Members Column メンバーズコラム

INSは来年30年、原点に戻って再出発を目指す

岩渕明 (岩手大学名誉教授/岩手ネットワークシステム(INS)会長)  Vol.558

岩渕明

KNSの皆様、ご無沙汰しております。コラムを聴く機会を頂きありがとうございます。
コロナ禍は1年半たちますが終息の気配すら感じられません。大阪をはじめ関西はここにきて再び緊急事態宣言と大変ですね。それでも毎週のようにKNSメンバーのZoom会議(オンライン飲み会)の呼びかけがPCに飛び込んできており、KNSは盛んだなーと感心しております。
岩手は感染者ゼロを続けておりましたが、昨年8月以降感染者が出て、現在は900名に達しています。感染者が出たら大変と、昨年3月以来知事を筆頭に東京と同じような自粛規制がかけられましたし、大学もそうです。岩手大学も昨年4月にはすべてオンライン授業。何故、岩手大学が東京の大学と同じ対応をするのか。授業もクラブ活動も平常時と同じように行い、感染者が出たらその時対応を考えたらいいのでは。逆に「安全な大学」と大学広報に使えばよいのに、などとブツブツ言っていました。無責任だとか、リスク管理が希薄であるとか、学長だったら言われるでしょう。というのも私は昨年3月に岩手大学の学長を退任し、現在は肩書のない一般市民なのです。INSも活動を自粛し、「いつも飲んで騒ぐ」ことは世間体もありやめている状態です。3月末にKNSをまねてオンライン飲み会を行いました。酒を飲む人、晩飯を食べる人、・・・人それぞれですが、会話に入れない人はいつの間にか退席。やはり動き回ることができるのはいいなーと感じた次第。

退職後は「これからは好きなことを」、と妻と話していたのですが、旅行もままならず。ずっと家にいるので「私の時間と空間を邪魔にしないで」と、二階の子供部屋に引っ越し。そうだよね、最近5年間は土日なし、夕食は週2日の生活だったのだから。コロナ離婚もわかるよな・・・。二人にとっての救いは16歳になったラブラドール。犬と人が本当に似ていることに気づきます。去年の秋までは丈夫だったのに、年末から急に目が見えず、耳が聞こえず、足腰がガタガタで散歩は家の中を回るだけ、しかし食欲だけは旺盛。でも排せつの神経はマヒし、後処理が大変。怒りながらも可愛いなと二人で笑っている昨今です。
大学を離れた後、岩手県工業技術センターに週1回出かけています。センターの中小企業の支援策に対して、「本当に役立っているの」と、迷惑がられているだろうと感じつつもストレートな意見を発しています。一昔前の公務員のように、来た仕事を淡々とこなして余計な仕事はしない。技術相談や設備機器の利用、共同研究と支援メニューはあるが、例えば試作して終わり。「その後どうなったの、商品として完成したの」と聞いても「それは企業がやることですから・・・」と無関心。「支援するなら、入り口から出口までやれよ。試作だけではなく商品化、事業化まで面倒を見て、企業の経営に貢献すべきだよ。それが支援だろう」と言うと「それはセンターの仕事を超えています」、「だったら、他の機関と連携してやれるだろう」という具合。ミッションの地域の産業振興に本当に貢献しようとしているのか、「熱き心」を持てよ!
産学官連携とか地域連携の「連携」の意味は何だろうかと自問すること多々あります。学学連携なら教育・研究を補完しあうことで両者にとってWin-Winとなり、連携は成功。産産連携も様々な事象でWin-Winとなれば成功。産学連携でも課題解決ができればWin-Win、しかも知的価値に見合った研究費が入れば大学人は益々Win。企業は商品化、事業化まで大学には期待していない。では公設試は?
 バイオ産業の拠点を目指す目的で岩手県は工業技術センター横にHIH(ヘルステック・イノベーション・ハブ)を昨年4月に設置しました。貸研究室、貸工場のような施設です。私も設立に関与した(株)アイカムズ・ラボもそこに入居しているので、頻繁に顔を出しています。この会社は岩手大学発ベンチャーの位置づけであり、推進するビジネスモデルはR to B。バイオ研究者の研究ニーズ(研究デバイスの製作の要求)をビジネスとするもので、そのデバイスが成功すれば今度はBtoRと世界の研究者に販売し、やがてB to B、B to Cとする成長モデルです。バイオ研究においては世界的権威の〇〇先生が使った装置という実績が最強の広報、営業になるのです。薄利多売の一般向けにはなじみません。私の大きな仕事は片野社長の相談相手。技術なり経営なり、営業なり自分なりの意見を言っています。
その片野社長が中心となり、INSとは別にTOLICというバイオ関連の産学官組織が2014年から活動しています。現在は25社の企業会員に成長しました。先日、内閣府のバイオ戦略に掲げてある「地域バイオコミュニティ拠点」の認定事業にTOLICが主体となって申請しましたが、その申請書では地域の産学官全体の意識の共有が求められています。単に経済的な活性化だけではなく、SDGsあるいは「いわて県民計画」を意識した広範な活動計画を申請書に記述しました。シナリオは、将来のあるべき姿をバック・キャスティング的に構成していますが、経済の活性化が雇用の場を作り、働きを通して生きがいを与え、子供たちに技術の面白さを伝え、高校生にはグローバルな最先端の研究開発を実感させて将来のU-turnを促し、人口流出を抑えて世界からの人口流入を促し、・・・・健康で元気な地域社会を作る。これこそがINSの目指した産学官連携ではないかと言ったら、TOLICの主要メンバーは皆INS会員で、しかも片野社長はINSの副会長。企業から見て今のINSには期待が持てないのでTOLICが動きます、ということです。一体INS本体はどうした?
 大学の理事、学長を10年ほど担っている間、INSからは少し距離を置いていました。でも、「INSを研究する研究会」の発足を見るとINSは産学官連携のレジェンド、「昔はよかった」の反語は「今は駄目だ」、ということになります。昨年5月のINS総会で会長を平山先生から引き継ぐことになりましたが、コロナ禍で総会は書面審議。まだ多くの会員にお会いしていないので、今年の総会はハイブリッドで対面を主にしようと計画中です。会長となり、「もう少し戦略的に活動しよう」と提案しています。何でも有りのアメーバーもいいのですが、もう一度原点に返って「産学官連携で産業振興に資する」目的を目指そう。では何ができるか?「INSで毎年1社、ベンチャーを作る」というのはどうだろうか。たった1社では意味がないかもしれないが、10年もたてば大きな力になるであろう。INSの700名の会員で技術支援もできる、経営支援もできる。そのために、多彩な人が集まった中で誰かがアイデアを提案し、それを皆で話し合って最適解を考え実行していこうという「語り場」を作ろうというものです。私には時間が十分あるのだから、KNSに負けないように頑張ろうか。
 このようなことを感じ、考えているこの頃です。昨年キャンセルになりましたが、一段落したら大阪に行ってまた皆さんと会えることを楽しみにしています。そういえば、来年はINSの創立30周年です。

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