Members Column メンバーズコラム

官民連携で目指す、世界に通用する観光地域づくり

國安治 (徳島県西部総合県民局)  Vol.522

國安治

 私が勤務している徳島県の西部エリアと、そこで観光の推進組織として活躍をしている「そらの郷」について、ご紹介させていただきます。

■「一般社団法人そらの郷」とは
 一般社団法人そらの郷は、徳島県西部「にし阿波」エリアの日本版DMO(観光地域づくり法人)です。そらの郷は、観光圏整備法に基づき国土交通大臣から認定された、「にし阿波 – 剣山・吉野川観光圏」の観光地域づくりプラットフォームとして2011年に設立されました。
 観光圏制度は、広域連携、官民連携、異業種連携により滞在交流型観光を推進し、国内外からの来訪客が長期滞在できる観光地域づくりを進めようとする仕組みです。その実行部隊となる「観光地域づくりプラットフォーム」はDMOの先駆けといえる組織であり、そらの郷も2017年11月に日本版DMOとして登録されました。

 当地では従来から、大歩危・祖谷地域の5軒のホテル・旅館により2000年に結成された「大歩危・祖谷いってみる会」が、行政とも連携して地域全体を売り込む活動を行い、国内外からの誘客に成果をあげてきました。

 また2007年には、農山村のありのままの暮らしを体験し受け入れ家庭と交流する、体験型教育旅行の受け入れ組織として「そらの郷山里物語協議会」が設立され、中学校、高校の修学旅行の受け入れを拡大してきました。

 2008年には初めての観光圏認定を受けましたが、2期目の認定に当たり、法人格を持った中間支援組織が要件とされる制度改正がありました。そこで「そらの郷山里物語協議会」を母体として「一般社団法人そらの郷」が2011年に設立されました。

 そらの郷は、観光圏の取組として、観光地域づくりの戦略策定やマネジメント、旅行商品の開発販売や国内外からの誘客活動などを担うことになりました。
 地域全体では、大歩危・祖谷いってみる会を中心とした民間と行政が一体となり、さらに日本政府観光局や四国ツーリズム創造機構などとも連携して、積極的なインバウンド誘致を図っています。

 東洋文化研究者アレックス・カー氏の著作や海外の有名雑誌「トラベル+レジャー」「ミシュラン・グリーンガイド」「ナショナルジオグラフィック」などで紹介された一定の認知度の上に、対象市場を分析し相性の良い国・地域を選び、情報発信や商品造成を働きかける戦略的なプロモーションを展開してきました。

 また、そらの郷では、急傾斜の山腹に畑や居宅が点在する山村集落をガイドとともに訪れるツアーや、早朝V字渓谷に広がる雲海(八合霧)を鑑賞するタクシープランの開発、販売を行うほか、にし阿波の官民挙げて、多言語表記の看板やパンフレット整備など、さまざまな受け入れ環境整備を進めてきました。

 この結果、当エリアの2019年の外国人宿泊者数は3万1,828人で、10年前の15倍以上になりました。国別では上位3位までは香港、台湾、中国と東アジアが占めていますが、4 – 7位は他のエリアと違いFITで富裕層の多い欧米豪(アメリカ、フランス、オーストラリア、イギリス)が続いているのが特長です。

■「にし阿波」とは
 さて、四国の中央部、徳島県西部「にし阿波」は美馬市、三好市、つるぎ町及び東みよし町の2市2町からなるエリア。

 圏域を貫いて「四国三郎」の異名を持つ吉野川が流れ、日本百名山の1つ剣山をはじめ、次郎笈や三嶺など1,800mを超える山々が連なる、美しく雄大な自然環境を有しています。

 更に、歴史文化、伝説伝承、独特の食文化、伝統芸能に彩られた、徳島県内屈指の観光地域です。

 美馬市の「脇町うだつの町並み」は江戸時代から続く古い商家の町並み散策と共に、藍染めや和傘などの伝統工芸を題材にした製作体験もできます。

 つるぎ町の「二層うだつの町並み」は鏝絵を施した独特のうだつがあり、近くの庄屋屋敷も併せて是非ご覧いただきたい建物です。

 東みよし町の「加茂の大クス」は樹齢千年以上の大木がパワーを与えてくれると人気です。また、日本でも有数のパラグライダーのフライト基地もあり、空を眺めると優雅に飛んでいるシーンを見かけます。

 三好市の「大歩危峡」「祖谷渓」は剣山国定公園の名所。
遊覧船による「船下り」や「祖谷のかずら橋」、
「ラフティング」や「ジップスライド」などのアクティブティを是非ご体験ください。
「大歩危・祖谷温泉郷」でのお泊り、更に奥祖谷の「古民家ステイ桃源郷祖谷の山里」もおすすめです。

■世界農業遺産「にし阿波」
 「にし阿波」にはよく知られた観光地だけではなく、奥に隠された魅力資源があります。それは、険しい山間地の独特の傾斜地集落。急斜面に住居が点在し、平坦な段々畑を作ることなく斜面のままで農業が営まれ、ススキを積み重ねた「コエグロ」がのどかな景観をつくり出しています。

 古くから培われてきた植物資源を循環させる農業や、自然と共生する暮らしが評価され、平成30年3月国連食糧農業機関の「世界農業遺産」に「にし阿波の傾斜地農耕システム」として認定されました。

 山奥に広がる貴重な景観や文化をぜひ体験してみませんか。

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