Members Column メンバーズコラム

『ボッチャ』ってご存知ですか?

田宮康弘 (株式会社日本クリエス 名古屋事業所)  Vol.685

皆さんご無沙汰しております。東海支部の田宮康弘です。

2023年の10月より職場が変わり、現在は名古屋市内の警備会社で営業担当をする傍ら、官公庁、製油所、駅などの施設警備の現場にも出動しております。

仕事とは別に、最近ボランティア登録をし、名古屋市緑区内でボランティア活動をしています。

 名古屋駅からJR東海道本線で豊橋方面の各停に乗って約15分。『大高』駅から徒歩約10分程度のところに『名古屋市立緑小学校』と『緑コミュニティーセンター』があって、そこが主な活動拠点です。緑小学校では、盆踊り(7月)、コミュニティーセンター祭り(10月)、もちつき大会(12月)、やきいも大会(2月)といった季節的なイベント、コミュニティーセンターでは、コミュニティーセンター祭り(11月)以外にも、書道教室や健康体操などの色々なイベントを実施しておりますが、特に月1回、『みんなの広場』といって、第4日曜日の午前中(9:30〜11:30)に、緑小学校の学区内に住んでいる方々はもちろん、緑小学校の学区内に勤務・通学している方、お稽古事をしている方など、つまりは緑小学校の学区内で活動している人であれば誰でも自由に参加できるよう、コミュニティーセンターを開放しています。イベント内容はなんでもあり。ただ喋るだけでもよし。囲碁、将棋、オセロ、花札、UNO、トランプのテーブルゲームに参加してもよし。絵本を読み聞かせたり、手芸や折り紙を披露して教え合ったり。2階の大広間では軽く身体を動かしてもらう運動として『ボッチャ』をやっています。

 ところで皆さん、『ボッチャ』ってご存知でしょうか。

 パラリンピックの正式種目として採用されていて、日本人の杉村英孝選手が東京2020パラリンピックの個人戦(BC2)で金メダルを取ったことでご存知な方もいらっしゃるでしょう。一言で言うと『カーリング』(ロコソラーレ・もぐもぐタイム、で有名になりましたよね)を立体にした感じです。

 ボッチャのルールはレベルによって様々です。そこで今回は私たちがやっている初心者ルールをご紹介したいと思います。

 長方形のコートの奥3/4のエリアに設置されている的球に対して、2チーム(個人戦もあるようですが)がそれぞれ赤玉と青玉を6球ずつ、的球の白球に近づけるように転がすように投げ込みます。的球に最も近いチームにのみ得点が入り、相手の球より近い球の個数分だけ得点となるのはカーリングと同じです。

 長方形のコートの奥3/4のエリアに的球という白い球をボーリングの球を投げるように下から投げ込み(転がす方が簡単です)、その後、2チーム(個人戦もあるようですが)が先攻後攻に分かれて、それぞれ赤玉と青玉を6球ずつ、的球の白球に近づけるように投げ込みます。自分の球が長方形のエリアから外に出てしまったり、手前の1/4のエリア(コートの色が変わっています)に止まってしまった場合は、その球は無効になります。交互に投げ込むのではなく、的球にもっとも近いチームでない方のチームが投げます。的球に最も近いチームにのみ得点が入り、相手の球より近い球の個数分だけ得点となるのはカーリングと同じです。

 でも、カーリングと決定的に違うところは、以下の5点です。

① 白い的球の存在
 カーリングはサークルの中心に近づけますが、ボッチャは先攻チームが投げ込んだ白い的球に近づけなければいけないので、毎回毎回、的球の位置を作為的に変えることが出来ます。

② 的球を動かすことができる。
 カーリングはストーンを氷上に滑らせるため、動きは2次元です。ところが、ボッチャの場合は、転がして近づけてもいいのですが、空中を使って相手の球の上からぶつけで移動させたり、または白色の的球に自分の球をぶつけて動かして、遠かったはずの自分の球の近所に的球を移動させてることも出来るんです。さらには、密集した球の隙間の上に乗せて近づけてもOKなんです。ボッチャが3次元であるという所以がこれです。

③ 投げ込む場所
 カーリングは各々のチームがストーンを転がし始めるところ(プレイヤーが滑り出す場所)は一定ですが、ボッチャは長方形の短かい辺の真ん中から半分のサイド(赤玉を持っているチームは左サイドの半分から、青玉を持っているチームは右サイドの半分から)から投げ込むことができます。上級者の試合では、自分サイドの向こうの隅に近いところに最初の的球を置きます。そうすると自分は的球に対して常に相手よりも距離が近くなりますね。(相手は常に直角三角形の斜辺の長い距離を投げることになります。お判りでしょうか?)

④ 球の投げ込み方
 オーバーハンドやサイドハンドによる投げ込みは禁止で、ソフトボールやボーリングのように下から投げます。ころがしても浮かしてもOKです。投げる際には、手の甲を投げる方向に前にして投げます。その方がコントロールがしやすく、距離感がとりやすいんです。

⑤ 大量得点チャンス
 カーリングは先攻チームと後攻チームが交互にストーンをサークル内に転がしますが、ボッチャは的球に最も近いチームでないチームが投げ込みます。したがって、仮に先攻チームが赤玉をひとつ的球に近づけて、後攻チームが1球も赤玉より内側に近づけられなかった場合には、残り5球を相手の青球より内側に近づけてしまえば、一挙6点の最高点を獲得することが出来ます。

 どうですか?分かってもらえたでしょうか?

まあ、細かいルールやテクニックはさておき、一度やってみて頂くことをお勧めします。私もはじめはボランティア要員として見ていただけだったんです。その時のプレイヤーがご老人ばかりだったので、失礼ながら『どうせゲートボールのようなご老人向けのスポーツでは•••』又は『身体障害者向けのスポーツだろう•••』と思って鷹を括っていましたがとんでもない。プレイヤーの皆さんに誘われてやってみると、これがかなり面白い。今では第4週の日曜日が待ち遠しくボッチャにハマっています。的球までの距離感とコントロール、強さを習得できれば、かなり戦術的なスポーツです。パラリンピック競技にまでなっている理由がわかったような気がします。

 したがって、『ボッチャ』は老若男女、健常者も障がい者も関係なく誰でも出来ます。私たちの『みんなの広場』のボッチャでは、下は4歳、上は92歳まで幅広い人が集まって約2時間、休憩を挟みながらプレイしています。ナイスショットが起こった場合には敵味方関係なく歓声と拍手が部屋中に響き渡り、朝から盛り上がって参加者全員で楽しい時間を過ごしています。

 こういった活動が出来るのも、緑区、特に緑学区の委員長が『住民のためのイベントはドンドンやれ!責任は我々が持つ!』と寛大なお考えをお持ちだからなんです。したがって、コロナ禍の下でさえも、中止をすることもなく(勿論、考えられる予防対応を実施した上でですが)各イベントが出来ているんです。

 この『みんなの広場』の当初の目的は、閉じこもりのご老人の見守りだけではなく、なんとかコミュニティーに顔を出してもらおうというものでした。ともすれば、『福祉』とは、『行政がやるべきだ』とか『税金を使うサービスだ』という印象が強いですが、子供たちのキャッキャと騒いでる声、ご老人たちのひたむきな姿を見ると、『自然発生的なコミュニティーっていいなあ』と思います。ボランティアに参加し何か役に立てればという上から目線でなく、無理のない範囲の中で参加し、自分自身が楽しむことによって、結果として、そこに参加されている方々も自然と楽しめるような空間になればいいと思ってます。私もこの『みんなの広場』に参加することによって、自分の居場所がまたひとつ見つかったような気がしています。

 印象的な言葉がありました。この『みんなの広場』に参加されていた85歳の女性が、「私たちには、キョウイクとキョウヨウが必要だよ」っと私に言ってくれました。お年を召してもまだ教育と教養を求めてるのかって感心していると、その女性は、「お兄さん、漢字が違うよ。『今日、用事がある』『今日、行く場所がある』だよ」。お判りでしょうか。「社会との繋がりが心の元気に繋がるんだよ」とその女性は言ってました。長生きだけが幸せではない。身体の元気は歳と共に少しずつ衰えていくけど、心の元気があれば楽しく生きていこうと思える。心身ともに元気である秘訣ではないでしょうか。

 日本は段々と高齢社会になっていく傾向になり、行政は高齢者対策の政策を今更ながら打ち出しているようですが、古くは奈良時代、聖武天皇の皇后様が、『80歳になればひとり、90歳になればふたり、100歳になれば5人で面倒を看なさい。』と詔として発令しています。

 ひとりふたりで老人ひとりの面倒を看るとすると、家族や身内で面倒を看ることができるけど、5人でとなると家族だけではできない。したがって共同体で面倒を看る必要があると説いています。日本で最初の福祉事情ですが、まるで今の高齢社会の事情を予測しているかのようですね。でもその中には日本人が本来DNAとして持っている『慈しむ(いつくしむ)』の精神が原点ではないでしょうか。

 福祉とは身近にあるものであり、『行政だ』『誰が』とは言わずに、みんなが無理のない範囲で楽しく考えるというような視点の変化が必要だと考えます。でも現実はサービスを提供する側が仕事だと捉え、受ける側が重荷だと受け止め、お互いが空回りしている現状を、他地区のボランティア会議に参加するとよく耳にします。でも、老若男女が一緒になって『ボッチャ』というゲームに参加していると、なぜかボランティア活動として参加しているのを忘れて、皆さんと自然とワイワイやっている輪の中にいるように思えます。また『ボッチャ』というゲームの特徴である ①誰でも出来る、②ちょっとだけ身体を動かす、③戦略・戦術を考える、が、年配者の痴呆症防止や中高年の運動不足の解消、ともすれば怪我病気のリハビリにも有効で、老若男女が集う『みんなの広場』にはピッタリだと思います。

 福祉サービスをする側と受ける側の目線が一緒になって、提供する側と受ける側の垣根が段々となくなっていけば、お互い納得できるコミュニティーが出来るのではないかと感じました。

 長々となりました。乱筆失礼致しました。

PAGE TOP