Members Column メンバーズコラム

仮設から今後は本設に – 地域産業と地域商業の復興 –

長坂泰之 (中小企業基盤整備機構)  Vol.101

長坂泰之

 こんにちは。中小機構の長坂泰之(ながさかやすゆきです)です。KNSin
伊賀では忍者姿で多くの皆さんにお会いでき、楽しい時間を過ごすことがで
きました。ありがとうございました。
 来月で、東日本大震災から1年が経とうとしています。私自身は昨年の3
月はまだ大阪勤務でした。3月11日当日朝一番に京都府庁で仕事を終えた
時に電話が入り、東京勤務の内示を受けました。その日の午後、あの震災・
津波が発生しました。4月に入ってからは被災中小企業の復興支援中心の仕
事になり、今日に至っています。本コラムでは復興に対する想いなどについ
て書き綴りたいと思います。


貸付先の陸前高田市のショッピングセンター(震災前(左)と震災後(右))

■仮設は文字通りあくまでも仮の姿
まず、私共、中小機構が実施している仮設施設整備事業(仮設店舗及び仮
設工場の整備)の進捗状況について報告します。平成23年12月10日現在
で、青森、岩手、宮城、福島の東北4県と茨城県で要望書が提出された約500
件(約3,000区画)のうち、事業着手が約300件(1,700区画)、うち12月
末までに約200件(約1,300区画)が完成しました。
私は、仮設に入居するということは、商売を継続することのほかに、経営
者自身がこれからの自らの身の振り方について考える時間を得たことだと考
えています。復興するのか、転業するのか、あるいは苦渋な選択であります
が、廃業するのか、その決断を冷静に考える時間を持つということは、非常
に大切なことだと思います。
■仮設から本設に ~震災後の中心市街地を考える~
多くのまちの郊外には震災前から大型商業施設が存在しており、中心市街
地の商業の役割は震災前から限定的になっていました。また、人口も震災前
まで戻ることは容易でなく、被災地の中心市街地を震災前の規模まで戻そう
とすることは現実的ではありません。中心市街地は必要ですが、「震災前か
らすでにその役割は大きく変わっていた」という事実を、関係者が互いに認
識することがスタートラインだと思います。
 もう一点、商業を復興する際に考えなければいけないのは、果たして立派
なハード(店舗)を持つことが本当に必要なのかいうことです。大きな投資
で大きなリスクを抱えて商売をするよりも、小さな投資で確実に商売を軌道
に乗せ、そのうえで次の投資をするのが賢明な選択だということを、阪神淡
路大震災で多額の投資をして復興を目指した複数の商業者から聞きました。
東日本大震災の被災地で、立派な店舗を持つことが目的となっている方が少
なからずいることを危惧します。
■震災後の中心市街地の機能について考える
 震災後の中心市街地の復興にもっとも大切な視点は、コンパクトなまちを
選択できるかどうかだと考えます。津波に対するリスクヘッジは当然考えな
ければなりませんが、「郊外が存在する」という現実を認めたうえで、これ
からのまちに必要な機能をいかにまちなかに凝縮できるかが重要だと思いま
す。長野市は中心市街地活性化に「住・職・福・学・商・憩・観・文化・歴
史」の機能が必要だとして、これらの機能を集約することを目指しました。
被災中心市街地の復興にもこのような視点が必要だと思います。
■中心市街地復興に大切なこと
そのうえで、私は復興には何よりもリーダーの存在が重要であると考えま
す。町長が亡くなった町、組合長が亡くなった漁協の復興は簡単ではありま
せん。甚大な被害から復興するためには、(1)人間的な魅力があり、(2)強い
想いを持ち、(3)行動力があり、そして、(4)腹が据わっているリーダーの存
在が欠かせません。
 そのうえで、(1)まちにこれから必要となる機能を凝縮できるか、(2)10
年程度の時間軸で復興のプロセスを考えることができるか、(3)まちをイメ
ージアップするという視点でまちづくりができるか、(4)事業間の連携を意
識できるかが大切だと思います。特に事業間の連携については、連携を意識
するか否かでその効果は全く異なる場合があることを理解しなければなりま
せん。2つのイスの並べ方を例にすれば、正面に並べる、横に並べる、背を
向ける、という異なった並べ方でそのイスに座った2人のコミュニケーショ
ンが異なります。ハードの整備にも同様なことが言えると思います。
■まちを支える人を育てるということ
私は人の厚みのあるまちが、まちにも厚みを持つと考えています。元気の
いいまちには必ず人がいます。まちはハードが支えるものではなく人が支え
ると言って疑いません。人を育てる努力をまちは続ける必要があります。
 そして、最後に、人々がそのまちで幸せに暮らすためには、依存という状
態でなく自立という状態を生み出す必要があると思います。地域が自立する
ためには、中心市街地の復興よりも先に、地場の産業の復興が重要となりま
す。産業の復興なしに中心市街地の復興はあり得ません。産業の復興も私た
ち中小機構の重要な業務で、すでに具体的に動き出しています。
■最後に、先月、平成23年度地域づくり総務大臣表彰の受賞者が発表され
ました。この中で浪江焼麺太国(福島県浪江町)も受賞しました。先日、B
級グルメでまちづくりをしてきた主力メンバーの一人のお話を聞きました。
浪江の皆さんは八王子の商店街や早稲田大学の学生の協力を得てB-1グラ
ンプリに参戦し、素晴らしいチームワークで見事に奇跡の4位を勝ち取りま
す。しかし、浪江のまちづくりはこれからが正念場を迎えます。帰る場所、
活動する場所がないのです。浪江の皆さんと比べ、活動するフィールドのあ
る私達は何と幸せなことか。この当たり前のことに幸せを感じられずはいら
れませんでした。与えられたフィールドに不満をもつことよりも、そのフィ
ールドを目一杯使って活動しようじゃありませんか。
私も自分のフィールドで「今、自分でできること」をやっていきたいと思
います。その際に、KNSの皆様のお力も借りることがあるかと思いますの
で、その節はどうぞよろしくお願いいたします。
(本文は、建築雑誌3月号(日本建築学会発行の雑誌)への寄稿文を一部修
正したものです)

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