Members Column メンバーズコラム
大阪市のITアドバイザー
中野秀男 (大阪市大名誉教授,中野秀男研究所) Vol.116
昨年(2011年)3月に16年間勤めた大阪市立大学を定年退官し、まだ頭も体
も動くし、私学からのオファーもないので、ITアドバイザーとして個人事業
主を始めました。税務署にもIT/ICTアドバイザーとして職業の届けをしまし
た。現在は今回話をする大阪市のITアドバイザーから御贔屓にしている料理
屋さんのITアドバイザー等をしています。今日の話は昨年12月の大阪電気
通信大での第35回定例会でプレゼンテーションしたものです。当日はきわど
い話もしましたが、このコラムでは抑えておきます。
大阪市大に赴任以来、西成地区のIT化、情報化指針作成、地域情報化の支
援をしながら幾つかの情報システム構築の委員をしていました。大阪市では
2007年に民間からCIOを募集し木村さんが就任されました。大阪市は庁内の
情報システムの新規構築や運用に最大年間171億円を使っていたのをCIO補
佐として(CIOは市長)30億円程度までカットされました。そのあとを受けて
市の職員がITを適正に使うために外部からアドバイスが欲しいといわれて就
任したのがITアドバイザーです。正式にはIT適正利用推進計画の中にある
ITアドバイザーだそうで、現在は私だけだそうです。
2011年4月1日に市長名の委嘱状を総務局長からいただきました。そのあ
と担当部長から、大きく分けて二つのことについてアドバイスが欲しいと言
われました。一つ目はクラウドコンピューティグの時代に向かう中で、予算
が削減され、人員も削減される中で10年後までを見据えた情報システム構築
運用についての提言をいただきたいということでした。
二つ目はTwitterやFacebook等のソーシャルメディアが出てきているが、そ
れらを職員がどう使うかについて提言して欲しいということでした。
私からは三つ目として、職員が市役所や区役所に来る市民対象だけではなく
Pad系やスマートフォン系のコンピュータを持ち自ら市民の中に入る時代に
なってくるので、セキュリティやプライバシーにも配慮しながら仕事するに
はどうすればいいかについても提言したいと伝えました。
最初の将来を見据えた情報システムの構築は幾つかの自治体で取り組まれ
ており、それらの事例について長所と短所ならびに問題点を伝えることでア
ドバイザーとして動いています。仕事の仕方は組織や担当者で違うし、それ
がそのまま情報システムに持ち込まれるのが日本で、欧米では情報システム
に仕事を合わせるようにしています。日本でもお金がないこともあって、情
報システムに仕事を合わせる方向に向いているようです。ITの進歩で仕事が
ワークフローという形の図で書けたりするので、異なる組織や部署でも同様
な仕事の場合は流れが理解できます。それをそのままプログラムに落とし込
むような事例も出てきています。まあ仕事の可視化というのでしょうか。
二番目のソーシャルメディアに対する取り組みは、自治体では千葉市が早
くにガイドラインを出しており、企業ではB2Cの企業であるコカコーラが明
快なガイドラインを出していると聞いて、それらを担当者等に伝えました。
そのことを全市のIT担当者に話す前に市長が変わってしまって、24区の区
長がTwitterで日々の事をささやく事になってしまいました。Twitterを選
ばれてうまく運用されているなあと思っています。いくらかは私の事前のア
ドバイスの効果があったかなと思っています。
二三年前から話を頼まれると「広がるIT、尖るIT」というテーマで話すこ
とが多くなりました。環境とIT、教育とITという感じで大阪市のITアドバ
イザーはさしずめ自治体とITでしょうか。先日もある勉強会で政治とITも
ありますと言われました。ITは効率化だとよく言われますが、私は多様性の
時代を作る道具だと思っています。利用者から見たときに選択できる時代に
なってきたのでしょう。