Members Column メンバーズコラム

スキルシェアリングを目指して独立

松田知樹 (ティモシーズ株式会社)  Vol.608

松田知樹

 2022年3月20日付けで、16年間努めたエレクトロニクス関連企業の取締役とグループ会社のCOO職を退任し、経営コンサルタントとして独立いたしました。正真正銘の「身一つ」です。今後の所属ですが、既に7期目を迎える株式会社のオーナーを勤めていまして、こちらの代表取締役として仕事を続けて参ります。この会社というのは、家業である不動産管理をベースに2015年に設立した会社で、元々表に出すつもりもありませんでしたから、実家で飼っていたチンチラ猫のティモシー君の名前をそのまま会社名とする「ティモシーズ株式会社」という社名がついております。当時は特に理念もなく、社名の由来を聞かれると非常に困ってしまうのですが、飼っていた猫にもちろん思い入れはありますし、財務も非常に健全です。笑
 さて、今回の退任に際し「今流行りのFIREですか?」とか「家業を継ぐのですか?」とか色々とご質問を受けたのですが、FIREでもありませんし、家業を継ぐと言っても専業にするほどでもありませんので、いずれもNOです。今回の独立に関しては、2年以上、体を壊すほど悩みましたし、それなりの準備もしてきました。また経営に関して「こうすべき」という強い想いもあります。思い入れのある会社を離れるという決断は、それなりに辛く、重たいものです。
そこで今回は、会社を辞め、独立した理由について書かせていただきたいと思います。

ワークシェアリングならぬスキルシェアリングという発想
コロナ禍に見舞われた2020年。中国で新しいウイルスが発見されたと皆がマスクをし始めた1月末、関西国際空港でサンフランシスコ行きの飛行機を待ちながら考えたことがあります。それは、事業がうまく行かなかったとき、経営者は何を考えるか。出国前に自分のブログにこのような記事を投稿しました。
こうして空港で一人ボーディング待ちをしていると、いろんなことを考えるのですが、今は「ビジネスには客観的視点が重要だよな」ということがずっと頭の中をぐるぐると回っています。そして、僕はいつも、その「客観的視点」を大切に生きているような気がします。

こうしたら売れる、こうすれば成功する。そのように初志貫徹で信じることは大切ですが、それで結果が出ない場合は、あ、違ったね。じゃ、やり方変えようか、という柔軟性を完全に持ち合わせている場合のみ、正しいと思うのです。
特にビジネスの場合は、相手あって成立するものですから、その相手という視点をとにかく持つこと。そのためには、やはり、内向きではなく、外向きの視点を常に持つこと、社内ではなく、社外の人間と意見交換をすること、競合他社(いわゆる業界のリーディングカンパニーと呼ばれるような企業)が今、どのようなことをしているのかを知ること、これがとても大切です。

そう、客観的な視点。
組織の中にどっぷり浸かっていると、この視点を忘れてしまいがち。視座が下がり、目先しか見えない。社内は同じような人間ばかりなので、意見を求めてもこれといったアイデアが出ない。社長や上司が怖いという忖度もある。これは、結構多くの企業が陥っている問題だと思うのです。

でも中には、この「客観的な視点」と「組織の中だけでなく、社会全体を見る」という高い視座を持っている人もいます。そういう人の視点(=能力)は、最近でこそ社外取締役の重要性が日本でも見直されてきましたけれど、やはり、多くの企業が必要としているポジションでもあります。
一つの会社にどっぷりフルコミットするのも良いと思いますが、私はその客観的視点を自分の会社だけでなく、必要とされる他の会社でも活かしてもらおうと考えました。そう、スキルシェアリング。業界全体、社会全体、日本全体で見た時に、どうか。みんなで限られたリソースを共有し、強みを差し出し、弱みを補完し合っていかなければ、シュリンクしていく日本に未来はないのではないか。そして、自分の会社だけ良ければOKではなく、業界全体として発展するためにどうすれば良いかを考えなければなりません。

組織は新陳代謝が必要

さらに、組織には新陳代謝が重要です。
いつまでも代わり映えのしない面子が役員にいても、下が育たない。上が詰まっているとみんなやる気をなくすでしょう。そういう意味では、せいぜい経営陣は10年が賞味期限かもしれませんね。血を入れ替えるために、他の会社からヘッドハンティングしてもいい。
16年いた自分は長すぎたかもしれませんが、とにかく組織も自分もうまく行っている内に、バトンタッチ、アップデートの必要性があると感じました。自分がいなくても組織は自走する。自分はまた一段上のステージでやればいい。そんな風にも思いました。常に変わり続けること、新陳代謝を促進すること。
そういうわけで、この度、新たな一歩を踏み出しました。46歳という年齢に加え、子どもたちの学費等も重たくのしかかってくる時期でもありますので色々と不安があったのも事実ですが、独立後、多くの会社からお声掛けをいただき、すでに上場企業を含む複数企業の顧問、アドバイザーとして、また、自然言語解析技術を応用したエンタープライズサーチのベンチャー企業の社外取締役にも就任させていただきました。事業開発系の経営コンサルタントとして、今まで培ってきた知識と経験を活かし、事業拡大、海外展開などの経営課題に悩む企業のサポートをしていきたいと思っています。それと同時に広い視点で社会課題を解決する技術にも取り組んでいければ最高です。

そういう訳で、まだまだ駆け出しではありますが、引き続き皆さまからのご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

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