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放浪のススメ

上田昇辰 (デザイン事務所カメレオンワークス)  Vol.252

上田昇馬

こんにちは、今回コラムを書かせていただくカメレオンワークス代表の上田昇辰(ウエダノリヨシ)と申します。宜しくお願いいたします。

簡単に自己紹介をいたしますと、温暖な気候の広島県尾道市でweb制作やグラフィックデザイン・動画制作・イラストレーションなどの仕事をしています。
たまに山に登ったり海を眺めたり、そんなデザイン事務所です。あと、この場で宣伝なのですが、今年度から活版印刷事業を始めようと思っています!活版の魅力に取り憑かれ、ぜひとも実現したいと思ってます。もし「古い活字や活版印刷機あるよ!」「持ってる人知ってんで!」という方がいらっしゃいましたら、何卒ご一報頂ければ幸いです!小躍りして、飛んでいきます!宜しくお願いいたします。

さて、タイトルの「放浪のススメ」。
ピンと来られる方もたくさんいらっしゃると思いますが。
そうです。バックパッカーです。
沢木耕太郎です笑

これは、僕が過去の放浪経験で得た、一回行ってみたらすごく感覚変わりますよ、一度はいかがでしょう?というお話です。
しばしお付き合いください。

僕のバックパッカー歴は18年前にさかのぼります。20歳の時に、何の予備知識もなく、「象に乗りにいこう!」ということでインドへ1ヶ月行きました。まだネットも携帯も普及していません。いろいろ観光する予定でしたが、聖地ガンジス河の流れるバラナシ(ベナレス)で3週間暮らすように過ごし、インド生活の凄まじさを知ったのでした。

これでは足りない!ということで、25歳の時、半年間アジアを放浪したのでした。ネパールへ片道航空券で入り、陸路でインドへ。インドで3ヶ月を過ごし、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジアを巡りました。

ネパールでチベット仏教画を学ぼう!と決め、その前にヨーロッパも見たいなあということで、29歳の時、フランスから陸路でネパールまで1年かけて放浪しました。(中東は情勢もあり、飛行機で飛ばしましたが)その後半年間ネパールでアパートを借り、仏画工房へ弟子入りし、一枚の細密画を仕上げ、インド、ミャンマーなどを旅して帰国しました。時はリーマンショック。就職先はなく、それならと、独立に至ったわけです。

えてして文化の違う所へ行くと、
「日本ではありえない!」とか、「普通こうじゃろ!」という日本での暮らしの常識から考えると起こりえないことがあるものです。

25歳の時に一人でインド一周をしていたときです。南インドから北インドへ向かう寝台列車に乗りました。
もちろん、外国人専用窓口で寝台の予約をとり、悠々と列車に乗り込みました。
そして自分の席に座り込み、荷物を解いてこれからの旅路に備えようとしていると、列車の車掌がきて、こう言うのです。
「きみきみ、その席はダブルブッキングなんだよ、でももう空きがないからこの人と一緒に座ってね。あとはよろしく」

僕はあっけにとられ、しかしつたない英語で反論しました。
「外国人専用オフィスで完璧なチケットを持っているんだからいやだ!インドの人はインド人同士でシェアしてよ!!」

しかし車掌は取り合ってくれません。僕は憤慨しながら、残されたインド人のおじさんに目をやると、「てへへ。まあよろしくね」みたいな顔でもう荷物を置き始めてるのです。
僕はこのスペースを渡すもんか!とおじさんに極力関わらないよう、自分のスペースを確保しつつ、過ごしました。
しかし長い道中。やることも特になく、おじさんもつたない英語で一言二言と話しかけてきては、何かを説明したり、周りの人に聞いてみたりしています。若い日本人が3等寝台車になぜ乗っているのか、仕事はどうしたとかそんなことを聞いていたようです。
日は暮れ、列車も就寝モードになってきました。おじさんも眠そうにこちらを見て、寝ようというジェスチャーをしています。
しかし幅の狭い固いベッドは一つきり。ここでどうやって大の大人が2人寝れるのか?
折衷案はお互いに背もたれに背を預け、お互いの足をクロスさせ、なんとか足を伸ばして寝ようと言うものでした。わかります?ベッドの背もたれに腰掛けて足を伸ばして、対になった状態でなんとか眠ろうということです。
おじさんも了承して、なんとかそのカタチで寝ることになりました。
しかし、時間が経つとどうしても腰はずるずると滑り、徐々に横になってくるものです。おじさんの足の裏がだんだん僕のほうへ近づいてきます。負けじと僕も足を伸ばしていきます。そうして最終的にお互いの足の裏が顔の真ん前にある状態になってしまいました。おじさんの足の裏からはガラムマサラの香りがしました。
ほとんど眠れない状態で朝を迎えました。一夜をともにしたおじさんは心を許したのか、朝ご飯を買ってきてくれ、これがインドスタイルだと朝からカレーをほうばっています。おじさんの足からガラムマサラの香りがしたことを思い出し、なんだか急におかしくなって、小さなことはどうでもよくなっておじさんと駅に着くまで不完全な英語で様々なことを話しました。
カルカッタに家があり、家族のもとに久しぶりに帰ること。いつかは子どもを日本に行かせたいこと。自分とは違う職について欲しいが、できるかどうかわからないこと。子どもはもっとたくさん欲しいこと。

最初はあんな嫌だったおじさんも駅で別れるときにはもうすっかり打ち解けて、この旅一番の思い出になりました。どんな嫌なことや日常では考えられないことも受け入れてしまい、その状況を楽しんだら、結果はとても楽しいことになる!ということに気付きました。
それからの僕は、仕事でもどんなに辛くとも、後で笑い話になる!とかむしろ楽しんでやってやろう!みたいな考えを持つようになりました。

乱暴かもしれませんが、
そんなに辛い出来事はない、考え方一つでどうにでも世界は変わるんだ。

それを皆様にぜひ一度体験して頂きたい。それがぼくからの
「放浪のススメ」です。

お読みいただきありがとうございました。

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