました。内容は、「今度、兵庫県立大学で、中小企業診断士を養成するコースを設置するので実習指導員にならないか。」でした。私は、診断実習という経験があまりなく、実際に経験していたころからは、少し時間が空いていましたので、自分には難しいと思い、「自分には難しいと思います。」と返事しました。しかしながら、その電話の方は、「できる。大丈夫。」と言われましたので、「秋山先生と相談するので時間をください。」と返答しました。担当されている秋山先生とは、KNSで以前からお付き合いがありましたので、その後、ご相談させていただき、引き受けさせていただくことにしました。あの電話と「できる。大丈夫。」という言葉のおかげで、現在、指導員の業務を担当させていただいており、今となっては、担当させていただいてよかったと思っています。これも、人とのつながりを大切にしていたおかげだと思っています。

実際に第1期生の指導をさせていただくまでには、その後、数年かかりました。大学が認可をいただくのに少し時間がかかったようです。

さて、第1期生の実習が始まることになり、事前に訪問する企業が決まりました。業歴が長く、業績もいい会社でした。その内容を見て、このようないい内容の企業で、果たして課題や問題点があるのだろうか?診断実習がうまくいくのだろうか?と思ったことを思い出します。その後、担当する班員も決まり、班員との打ち合わせが始まりました。

このコースでは、1学年16名なので、診断実習では、2班に分かれて、2社の企業に対して各班8名ずつで班長、副班長を決めて指導員も各班に1名ずつ付いて班で行動します。

前に記載していますように、学生は、主に社会人の方々で、中小企業 診断士一次試験合格者となっています。皆さんのご職業やご経歴を見ると、金融機関関係の方々の他、それぞれにご経験が豊富な方々が多くおられました。中には、企業経営を実際にされている代表者の方等、経験の豊富な方々がおられましたので、私は、この方々を上手く指導ができるのだろうかと心配になったことを思い出します。しかしながら、その心配はその後の意見交換等で徐々に薄れていきました。

診断実習とは、一般的には、事前に概要の資料をいただき、質問事項等を準備したうえで、企業に訪問し、現場を確認しヒアリングをさせていただいた上で、追加の資料をいただき、その後、班内での意見交換を実施します。その結果、問題点を見出し、課題設定と改善提案、最後に中期事業計画を作成して報告するというものです。プレゼン資料を作成し報告会も実施します。

まずは、業歴も長く業績もいい会社であっても、やはり、どこかに課題があり、将来を見れば、色々な取組みが必要となっているケースが多いということがわかりました。

次に、学生の方々への指導について、最初は心配していましたが、班員の皆さんと意見交換をする中で、私は、信用金庫で長年、多数の企業と面談し、様々なご相談等へ対応してきたことで、学生の皆さんが気づかないことや分からないことを感じることができるようなので、その点が指導に役立つということを少しずつ実感できるようになってきました。その結果、現在まで続けることができています。

診断指導期間中は、「厳しく・優しく・育てる」という気持ちで毎年取組んでいますが、

私は元々厳しいタイプだと思うので、もしかしたら、私が担当した卒業生においては「厳しい先生」になっているかもわかりません。しかしながら、ここは大学なので、「育てる。」という気持ちが大切と思っています。

担当させていただいた学生は、毎年8名ずつで13期を終えましたので、累計100名を超えました。直接担当をしていない方々もおられますが、1学年16名なので、200名以上の方とのつながりがあります。

卒業してからも、卒業生の一部の方々とは一緒に仕事したり、仕事を手伝っていただいたり、独立のご相談に乗ったり、情報交換をしたり等しています。

独立後、色々な仕事をさせていただきましたが、若い方々や、前向きに取り組もうとされている方々と出会える、兵庫県立大学大学院での指導員としてのお仕事は、楽しく担当させていただきました。しかしながら、ここも定年が近づいており、多分来年又は早ければ今回で終了することになると思いますが、今後も卒業生との交流を深めていこうと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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