Members Column メンバーズコラム
うどん
志波政宏 (株式会社さかい新事業創造センター(S-Cube)) Vol.346
さかい新事業創造センター(S-Cube)の志波(しわ)です。昨年9月に開催されました第54回定例会in堺では沢山の方にご参加いただき、本当にありがとうございました。その時のご縁でKNSのメンバーに加えていただきました。
さて、現在私が勤務するS-Cubeですが、大阪府堺市にあるインキュベーション施設です。事業内容は、過去にこのコラムでも何回か掲載されているので割愛させていただき、今回は私のどうでもいい趣味を随筆的に書いてみましたので、よろしければお読みください。
ご承知のとおり、関西はタコ焼きをはじめとして、お好み焼き、串カツなどが日常にあふれる場所である。炭水化物が必要以上に摂取できる焼きそば定食が当たり前に存在するほど、一般的に関西人は「コナモン」好きであるといっても過言ではない。堺で生まれ、和泉で育ち、堺で働く今日まで、一度も南大阪の泉北郡を越えたことのない人生を過ごすかくなる私も、ご多分に洩れず「コナモン」好きである。その多くの「コナモン」の中で、私が最も愛してやまないのがうどんである。
さて、日本でうどんが誕生した歴史を紐解くと、九州、四国等、諸説あるようである。日本人が好きな「3大○○」に当てはめると、3大うどんは、讃岐と稲庭が当確で、残りの1枠を五島、水沢、氷見などが争っており、確定的な定義はないようである。そして、日本全国には、この枠に入らない程の沢山のご当地うどんが存在するが、興味のない人にとってはどうでもいい事である。
うどんという食べ物は生産される地域で製法や太さや硬さなど、それぞれの特色がある。例えば、九州(福岡)のうどんは、「コシ」のないのが当たり前で「飲み物」だと言う人がいる程である。私はうどんなら何でも来いだが、「コシ」が命であると持論を展開しており、その真骨頂が「さぬきうどん」であると信じて疑わない。本場香川では、大抵の店でかけうどん1玉が100円から、高くとも300円あれば食べることができ、食べ方も釜あげ、釜たま、生醤油、ぶっかけなど様々である。また、店によって麺の太さ、コシが異なり、スタイルも製麺所型、セルフ型、店舗型と多様で飽きがこない。中にはマイ箸、マイどんぶり持参の製麺所も存在する。邪道かもしれないが、サイドメニューの天ぷらも魅力である。それ故に、たった独りで深夜に起床し、香川県まで車を飛ばし、懲りずに繰り返しその行動をとってしまうのだ。
ところで、香川県は全国の都道府県の中で一番小さい県である。少し意外かもしれないが、大阪府よりも面積は小さいのである。ただ、人口に占めるうどん店の割合が全国一ということは割と有名な話で、テレビでもよく紹介されている。また近年、県庁が自らを「うどん県」としてプロデュースし、よもや「さぬきうどん」はご当地グルメとして確固たる地位を築き、これを資源として地域の活性化に繋げている。これは正に地方創生の実践である。
そんな香川県を勝手に分解してみると、東から東讃、高松市、中讃、西讃に離島を加えた5つのエリアに分けることができる。それぞれのエリアにうどんの名店が存在するが、私は中讃を中心に計画されることを推奨している。とりわけ香川のうどん店(特に製麺所型)は営業時間が短く、昼間の1時間だけ営業する店もあり、お昼過ぎには多くの店が暖簾を仕舞い込んでいる。そうしたことから事前に入念なプランニングを組まれることをオススメする。首尾よく回れば1日で10軒制覇も可能である。ちなみに私の1日の最高記録は13軒である(うどん玉換算で14玉)。
さて、さぬきうどんにはブームが存在する。これも諸説あるようだが、香川県庁によるとブームは4世代存在すると言われている。高速道路が1000円だった時代にブームの一世代が重なり、人気店では相当な行列を見る光景も目にしたが、最近はそこまでの行列は見かけない。ブームで混雑するのは迷惑と思う反面、ちょっとくらい行列があって待ち時間がある方が味覚と胃腸の為には良いということが最近になってようやく分かった気がする。また、各店舗に客足が増え、売上が伸びることは喜ばしいことであるが、高騰する原料の小麦や行列に対応するため警備等の経費が経営を圧迫したり、また、後継者不足で惜しまれつつも閉店した店もある。陽のあたる反対側には必ず影が存在するのである。創業支援の仕事でその光景がオーバーラップし、少し複雑な気持ちになる。
そんなこんなで、自称うどん好きの私には、香川に限らず何処のうどん屋がオススメかとよく尋ねられる。このコラムでもご紹介すべきところ、文字数の制限に加え、食べ物は人それぞれ好みがあるので、あえて今回は割愛させていただいた。
他者から学ぶのはもっともなことだが「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」と先人が言うとおり、自ら現地まで足を運び、自らの目で見て学ぶことが一番大切なことだと今回は言い訳させていただく。
最後になるが、このコラムを書きあげている最中、偶然にもNHKのブラタモリで香川が取り上げられた。内容がカブるのではと恐れたが、勢いでそのまま突き進んでしまった。ブラタモリの放送でいつぞやのブームが再来するのではと恐れながら、死ぬまでにうどん屋を構えたいと思う今日この頃で、コラムはこの辺で箸を置くこととしたい。