Members Column メンバーズコラム
“経営工学”でよりよい社会をつくる
皆川健多郎 (大阪工業大学) Vol.679
KNSのみなさま、いつも大変お世話になり有難うございます。この度、お声がけをいただき、久々にコラムに投稿の機会を頂戴いたしました。拙い内容ですが、ご一読いただき、またご意見など頂戴できればと思い、執筆をさせていただくことといたしました。
さて、昨年、新型コロナウィルス感染症が第5類に移行されると、生活が一気にコロナ前に戻った気がします。産学連携の一環として、個人的に担当させていただいていました各種セミナーや工場見学などの活動もコロナ禍には中止になり、一部をオンラインに代替することとなりました。しかし、その活動も昨年はほぼ対面での開催となり、多数のセミナーの担当をさせていただきました。(一財)海外産業人材育成協会(AOTS)や(公財)太平洋人材交流センター(PREX)よりご依頼をいただき担当させていただいていました訪日研修も、来日自体が途絶え機会を失いましたが、昨年は、中南米(メキシコ、ペルー、アルゼンチン、エクアドル)、ベトナム、そしてタイなどの方々にお越しいただき、話題提供の機会を頂戴いたしました。海外の方々との交流の機会は、日本にいながら外から日本を見る、そのような貴重な機会にもなっていて、再びそのようなインプットの機会が復活したことが自身の成長の機会にもなっています。手段を変えてでも活動が継続できたことが、現在につながっているといえます。
私の定番のコンテンツにレゴブロックを活用した組立演習がございます。三密(密閉・密集・密接)の対策が必要な時代には、この演習も実施が困難になりました。その対策として、動画をつかったコンテンツを検討し、オンラインでの対応も可能となるという機会を得ることができました。今となれば、三密さえ懐かしい言葉になりましたが、その環境に対応をして、活動を継続することができたことが、再び訪れた対策の不要な時代にも有効に活用されています。訪日研修の対応においても、事前学習としてオンラインでの話題提供を実施し、訪日されてからの研修内容を充実することができています。特に私は、Googleフォームをよく活用をします。Googleフォーム自体は以前よりあったものですが、オンライン学習の対応の中でこの存在を知りました。そして対面となった現在でも簡単なQ&Aを授業で実施するために活用をしています。具体的には、講義中に学生に質問をして手を挙げてもらってもなかなか回答をしてもらえませんが、GoogleフォームのURLをQRコードにして表示するだけですぐにスキャンして回答をしてくれます。さらにその結果は、客観値としてすぐに集計できるため、その後の話題提供にも大変有効です。ただ、「さっきのフォームに回答できなかったのですが、成績に影響がありますか?」といったような学生の問い合わせは悩ましく、すべてメリットだけとは限りません。しかし、それを差し引いても効果は大きいといえます。
ところで、IoT、AI、ロボットの活用によりDXを進めようとしていた状況に対して、コロナ禍のときにはデジタル化の活用が不可欠となり、世の中のデジタル化は一気に進んだ気もいたします。私たちが進もうとしていたデジタル化の世界が、デジタル化の世界の方からやってきた、そんな感じも致します。昨年はChatGPTも話題となり、いよいよAIの活用もさまざまな場面で拡大しています。これらの技術の活用に対して、「何か良い事例はありませんか?」といった問い合わせをいただきます。新しい技術に先行事例を求めるのではなく、私たちにとって大変であったことをこれらの技術を活用してなくすことに挑戦するのであれば、とりあえずは使ってみるという考え方が重要ではないでしょうか。「今まで誰もやってないこんなことがやりたいのですが、一緒にやりませんか?」といった問い合わせが望まれると思います。
これまで自称、1,000回を超える現場訪問の中から見えてきたものは、わが国モノづくり企業の現場にはその規模にかかわらず、さまざまな蓄積された知恵と工夫があるということです。しかし、これらが暗黙知であれば、その活用は容易ではありません。これらを少しでも形式知化することができれば、そのことは現場の貴重なヒト・モノ・カネという経営資源の有効活用につながります。経営資源を活用するための手段としてデジタル化に期待が高まりますが、私は管理技術の活用を推奨しています。管理技術とは、経営工学、IE(インダストリアル・エンジニアリング)、カイゼン、そして5Sなどで、この活用こそ、現場の限られた経営資源の有効活用を促進し、さらにデジタル化までもより効果的に推進することを可能にします。経営工学でもっといまの状況はよくなる、経営工学が世の中に貢献できる、そして、いまこそ経営工学が必要だ、そんな妄想を膨らませていますが、それが現実ではないかと思っています。レゴブロックを活用した組立演習も、その普及の手段の1つとして実施をしています。経営工学にご興味を持たれた方、どうぞお気軽にお問い合わせください。ご一緒に、経営工学を活用してよりよい社会をつくってまいりましょう!