Members Column メンバーズコラム

100%の奇跡“すべての人に可能性が”

白岩高子 (NPO法人コーナス)  Vol.82

白岩高子

 NPO法人コーナスの作業センターが町屋を改修した施設に移転し、
アトリエ活動をして丸6年が経ちました。
 「描くための場」「本物の画材」「サポートする人」そして「たっぷりの時間」
を提供すれば、彼らの中にある何かが目覚め、表現を始めるに違いない。
そう信じてスタートしました。
 根拠のない自信だったのですが、これほどまで豊かな表現と継続するエネルギーが
あるとは思っていませんでした。「見えないものを信じる」・・・
それが結果に結びつきました。3年目には次々と賞を取るようになり、
専門家からの評価も高まるようになりました。

 新しい事を始める時、私たちはどうしても過去の経験や常識をものさしに
しています。そして、まだやってもいないのに駄目だと判断しがちです。コ
ーナスメンバーは既成概念ではかれない、一般常識では理解できない人たち。
だからこそ、やってみないとわからないのです。そして、奇跡を起こしまし
た。6人のメンバー全員が公募展で賞を取る・・・まさに100%の奇跡です
ね。
 今では「町屋でアート」が注目され、施設や作品が「大阪ミニュージアム」
として府の登録物にあげられるようになりました。おかげさまで見学者も絶
えません。ここを造った時「開かれた施設にしたい!」という願いが叶い始
めました。
 アトリエ活動の成果は社会的な評価よりも、閉ざされていた彼らの世界が
ほんの少し見えてきたことです。自分の思いを言葉化できない、コミュニケ
ーションが困難な彼らの思いを理解し共感できるようになったのです。「こ
んなきれいな色を生みだしてる。」「この人の見える世界って!」「私たちに
は想像できないくらい豊かなものがあった!」私たちは驚きと感嘆の日々、
ワクワクときめき楽しくてしかたない。スタッフが笑顔を向けると、彼らも
笑顔を向ける。作品が認められると、彼らはうれしくて又描きだす。そうで
す・・・すべての人に可能性があったのです。描き続けることで、彼らは個
としての成長も見せ始めました。
 今では、あちこちから展示の依頼が来るようになりました。
芦屋市立美術博物館「アートピクニック」ではポスターに起用され、
10月2日まで3名の作品が展示中です。
http://corners.blog73.fc2.com/page-2.html
 そして、正規の美術教育を受けなかった彼らの作品が多くの人を引き寄せ、
作家としての魅力がこんなプロジェクトを生み出しました。
 「Pry」http://www.pr-y.org/
 Pryの存在は、たった7名の小さな作業センターに大きな可能性をもたら
しています。プロのカメラマン3名の手によってアトリエの様子が継続的に
撮影され、Pryにあげられていきます。
 12月14日西梅田茶屋町「100万人のキャンドルナイト」で(株)リッシさんとの
コラボが決定しました。本当にうれしい事が続きます。彼らはこれまで、
様々な制約と制限の中で生き、「したらアカン」という否定語で縛られ
不自由を強いられてきました。
「そんなことできるわけがない。」「どうせ無理や。」
親は愛情という名のもとで、様々なチャンスと可能性を奪ってきました。
アトリエ活動では「時間・画材・表現」すべてが自由です。
口出しせず見守り、サポートするだけです。
彼らはアートすることで、やっと自由を取り戻しているのですね。
 30年たった今、それにきづいた私って・・・なんて愚かしいのでしょうか。

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