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世界に誇れる奈良公園を目指して!

竹田博康 (奈良県まちづくり推進局奈良公園室)  Vol.373

春日野園地の『なら燈花会』

KNSの皆さま、奈良県まちづくり推進局奈良公園室の竹田です。
夏真っ盛りとなり、暑い日が続きますが、皆さん如何お過ごしでしょうか。
奈良では、今年も、奈良の夏の風物詩となった『なら燈花会』が始まりました。『なら燈花会』(毎年8月5日~14日)は、今年で19回目の開催となりますが、奈良公園一帯に10日間で約90万人の方が来られる、今や熱い熱い奈良の夏の風物詩となっているイベントです。(http://www.toukae.jp/
さて、今回は、その舞台となっている奈良公園のお話をさせていただきます。

皆さんは、奈良公園はどのような場所で、何時頃からある公園だと思いますか?
自然豊かな場所であり、その様相から、世界遺産に指定され、春日大社や興福寺、東大寺と一緒に1300年の歴史の上にあるところと皆さんは答えられるのではないでしょうか。実は、奈良公園は1880年(明治13年)2月14日生まれのまだまだ137歳の公園なんですよ。
奈良公園は、元は興福寺の境内地で、廃仏毀釈により、興福寺などお寺の勢いが失われた後に開園した公園で、現在の奈良県庁がある場所の南側、登大路園地周辺約14haで始まった非常に社寺の香りが高い公園となっているわけです。
その後、春日野や浅茅ヶ原の名勝地、東大寺など社寺境内地のほか、若草山、春日山など山野を含む場所が奈良公園として指定され、概ね今日の奈良公園を形成する約500haの公園になりました。ちなみに、ご存知とは思いますが、春日大社、興福寺や東大寺など社寺境内地は、奈良公園には含まれていません。(意外と、えっと思われるようで……)
いま、『なら燈花会』の奥行きのある姿を映し出している春日野園地も、平城遷都1200年を記念して完成した春日野運動場で、かつてはプロ野球のオープン戦が行われ、王さん、長嶋さんがプレーしたこともある場所なんです。その春日野園地も、1988年(昭和63年)の奈良シルクロード博覧会が開催されるときに運動場などが撤去され、今のような奈良公園の姿ができあがったのです。いわゆる、奈良公園は、日々成長をし続けている公園ともいえるのです。興福寺さんに分けていただいた土地で、大仏様のおひざ元にあり見守っていただいているとともに、春日さんの神さんに守られて今日があるのです。
このように、奈良公園が1300年前から今のような姿があったかのように思われ、昔から大自然や歴史の上にあったように思われているのも面白いところですよね。
ただ、このような環境にあることから、奈良公園を歩いていても、お寺のお坊さんや神社の神官さんにちょくちょく出会えるのも独特で、このように開かれた環境にあるのが、京都との違いといえると思います。垣根なく心で感じてもらい、1300年前を偲んでいただける空間や景色がそのまま広がっている日本人の心のふるさととなっているのではないかと思っています。いわゆる、「奈良は、奈良公園は、心で感じていただけるところ」とでもいうのでしょうか。
また、奈良公園には約1200頭(鹿苑のシカと合わせると約1500頭)の奈良のシカが、野生のシカとして生息しているのも、今や普通の光景となっていますが、素晴らしいことですね。外国人の方が、SNS(facebook、Instagramなど)で投稿される際には、よくディアパーク(シカ公園)とも発信されていて、外国の方にはシカ公園と記憶されているようです。
奈良のシカの話になりましたので、少しシカに関係したことを紹介しますと、皆さん、ディアラインという言葉をご存知でしょうか。奈良公園の景観が透き通るように奥まで見え、なら燈花会も遠くまで見通せるのは奈良のシカのおかげなんですよ。シカは草食で、木の下草や芝を好みます。このため、管理が行き届いたきれいな芝と大きな木の地面から約2mくらいの高さまではきれいになっています。これをディアラインと呼び、奈良公園の景観が保たれている大きな特徴となっているものなんですよ。一度、そういう目で、奈良公園を見てもらうと奈良公園の良さが改めてわかってもらえると思いますよ。
奈良公園の開園の話に戻りますが、奈良公園では、1月の第4土曜日に若草山焼きを開催しそのあとの2月8日~14日までの7日間に、1日5万人にお越しいただいている『なら瑠璃絵』(2010年(平成22年)第1回)を開催しています。その最終日である2月14日には、奈良公園の誕生日を祝って、バースデー花火を若草山の中腹より打ち上げているんです。
若草山焼きに打ち上げる花火とあわせて、冬花火を楽しむのもなかなかおつなものですので、こちらも冬の寒い中ではありますが、静かな奈良公園の中の灯りを楽しみに、奈良公園の誕生日を皆さんで一緒にお祝いするために、是非お越しくださいね。
さて、先ほどの奈良公園の歴史の話に戻しますと、奈良公園一帯は、1992年(大正11年)に国の名勝地に指定され、1998(平成10年)には『古都奈良の文化財』として世界文化遺産に登録されるなど、社寺の都の香りが漂いながら、今日まで充分に維持しながら、利活用されてきた公園ということになるのです。
このようなことから、奈良県において、2011年(平成23年)には『名勝奈良公園保存管理・活用計画』を、2012年(平成24年)には『奈良公園基本戦略』を策定し、奈良公園の価値をさらに高め、充分に利活用し、世界に誇れる奈良公園を目指して各種施策を展開しているところです。
さらに、2013年(平成25年)には、国から、奈良公園観光地域活性化総合特区の指定もいただくなど、さらなる施策の充実が求められています。
最近は、奈良にもインバウンドの大きな波が訪れ、平日などは、県庁職員か、修学旅行生以外はあらゆる外国人が闊歩しているだけという感じにまでなっており、奈良公園一帯がオフシーズンなく非常に賑わい、今や世界中の方から本当に愛され、たくさんのお客様が奈良公園に来られるようになっています。
このため、世界中から来られるお客様にさらに満足いただけるように、Wi-Fi環境や案内サインなどの充実を進めています。また、奈良公園の環境を守り、渋滞解消にも寄与するバスターミナルをエントランスに設けることとしていますが、このバスターミナルには奈良公園の学習やおもてなしも併せ持っている空間としています(2019年3月オープン予定)。
さらには、奈良公園北側の少年刑務所跡地に法務省が手がけるものなど、奈良公園周辺にもいろんな宿泊施設が計画されています。当然、奈良公園を変わらず維持していくため、その様相や景観を名勝奈良公園の往時のように元に戻すような戦略で計画しているものばかりです。今後、奈良が熱く変化していくことが見えてくると思いますので、乞うご期待くださいませ(すべて2020年完成予定)。
http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei07_nara.html
http://www.pref.nara.jp/27839.htm
(facebookページ 奈良公園 -Nara Park)
このほか、当然、奈良公園の価値を守るべく、春日山原始林の保全や植栽環境の維持のほか、奈良のシカの保護・育成にも取り組んでいるところです。
最後になりましたが、奈良公園周辺の「ならまち界隈」において、今年から新たなイベントを手がけていくことになりました。
奈良の夏の風物詩である『なら燈花会』が終わったあとの8月16日から25日までの10日間に、ならまち界隈を昼も夜も老いも若きもその良さを楽しんでもらうものです。
奈良は昔から揺らぐ灯りが似合いますよね。そこで、ならまち界隈の家の軒先に提灯を飾ってもらい、その風情を楽しみ、また違った「ならまち」の一面を見てもらえるのではないかと思って皆さまをお待ち申し上げています。
http://naramachi-yuho.com/
https://www.facebook.com/naramachiyuho/
これから、世界に誇れる奈良公園を目指し、ますます奈良公園が良くなっていくのを見ていただけると思いますので、皆さま、是非とも奈良公園を、奈良をご贔屓にお願いいたします。

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