Members Column メンバーズコラム

欧米市場の開拓に注力中!

稲付嘉明 (カワソーテクセル株式会社)  Vol.673

<当社がこれまで実行してきた欧米市場開拓のポイント>
英語ホームページの開設
海外展示会への出展
英語ができる社員の採用
内閣府のプロフェッショナル人材紹介を活用
海外での連絡先の設置
海外企業への見積書作成の経験
輸出の手続に関する知識

10月21日から29日まである経済団体の視察でイスラエルを訪問する予定があり、その視察記をこちらに投稿する予定でしたが、出発まで2週間をきったところで、やむなく延期(というより中止)となりました。
そこで、かわりに今回は当社の欧米市場開拓の状況について投稿します。

1.会社の紹介
まずは会社の紹介をします。当社は、明治10年(1877年)、愛知県瀬戸市にて磁器製洋食器の製造業として、創業した会社です。磁器は電気を通さないという特徴があり、大正時代にこの特徴を活かし、碍子(電気絶縁物)を製造するようになり、電力会社や鉄道会社向けに事業を展開しました。現在もこの事業は当社の主力であり、日本国内の電力会社や鉄道(大阪メトロ、ポートライナー、ゆりかもめ等)で使用されています。
1980年代、ファインセラミック市場にも進出しました。こちらも碍子同様電気絶縁物です。こちらは寸法精度よく加工できることから、主に装置部品として使用されます。当社はファインセラミックと金属を隙間なく接合する(接合部位は空気を通さないレベル)技術を有しており、主に真空装置内への電源導入部(電流導入端子と呼ばれる部品です)で使用されています。異なる素材を接合する技術で、国内での競合先も数社しかありません。また、この接合技術を金属同士の接合にも応用し、主にパワー半導体を冷却する水冷ヒートシンクを製造しています。
欧米へは、競争力のある接合技術を用いた製品に絞って、電流導入端子をはじめとするセラミックと金属の接合品や、水冷ヒートシンクの拡販をはかっています。

2.欧米市場展開のきっかけ
きっかけとなったのは、取引のある国内重電メーカーの方から、当社の水冷ヒートシンクは海外(特にヨーロッパ)でも十分競争力があるといっていただいたことでした。この言葉を真に受け、まずは海外展示会への出展と英語ホームページを作成しようと考えました。

3.ハノーバーメッセの視察
2016年ドイツのハノーバーメッセを視察。27の展示ホールがあり、展示会場の移動にバスを使うような広さで、その規模に圧倒されました。
国内の展示会は年に数回出展していたのですが、海外での経験は皆無です。ノウハウがありません。ハノーバーメッセには、その当時(株)NCネットワークさんが日本の中小企業を集めて共同出展されていました。ブースの設営、展示品の輸送手続き、配布物の作成、通訳の手配等のノウハウがないので、当社もNCネットワークさんの共同出展に加わる事を決め、2017年出展することにしました。

4.英語のホームページの作成 韓国からの留学生が担当
作成するにあたって頑張ったのは、2015年に採用した韓国からの留学生でした。もともと韓国企業とは取引があり、韓国人留学生を採用することで、さらなる市場拡大を狙うというのが採用の目的でした。その社員は日本語だけでなく、英語もできました。後に中国からの留学生も採用したのですが、その社員も英語ができます。日本人で英語ができる社員を採用するより、留学生を採用した方が英語ができる可能性が高いように感じます。

5.2017年ハノーバーメッセ初出展
NCネットワークさんの共同出展ブースに初出展しました。展示スペースは幅2mまでで展示品も限られてはいましたが、本当にいい経験となりました。展示会出展へ向けて準備するスケジュール管理ができるようになったこと、ドイツ在住の日本人通訳の方との関係性ができたこと、それから、後にドイツ人の販売代行業務をお願いする会社の方と知り合えたことが成果でした。通訳の方は、その後の展示会でもお願いしています。何度も繰り返しお願いすることで、当社製品に関する知識も持っていただき本当に助かっています。
ただ売上については、成果はありませんでした。そんなに簡単ではないと思い知らされました。
ハノーバーメッセへの出展は、その後もNCネットワークさんの共同出展ブースにお世話になり、2019年まで3年継続しました。
ハノーバーメッセの印象としては製造業全体に渡って網羅されていて会場も広く、偶然の出会いはまずありません。間口の狭いニッチ分野で取引先を見つけるのは難しいと感じました。

6.2019年PCIM出展
ヨーロッパ市場への拡販を勧めてくれた重電メーカーの方にハノーバーメッセ出展の話をしたところ、半導体に特化した展示会があることを教えられ、特に水冷ヒートシンクだとその展示会への出展を勧められました。
その展示会は、PCIM(Power Conversion, Intelligence Motion)という、ドイツ・ニュルンベルクで毎年開催される世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会でした。
2018年に視察したところ、欧米の水冷ヒートシンクメーカーも多数出展しており、潜在顧客との出会いが期待できると考え、2019年の出展を決めました。初出展の成果としては、めぼしいものはありませんでした。気づきとしては、ブースデザイン面でいうと、宣伝色の濃いブースは敬遠されるのか少なく、イメージが優先されている洗練されたブースが多い、ブースはなるべく囲わず中に入りやすいオープンなデザインが好まれる印象でした。

7.英語への対応他社内対応力強化
2017年以降、以下の事に取り組みました。
1) 英語ホームページのブラッシュアップ
ホームページを製作したのは2016年だったのですが、完成度はまだまだで実際に問い合わせが来るようになったのは2019年になってからとずいぶん時間がかかりました。現在も尚、ホームページのブラッシュアップはかかさず行なっています。
例えば、その国ごとに、Googleで当社の水冷ヒートシンクは何番目に出てくるのかなどを調べ、SEO対策を講じています。毎月課題を整理して内容を見直すことで、検索順位を上げる努力を継続しています。
また、海外留学生のインターンシップで、ホームページの英語表現のネイティブチェックを課題とするような取り組みも行いました(某外大の学生さんにお願いしました)。

2)ドイツ、アメリカで現地連絡先を設置
やはり現地に連絡先があるのとないのとでは、お客さまにとって安心感が異なります。2017年のハノーバーメッセで知り合ったドイツ企業の方のオフィスを現地連絡先とし、ヨーロッパからの問い合わせに対応してもらっています。また、英語のホームページは.comで、メールアドレスは.deを用意し、日本ではなく現地で時差なく対応できる環境を用意しました。
アメリカも同様に、現地企業に連絡先をお願いし問合せしやすい環境を整備しています。

3)英語が使える社員の採用
日本人で英語ができる社員を採用するのは、なかなか難しいと感じています。留学生を採用すると英語ができる場合もあり、そのやり方もあると思いますが、主となるのは母国語の活用なので、海外人材ばかり雇用することもできません。
今回ありがたかったのが、内閣府が行なっているプロフェッショナル人材事業です。
2019年、その事業を通じて、大手企業で海外駐在経験のあるシニアの社員を採用できました。経験のある社員を採用することでやり取りがスムーズになり、英語での電話がかかってきても対応できる職場になりました。またあわせて、コロナで世の中の景気が停滞していた2021年は比較的採用が追い風で、日本人も、英語ができる営業経験者や輸出業務の経験者を採用できました。

4)見積への対応
経験者の採用で、非常に助かったのは、見積に関する点です。経験者を採用する前に英語のホームページを立ち上げたのですが、いざ見積もりの照会が来た際、本当にあせりました。
見積書のなかに、売主・買主間の物品の引き渡しに関する負担区分を示すアルファベット三文字(例えば、FOB、EXWなど)で表されるインコタームズ(Incoterms)を取引条件として明記する必要があり、どの区分で進めるのが一般的なのかよくわかりませんでした。
そのほか、お客さまからプロフォーマインボイス(Proforma Invoice)という「仮送り状」を要望される場合もあり、何のこと?みたいなことも数多くありました。問い合わせが来てほしいとばかり思って、ホームページをブラッシュアップすることだけに注力し、その先のことを考えてなかったと反省しきりでした。
今では、こういった経験者の採用で、当たり前のように対応できるようになり、社内対応力も向上し、海外への販路開拓が順調に進むようになりました。

5)リモート会議の活用
コロナの副効用として、リモートでの会議がやりやすくなり、多くの企業でその環境への対応が当たり前になったことも助かってます。
ヨーロッパは日本との時差が7〜8時間なので、日本時間の16~17時から現地と繋いで打ち合わせできますし、アメリカでも西海岸であれば日本時間の早朝であればミーティングは可能です。この点はコロナのおかげだと思っています。距離を感じない打ち合わせができるので、出張もほとんど必要ありません。

8.2023年 欧米への展示会出展を再開
アメリカ市場においても、パワーエレクトロニクスの展示会APEC (The Applied Power Electronics Conference 2023)に出展しました。3月にアメリカオーランドで開催されました。この展示会は2019年に視察に行き、翌2020年に出展を予定していたのですが、ようやく実現できました。
PCIMも4年ぶりに出展しました。今回は、前回のブースデザインの反省も含めて対応できましたし、ホームページからの問い合わせも増えていたので多少認知度もあがったのか、おかげさまでブースは賑わい、多くの引き合いをいただきました。もちろん2024年も出展する予定です。
2016年から始めた取り組みがようやく形になってきました。

9.取引先企業の拡大
ドイツ、アメリカだけでなく、イギリス、フランス、イタリア、チェコ、スペイン、カナダ、ニュージーランド、イスラエルなど、欧米企業との取引も順調に増えています。
ただ、当社の製品も一部、国の定めた安全保障輸出管理制度の面から、引き合いを受けてもお断りするケースがあります。この点にも気をつけながら、市場拡大を図っていきたいと思います。

10.今後に向けて
水冷ヒートシンクは、適する展示会を見出しているのですが、セラミックと金属の接合品に関しては、いまだみつけきれていません。この点も課題です。しばらくはホームページによる情報発信に注力していく予定です。いずれにしましても、一朝一夕に売上が伸びるものではありません。ここまで8年かかっています。手ごたえ感はあがっていってますので、円安を追い風に更に深耕したいと思います。

 

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