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内モンゴルに行ったときの話

榊剛夫 (甲南大学)  Vol.57

榊剛夫

数年前から4回ほど、内モンゴルに行きました。
内モンゴルは中華人民共和国の内モンゴル自治区のことです。
日本の面積の約6倍の大きさがあり、モンゴル人は350万人程住んでいます。
しかし、漢人が移り住んできて今では、人口の8割を占めているそうです。
独立国のモンゴル国とは、別です。

行った場所は北京から約900Km北、万里の長城を越えて、燕山山脈など3
つの山脈を越えてたどり着いたシリンホト市の近くです。
近くといってもシリンホト市から約100Kmほど離れた草原の中。
30年ほど前それまで遊牧民であったモンゴル人は、中華人民共和国により
定住が義務付けられた。1家族当たり5Km四方割り当てられたと聞く。今
は、土地を売ってしまった人、買い占めた人、貧富の差が大きくなり、見た
ところ誰の土地かわからない。だから隣のゲルははるか向こうにある。

当然ながら回りは、草原の草のみ。何にもなし。
車でずっと進むが、曲がると一体どの方向に行っているのかもわからず結局
地図を見ても(いい加減な地図)どこに居るのか又泊まったのかも皆目わか
らない。

着くと馬乳酒で歓迎の挨拶をしてくれる。
各自、ゲルが割り当てられる。10人程度で行っているので、1つのゲルに3
?4人ほど。ゲルは、モンゴルの写真によく出てくる移動式テントで、大き
いものもあるが、直径5mぐらいの大きさで、結構広い。床は、全体の2/3
ぐらいは10cm程度上げていて、じゅうたんが敷いてある。側面にも、全て
ペルシャじゅうたんのようなものが全面にかけてあり、寒さを防ぐようにな
っている。

楽しみの食事であるが、羊一頭を、解体してくれる。解体するのは男の人の
仕事で早ければ1時間ほどで全て終わる。血も少しも流さないで捨てるもの
は何も無く全て使用する。
女の人は、食べれるように内臓を洗ったりして、腸や、胃袋などはソーセー
ジを作るのに使用する。
肉は、大きななべに入れて軽く塩茹でするだけである。
羊を解体することは、モンゴル人にとって大きな行事なので、その時はどこ
から来るのかわからないけれども親戚一同が集まってきている。
みんなで手伝って料理を作る。
夜の食事は、当然みんなで摂る。ひつじの肉は、新鮮な魚の刺身のようにや
わらかく、匂いも無く美味い。
酒は、高原白酒といって、アルコール分60度以上の酒を、強制される。馬
頭琴が演奏され唄う。モンゴル人は歌が好きだ。KNSの交流会のような雰
囲気なので断り切れない。一度は、誰でも次の日二日酔いでつぶれる。それ
でもなんら支障は無い。
元気なものだけが、馬に乗ったり散歩したり、好きなことをすればいい。新
聞も、ラジオも、テレビも無い。朝からゆったりとした時間が流れている。

圧巻は夜である。星が出てくる。草原の上で横になっているとどんどん星が
増えてくる。
天の川は全て真っ白。そのうち他の黒い部分もだんだん星が見えてくる。
周りは、ほとんど山が無いので全天180度四方が全て星によって覆われる。
しばらくじっと見ていると全体の星が、布団のように覆いかぶさって降りて
くるように感じてくる。
しばらくじっとしていると、なんとも不思議な感じが襲ってくる。
頭の中で今見えているこの多くの星は、今あるのではない。今あるかどうか
もわからない
誰もわからない。知らない。それぞれ違う星が同時に見えているのである。

何千年前、何万年前、何億年前、4000年ぐらい前であれば、知識で想像で
きる。しかしそれより前、全く想像できない。それが現実に存在しているの
である。

自分は何だろう。ちっぽけで一瞬。
一瞬なのに、喜び、楽しみまた、苦しみ、悩み、80年余り長いようでいて
短い一生を送る。
全ては、一瞬。一瞬。
一瞬の出会いを大事にしようではないか。何事も一瞬にして終わる。大事。
大事。

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