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雪だるま型の社会構造はいかがでしょうか。

彦坂明宏 (大阪電気通信大学地域交流室)  Vol.100

彦坂明宏

 はじめまして。大阪電気通信大学で産学連携コーディネータをしておりま
す彦坂明宏と申します。
 私は、ベンチャー時代に某大学の連携研究センターと某公設試にラボを構
えさせていただく等、それなりに良い思いをさせていただきました。それ以
前は古い企業にも属していましたし、大学のコーディネータとして逆の立場
を得れば、きっといい事ができるだろう!と楽観的に大志を抱いておりまし
た。が、力率ゼロの日々が続いたのは言うまでもありません。

 さて、ここで産学連携やコーディネータ等を云々していると、また脳内に
変なものが分泌されて眠れなくなりますので、自分ことは棚に上げて、広く
社会のことを論じてみます。
 まず、いきなりバブル崩壊を思い出してください。これがはじけてもう何
年になるでしょう。これ以降、手を変え品を変え“ものづくり”や“技術立
国”への回帰が提唱されています。我が国が対外的優位性を構築できた主因
がそれらなのでしょうから、当然の発想かも知れません。しかし、私はそこ
から来る社会構造を“逆雪だるま型”と定義しています。
 理科系離れ以前から、理科系の人口は文科系の人口より少なかったでしょ
う。昔から、理科系を卒業しても科学・技術に進まない人は相当数いたでし
ょう。つまり、技術立国という社会構造は少数が絶対多数を支える構造、多
くの人が一部の人を頼って生きる構造だと思う訳です。
 逆雪だるまは、下の玉が小さく、上が大きいですから、揺れると倒れます。
倒れたら起き上がるのは至難の業です。起き上がるには、それを構築したに
等しいか、それ以上のエネルギーが必要です。
 逆に、下の玉が大きい雪だるま型の場合、揺れても倒れません。揺れても
再び起き上がります。最悪倒れても復帰は楽です。多くの人が一部の人を支
える構造を目指せば、絶対安定な社会がやって来るのではないか。崩れた逆
雪だるまの下側を論議しても社会にはなかなか元気が戻らない。そんな風に
も思います。
 現在、大学の研究にも実用化が求められています。資源の乏しい我が国が
知恵を産業資源にしようとするのは当然で、これはますます積極化する必要
があります。一方で、いつ花開くか分からない、開かない可能性もある基礎
研究への目は厳しくなる傾向を感じます。
 ただ、今日の技術があるのも、遠い昔の基礎研究と開花の積み重ねがあっ
たからです。これの抑制は未来の我が国に赤信号を灯します。社会全体で、
苦しい財布の紐を、未来の社会のために、未来の子どもたちのために開いて
行こう。贅沢を言えるなら、そんな発想も育って欲しいものです。
 電車に乗っていると、車椅子の方が駅員さんのサポートで乗車して来られ
ます。乗客はそれを当たり前のことと見守り、必要であれば協力します。何
十年か前に見たら違和感を覚えるシーンかも知れません。でも、今日は駅と
車内に居合わせた全員がこれを当たり前のこととして支えています。
 少数派の科学者や技術者で立つ国ではなくて、絶対多数の人々が立ち、支
援が必要な人を支える国。揺れても決して倒れることの無い国。雪だるま型
の社会構造はいかがでしょうか?
 まだまだ、書きたいことは沢山あります。でも、甚だ長くなりそうです。
続きは夢の中で!

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