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荘厳で凛とした空気

清水英彦 (三重県教育委員会)  Vol.270

清水英彦

みなさん、こんにちは。3回目のコラムとなります三重県の清水です。
3週間前の高村さんのコラムにもありましたように、来年の主要国首脳会議(サミット)が三重県志摩市で開催されることになりました。
「美しい自然、豊かな文化、伝統を世界のリーダーたちに肌で感じてもらえる、味わっていただける場所にしたいと考え、来年のサミットを三重県で開催することを決定した。『伊勢志摩サミット』だ。」
開催地決定にあたっての安倍首相の言葉です。選定理由として、英虞湾に浮かぶ島々などを揚げ「志摩には日本の原風景ともいえる美しい自然がある」。また、「伊勢神宮は悠久の歴史を紡いできた。たくさんの日本人が訪れる場所で、日本の精神性に触れていただくには大変良い場所だ。伊勢神宮の荘厳で凛とした空気を共有できればよい」とも。
3週間前に続き、伊勢ネタとなり若干かぶる部分がありますが、今回は、サミット開催地の決め手の一つとなった伊勢神宮のお話をしたいと思います。

伊勢生まれの私は、子どもの頃から毎年、伊勢神宮へ参拝にでかけています。小学生の頃は家族で、中高生時代は友達とチャリで年越し参りに行っていました。結婚してからも妻とお参りに、子供達が生まれた時にはお宮参りに行っており、私にとっては最も身近な神社です。ちなみに、神宮には、おかげ横町がある伊勢の宇治の五十鈴川のほとりにある皇大神宮(内宮)と、伊勢市駅にほど近い豊受大神宮(外宮)があります。正確にはこれら正宮のほかにも、別宮、摂社、末社、所管社があり、全部で125の宮社があるそうです。
さて、その伊勢神宮で式年遷宮が行われました。早いもので、もう2年近く前になります。式年遷宮について簡単にお話しますと、20年に一度、正殿を始め御垣内の建物全てを新造し、さらに殿内の御装束や神宝を新調して、御神体を新宮へ遷す祭事ですが、昨今のパワースポットブームや、60年に一度の出雲大社の御遷宮と重なったこともあり、マスコミにも大きく取り上げられましたので、皆さんもご存じかと思います。
遷宮行事は、クライマックスの遷御の儀の8年前から始まり、さまざまな祭事や行事が執り行われます。今回の御遷宮は、平成17年5月に、ご用材の伐採と搬出の安全を祈願する山口祭から始まりました。これを皮切りにさまざまな行事が行われますが、そのなかに伊勢市民が参加できる行事があります。ご用材を神宮域内に奉曳する御木曳行事と、新しい正宮の御敷地に白石を敷きつめる御白石持行事です。
どちらの行事にも家族で参加しましたが、都合8年かかりますので、御木曳の時に園児だった子供達が、御白石持の際には中学1年生と小学5年生になっていました。
 1つ前(20年前)の遷宮には、仕事の関係で伊勢を離れていたため、参加できませんでしたが、2つ前(40年前)の際(8歳だったと思います)には、今回同様、町ごとに揃いの法被を着て両親や弟と一緒に参加したことを覚えていますので、子供達が大きくなった時に、地元の伝統文化として、なつかしく覚えてくれているとうれしいですね。

そんな遷宮行事に、プライベートだけでなく仕事でも関わる機会がありました。安倍首相が遷御の儀に参列されることになり、お迎えするにあたり、官邸から三重県に調整の依頼があり、その役目が私に回ってきたのです。ですが、なにせ20年に一度の行事であるうえ、総理大臣が参列されるのは戦後初めてであったため、県には参考となる資料がまったくありませんでした。関係機関も同様の状況であり、ドタバタのなか、なんとか当日を迎えました。
祭事そのものには参加資格がありませんので、遷御の儀が執り行われている間、控え室周辺で待機していました。何千人、ひょっとすると万を数えるほどの人がいるはずなのに、すっごく静かなんです。ほんとに厳かで、空気が澄んでいました。何度も訪れ、いつも荘厳な空気を感じている伊勢神宮ですが、この時、それまでに感じたことのない初めて味わう感覚を体感しました。
また、遷宮は皇室の重要行事ですので、皇族の方がおみえになります。遷御の儀の際には、秋篠宮殿下を拝見いたしました。昨年3月には、遷宮後はじめて、天皇・皇后両陛下が伊勢に来られました。この時にも、お迎えする立場である三重県に、宮内庁から調整の依頼があり、その任にあたりました。初めて宮内庁にも行き、限られた期間のなか、怒濤の日々を過ごしました。両陛下が神宮内に滞在している期間は、一般参賀は禁止されます。子どもの頃から何度も歩いたことのある参道に自分以外誰も見あたらない光景、静寂。関係者が偶然参道にいなかった瞬間でしたが、二度と経験できない時間でした。
余談ですが、トヨタの高級車センチュリーの車幅はどうやって決まっているかご存じですか?神宮の宇治橋を渡ることができるように、関係者が橋の幅を測定していったそうです。あのセンチュリーが宇治橋規格とは。うーん、さすが伊勢神宮!
「荘厳で凛とした空気」。冒頭に紹介した安倍首相の言葉ですが、まさしくそのとおり。サミット開催の報を聞き、あらためて伊勢神宮の存在の大きさを実感した次第です。
 皆さん、伊勢神宮を参拝する際には、ちょっと立ち止まり、センチュリーを想像し、宇治橋の幅と比べてみてください。
最後までお付き合いくださった皆さん、ありがとうございます!!

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