Members Column メンバーズコラム

関西から広がる3S活動の輪

皆川健多郎 (大阪工業大学)  Vol.150

皆川健多郎

 初めまして、大阪工大の皆川と申します。初めての執筆となります。よろ
しくお願いいたします。
 さて、「整理・整頓」という言葉は、幼少の折からよく聞きなれた言葉かと
思います。近年は、片づけに関する多数の書籍が発刊されたり、お掃除コン
サルタントによるお掃除セミナーも各所にて開催されたりと、お掃除ブーム
のようです。また、「断捨離」はヨガの断行、捨行、離行という言葉からつく
られた造語ですが、2010年の流行語になったことをご記憶の方も多いかと思
います。

 モノづくり現場では5Sという言葉があります。これは、整理、整頓、清掃、
清潔、躾の5つのSの頭文字の活動を意味し、トヨタ自動車の発祥といわれて
います。それぞれの内容は、各社にて若干異なりますが、
 整理:要るものと要らないものを分けて、要らないものを捨てる
 整頓:要るものを使いやすいように置き、誰でもわかるように明示する
 清掃:つねに掃除をし、きれいにする
 清潔:整理・整頓・清掃の3Sを習慣化し、維持していく
 躾:決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける
と定義されています。5Sというと掃除というイメージが一般的にあります。
「掃除をして儲かるの?」といった質問をよく聞きますが、同様の作業が繰
り返されるものづくり現場では、この効果が大きいといえます。また、東京
大学の藤本隆宏先生は、組織の競争力を支える多層的な要因のなか、他社が
簡単に真似できない現場にできることのレベルとして“ものづくり組織能力
”を挙げています。このなかには、5Sも位置づけられています。
 ところで関西では、5Sではなく3Sにフォーカスし、それを“徹底する”
という観点で取り組む企業が多数存在します。なかでも大阪市の枚岡合金工
具(株)、大東市の(株)山田製作所は、これらの取り組みで有名です。そ
の取り組みを見学に年間1,000人近い人が国内外より工場を訪れています。
3S活動の目的は、活動を通じて様々な問題を発見する力や問題を解決する
能力を高めることにあります。また、その結果として、「守ることを決めて、
決めたことを守る」という社風の醸成にあるべき姿を設定しています。
 当初、ものづくり現場で取り組まれていたこれらの活動は、現在では間接
業務にも波及し、流通業や各種サービス産業、教育機関、官公庁などでも取
り組まれています。また、これらの取り組みを広めるために、生き生き5S
大会(日本IE協会主催)、関西5S大会(関西IE協会主催)、そして世界5S
サミット(足利世界5Sサミット実行委員会主催)などが開催されています。
 大阪でも11年に(株)OYMの大山繁喜先生のご指導される約80もの多様
な業種の企業が集まり、「3Sサミット」が本学にて開催されました。その後、
これらの活動を推進するための3S活動推進協会が12年に発足、協会が中心
となり同年10月には第2回の3Sサミットも開催されています。大会は3S
活動をおこなう企業の情報交換の場でもありますが、活動の主役である従業
員の方々も多数参加されています。会場には作業着姿の方々が多数いらっし
ゃるのも、個人的には普段の学会とは異なり少々居心地の良さを感じていま
す。
 今年も秋には第3回となる3Sサミットの開催を予定しています。ぜひと
も多くの方々にお越しいただき、日本的ものづくりの競争力の源泉について
意見交換の機会を頂戴できればと思っております。
 最後になりましたが、今回貴重な機会を頂戴いたしました、ものづくり・
ひとづくり研究会主査の中川裕之様に感謝申し上げ、結びとさせていただき
ます。

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