Members Column メンバーズコラム

「クラフトソン」によるイノベーション創出

北林功 (COS KYOTO株式会社 代表取締役/コーディネーター)  Vol.378

北林功

COS KYOTOの北林です。京都を拠点に日本各地の地場産業をグローバルな「文化ビジネス」とする取り組みをしております。具体的には、次の3つの事業を展開しています。
1. 素材・技術のコーディネート「MoonShine mtrl」
日本各地の素材や加工技術を国内外のデザイナー、メーカー等に紹介し、製品、デザイン、開発・製造のイノベーションに結びつけます。
2. 小売・卸売「puree kyoto」
携わった地場産業の商品の楽しみ方を提案するショップを展開しています。職人との強い繋がり「Direct Trade」をコンセプトに、ニーズに合わせた「アツラエ」や修理なども手がけています。
3. 企画・コーディネート
地場産業のビジネス化のためのあらゆるサポートを行ないます。戦略立案・製品開発・PR・国内外販路開拓・イベント企画/運営等を行なっています。

これらの事業を通じて、国内外のデザイナーやクリエイター、職人ら多様な人が交流すればイノベーションが促せるのではないかと考え、2016年より開始した場が「Design Week Kyoto(以下、DWK)」です。創造都市として知られる米国オレゴン州ポートランドの「Design Week Portland」にヒントを得て始めたオープンハウスイベントです。
具体的には、京都の工房・工場・アトリエなど各種のモノづくり現場を1週間オープンし、交流を通じてアイデア創出を刺激・促進する場です。過去2回開催し、1万人が来場する場として少しずつ認知が高まってきています。
その運営を通じて「交流から生まれたアイデアを具体化したい」というニーズが見えてきました。そこで新たな取り組みとして今回の本題である「クラフトソン」を企画し、実施しました。

■「クラフトソン」の仕組み
1.クラフト+マラソン
「ハッカソン」(Hack+マラソン)を耳にした方は多いかもしれません。IT業界を中心にプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが2-3日集中的に作業して新たなアイデアを生み出し、実際に試作品まで作り上げてしまうコンテストで、国内外で開催されています。
「クラフトソン」は、これを「クラフト」に応用展開した場です。

2.サポートインフラ
今回考えた仕組みは集中期間後のサポートインフラに特徴があります。
1. クラフトソンで新たなアイデアを試作し、最優秀賞を決定
2. 最優秀アイデアはクラウドファンディング(CF)で広報およびテストマーケティング(ニーズを確認)
3. 地域金融機関が必要に応じて資金融資等のサポート
4. 完成した製品を地域の百貨店等で販売
今回は、1.を京焼・清水焼の洸春陶苑様、2.をMakuake様、3.を京都信用金庫様、4.をJR京都伊勢丹様にご協力頂きました。(改めて初回の取り組みにも関わらずご協力快諾頂いた各社に御礼申し上げます)

■実施内容
9月2-3日に第1回クラフトソンを実施しました。テーマは「京焼・清水焼」。
初回にも関わらず20名の多彩な参加者が集まりました。参加理由の多くは、やはりクラフトソンの仕組みにより、アイデアを世に出せるということ。
会場は9月1日にオープンしたモノづくり拠点「Kyoto Makers Garage(KMG)」(Makers Boot Camp、京都市、京都高度技術研究所、京都リサーチパークが共同運営)にご協力頂きました。CNCやレーザー加工機、3Dプリンターなども揃う場です。
2日間のスケジュールは次のような流れです。
(1日目)
京焼・清水焼の歴史・工程・特徴の説明
各自アイデア出し
アイデアの方向性が似ているメンバーでチーム分け
チームとしての開発アイデア決定
試作品開発
(2日目)
試作品開発(続き)
プレゼンテーション・審査・表彰
●留意点
本イベントの成否を左右するポイントは審査基準と試作品の水準です。平等性を担保して参加者の意欲とコンペとしての面白さを高めつつ、世に出せる水準のものにすることが重要です。
・審査基準
 今回は5つ定めました。特に「文化性」を入れたことはクラフトソンの特徴です。
 -革新性 今までにないもの
 -実現性 実際に商品化できるもの
 -審美性 美しさを考慮しているもの
 -事業性 持続・発展できるもの
 -文化性 京焼・清水焼ならではのもの
審査員は、洸春陶苑の高島慎一様、Makuake関西支社長菊地凌輔様、京都信用金庫常務理事中田高義様、JR京都伊勢丹のストアディレクター栗栖由香様にご担当頂きました。これにより、参加者も審査員もその後の取り組みへの本気度合いが高まる効果がありました。

・試作品開発のサポートと平等性
メンターによるサポートを入れることがハッカソンでは多いですが、今回は職人の高島様に10分間質問できるカードを各チームに1日あたり2枚配布しました。各チームのサポートを平等に行なう仕組みとして考えたものです。
また、試作にあたっては紙粘土や発泡スチロール、グルーガンやカッターなど簡易な材料と道具を用意し、アイデアプレゼンに過不足の無いものを用意しました。

■今後の展開
結果、4つのアイデアが生まれました。どれも革新的な内容であったことはもちろん、2日間という短期間で、かつ低コストで革新的なアイデアを京焼・清水焼で生み出せたことは大きな成果です。多様な人たちが集中的に集まって考えるというプロセスは創造的な取り組みには大変有効です。
そして、最優秀賞は具体的にクラウドファンディングに載せるために進み始めています。2018年2月18日~25日に開催するDWK2018では何らかの報告ができるように進めて参ります。
また今回のクラフトソンの仕組みはオープンソース的に活用し、日本各地の地場産業の現場でご活用頂きたいと考えております。初回の取り組みから多くのことを学びましたので、今後も改善を重ねて参ります。

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