Members Column メンバーズコラム
“面白いオトナが大学生協で飲む”会
小坂祐子 ((株)roo/f) Vol.91
■変態世界の匂い
「あ、キミ、こんど面白いオトナが集まって大学生協で飲むっていう会が
あるねんけど、来るか?」
初対面の人間にこんなことを言われたら、「いや、ちょっとこの人コワイ
わぁ」と引いてしまうか、「謎すぎてムリやし!」と心の中でツッコミを入
れつつ愛想笑いで「あはは、変わった飲み会ですねぇ」と適当にかわすのが
普通だろう。ところが、ワイン片手になかなか上品なヒゲをたくわえたその
おじ様の一言に、私はなぜか「あ、いいですね、行きます」と答えてしまっ
ていた。魔が差したというのか、その場の勢いというのか、いや違う、たぶ
ん匂ったのだと思う。
私は学生時代お世話になった方のパーティーで、KNS世話人のひとりN川
さんに出会った。参加者の大半は20~30代前半の若者か学生で、ダンディな
40代のN川さんは、ちょっぴり浮いている感じもしていた。けれどなぜかN
川さんと私は意気投合し、会話は異様な盛り上がりを見せた。そして冒頭の
セリフを言われたのだった。
■変態世界へようこそ
私だって普通は、初対面の人に誘われた得体の知れない集まりに一人で行
ったりなんかしない。だけどこの時はなぜか行かなくてはいけないような気
がして、勇気を振り絞りひとりで大阪電通大(KNS第24回定例会)に乗り
込んだ。誰も誘わなかった。N川さんから得ていた情報は「面白いオトナが
大学生協で飲む」ということだけ。自分だってよく分からないと思っている
集まりに、誰かを誘うなんてできなかった。
私服でいいとHPにあったので、お気に入りの派手な柄のエスニック風の
シャツに、ロシアで使われていそうなモコモコの帽子をかぶって向かった。
会場に着いてみると、得体の知れない集まりは、想像していたのとはちょっ
と、いやだいぶ違うらしいということが分かってきた。まず、モコモコの帽
子をかぶっている人なんていないし、私のような20代の人も、女性もほと
んどいない。ナイスミドルなおじさま達が、なにやらインテリジェンスな会
話を交わしている。完全に浮いている、完全に場違い。しかもキッカケを作
ったN川さんは、私を見かけた時こそ「おおぅ、よく来たよく来た」と言っ
てくれたものの、後は放置である。
けれど会場で、大学の先生やら社長・部長クラス(の貫禄を放つ)方々に
囲まれると、私は開き直ってしまった。「浮いてるけど、全員初対面なんだ
し関係ないや。せっかく来たし満喫して帰ろう」。こうして私は、変態世界
への第一歩を踏み出した。
■変態世界に通う
結局のところ、私はすっかりハマってしまった。まだ変態世界の住人にな
るには、社会的な経験も人間的な深みも足りないが、定期的に通い(定例会)、
住人の方々と交流させていただいている。変態世界は多種多様な人種の集ま
りだ。いろんな年齢・仕事・考え方・性格の人がいて、毎回、自分の持って
いた固定観念がものすごい勢いで崩されていく。
がむしゃらに仕事をしていると、気づかないうちに考えが偏っていたり、
自分の目の前しか見えなくなっていたりすることがよくある。そんな時、変
態世界に行くと、ふっと我に返る。「ああ、顔をあげていろんなものを見な
きゃ。もっと広い世界をみなきゃ」と。3ヶ月に1回の定例会は、凝り固ま
った私の頭をほぐしフラットにしてくれる、なくてはならない存在なのだ。
■変態世界に感謝
私は生まれて初めて、自分たちのことを「変態」と呼びそれを誇る大人に
出会った。それはとても衝撃的で、これからの自分に希望を持てる大事件だ
った。いつも未熟な私にさまざまな世界を見せてくださる、変態の皆様に心
から感謝申し上げたい。また人生の先輩にも関わらず、変態呼ばわりしてし
まったことをここに深くお詫びしたい。心から尊敬する変態のみなさま、こ
れからもどうぞよろしくお願いします。