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宇陀市へ出向して、もうすぐ1年

甲賀晶子 (宇陀市建設部(まちづくり推進担当))  Vol.633

甲賀晶子

こんにちは。奈良県庁の甲賀です。昨年の4月より、宇陀市へ出向しています。
皆さん、「宇陀」をご存じですか?まず、そもそも何と読むのか、そこからかもしれません。
「うだ」と読みます。
宇陀市は奈良県の北東部に位置し、北は奈良市、山添村、西は桜井市、南は吉野町、東吉野村、東は曽爾村、三重県名張市に接して、市の面積は約248㎢で、奈良県全体の約7%を占めています。
宇陀市は大和高原とよばれる高原地帯に位置しています。一定の平野部を有しているものの、山林が全体の約7割を占め、自然が豊かな高原都市です。
交通は、近鉄大阪線で、大阪難波駅や名古屋駅に乗り換えなしで直接アクセスできます。また、車でも大阪市内へ1時間強で行くことができ、比較的都会から近い立地にあります。

1300年続く薬草のまち
宇陀の歴史は古く、『日本書紀』に「菟田野(うだの)に薬猟(くすりがり)す。」といった記載があるそうです。これは、史料で確認できるわが国最初の薬猟の記録だそうで、宇陀の野、「阿騎野」を中心に男性は薬効の大きい鹿の角をとり、女性は薬草を摘んだということです。
また、宇陀地域からは何人もの製薬企業(ロート製薬、ツムラ、アステラス製薬等)の創設者を輩出しています。宇陀松山地区には、日本最古の「森野旧薬園」や薬問屋であった細川家跡の「薬の館」も存在します。
宇陀市と薬の関係は推古天皇時代から現在まで続いているものであり、薬の発祥の地として、薬草を活用したまちづくりを推進しています。
現在、特に力を入れている薬草が、大和当帰(トウキ)です。トウキは、冷え性、血行障害、強壮、鎮痛薬などの漢方薬「当帰」として処方され、女性の強い味方です。当帰の葉が2012年の薬事法改正で食用化が可能となり、料理やお茶への使用、また入浴剤やオイルとして商品化されています。大和当帰は独特の強い匂いがあり(セロリ科なので、セロリの匂いを強めにした感じ)、近くに大和当帰があると、近くにあるな、と分かります。
最近は、大和当帰の植え付け体験なども人気で、健康に興味のある女性の方が、関東などからもわざわざお越しになっています。

オーガニックビレッジ
宇陀市は、夏は冷涼、冬は寒さが厳しいところです。今の季節、隣の桜井市から宇陀市に入ると、雪景色だった、ということもよくあります。
冷涼な気候に恵まれたこと等から、農業が盛んで、宇陀の野菜は美味しいと言われています。その農業の中でもこれから力を入れていこうとしているのが、有機農業です。
有機農業の担い手は、地元農業法人の他、ロート製薬(株)の農業法人、南都銀行のグループ会社、(株)類設計室の農業事業部等があり、独自の販路確保や担い手育成等、多様な経営を展開しています。宇陀市では、2022年11月に農林水産省が進める「オーガニックビレッジ宣言」を全国に先駆けて行い、有機農業推進に力を入れています。
(※オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず地域ぐるみの取組を進める市町村のことをいいます。農林水産省は、2025年までに全国100の「オーガニックビレッジ」の創出を目指しています。)

宇陀のポテンシャルを伸ばす
新型コロナウイルスにより健康に対する意識が高まり、世界的に、オーガニック商品や健康関連の商品は売上を伸ばしています。しかし、日本で有機JASを取得している農地は全体の0.2%とだそうです。JASの認証は未取得ですが農薬も化学肥料も使っていないという農地を合わせても、わずか0.5%だそうです。心身の健康を保つことに強い関心が寄せられる今、ニーズを捉えて、宇陀という地をブランディングすることの大事さを、宇陀市に出向して感じました。宇陀の持っている資源は素晴らしいと思いますので、これを伸ばしていきたいと思います。

公民連携まちづくりプラットフォーム
昨年11月に、「宇陀市公民連携まちづくりプラットフォーム」を立ち上げました。これは、多様な主体によるネットワークを構築し、宇陀から新たな価値の創造、新たな経済活動やサービスの創出を目的としています。プラットフォームのテーマは、現在のニーズと宇陀の資源を掛け合わせ、(1)オーガニックビレッジの取組を起点とした農と食の活性化、(2)ウェルネスシティの推進(観光)、(3)新たな学びの機会の創出、(4)地場産業の活性化・地域ブランディングの4本としています。
現在、テーマ毎にフォーラムを開催しながら、プラットフォームの会員と具体的なアクションについて検討し、コンソーシアムづくりを進めています。
プラットフォームには、市外の企業や大学等の団体の方にも入っていただくことが可能ですので、ご興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。

宇陀市公民連携まちづくりプラットフォーム
https://www.city.uda.nara.jp/toshikeikaku/machidukuri_pform.html

有機的なネットワークづくり
有機的なネットワークの必要性と、そのネットワークを構築する仕掛けの大事さについては、KNSや私自身のプライベートのまちづくり活動を通して身をもって体験してきました。ですので、今回、宇陀市でもプラットフォームをつくり、有機的なネットワークを作りたいと思いました。
宇陀市は人口約2万8千人で、比較的市民や企業の方と近く、顔の見える関係にあります。また、市役所の規模も小さく、風通しがよく、機動的な組織となっていることが、プラットフォームの立ち上げに繋がりました。

結局のところ、人が人を呼ぶと思っています。
多様な人材が互いに学び、刺激し合い、各個人が心身ともに健康に豊かに成長する、そんな舞台を宇陀につくることができればと思っています。

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