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社史と理念とメッセージ

河村 英也 (株式会社エトレ)  Vol.694

 皆さんは「社史」とか「周年誌」とかを読まれたことはありますでしょうか? 「〇〇株式会社100年史」といった、企業や組織の創業・創設からの歴史をまとめた書籍です。現在私は、色々な企業のこの社史の制作に携わっています。

 「社史は読まれない」と良く言われます。書籍ですから当然読むために作るのですが、記録性も重視するので、書き残しておくべき事柄をいろいろ記載していくとドラマ性が乏しくなり、読み進むほど面白味のないものになっているのかもしれません。そのため、写真を多用して見てもらうことを重視した「記念誌」というものも作られていますが、いま私が携わっているものは、ページ数も多いどっしりとした、しっかりと歴史を記録するタイプばかり。面白くてついつい読み進んでしまう、といったものではありません。

 そういう社史でも、創業の頃の話はなかなか面白く読めます。ドラマチックで惹きつけられます。どうしてでしょうか? その企業が創業された頃の明治・大正とか昭和初期とか、その時代が面白いのでしょうか。社会が成熟していく中、新しいことにどんどん挑戦できる環境に、面白さの要因があるのでしょうか?

 社史ではないのですが、新聞でインターネット関連の起業家たちを描く特集を読んだことがあります。起業家たちが、成し遂げたいことを想い描き、その実現に向けて挑戦していくことが描かれた物語だったのですが、とても面白く感じました。時代は平成。明治・大正でも昭和初期でもありません。それでも面白い。「これで世の中の役に立ちたい」「この事業をなんとかものにしたい」といった熱い想い、そして、それを実現しようと挑戦する姿。そういったところがとても読んでいて興味深く面白かったのです。時代ではなく、起業家たちの事業にかける強い思いと挑戦に惹きつけられました。

 社史での創業の頃の話もまさにそれです。強い想いがあるからこそ、様々な困難にも立ち向かえるし、共感し一緒に挑戦してくれる仲間も増やしていけるのでしょう。「こうしたい」という想いをしっかり持つことの重要性に気づかされます。事業への想いをうまく理念にまとめ、その理念を社内にしっかりと浸透させることで事業を拡大されていく様子などを見ると、理念の大切さを実感しますし、社員に共感してもらうためのプロセスの大切さが、ひしひしと伝わってきます。

 そうした熱い想い、それをまとめた社是や企業理念というものが、社史制作に携わっているとどんどん気になってきました。そして同じように企業理念に関心をもつ方々とともに、企業の理念について考える取り組みを行うようになります。理念はどう作っていくべきかなど色々と意見交換を行ったり、企業に勤めている方に理念についての考えや、自社の理念についてのお話をうかがうことなどを行ったりしました。

 現在では、日本の企業がまとめられている理念について勉強してみようと、主に上場企業の企業理念などを調べています。調べる企業のWEBサイトを訪れ、掲載されている理念などを見ていくのですが、創業精神や社是をベースに理念体系として再定義されているところや、改めて創業からの基本となる考えを理念としてまとめられたところなど、近年になって理念をしっかりとまとめられているところが多いように思います。調べた企業数がかなり多くなりましたので、順次公開していこうと取り組みを進めているところです。

 その作業の際に各社のWEBサイトを訪れると、トップページの次に見るところが、トップメッセージです。最近これがとても気になっています。

 もともと、何か企業を調べるときには、トップメッセージを見て、その企業の概要をつかもうとしていたのですが、改めて多くの企業のトップメッセージを見ていくと、このメッセージにも各社特徴があって楽しめます。ありきたりの簡単なご挨拶程度のものもあれば、歴史も含めて端的にわかりやすく特徴を紹介しているもの、想い満載の熱くて濃くて長いものもあり、企業およびトップの考えがよく表れています。

 企業のWEBサイトにいけば、まずトップメッセージを味わってみる。皆さんも、その思いで、一度トップメッセージを読んでみてはいかがでしょうか。あと、社史の創業の頃の話も、機会があればぜひ。

 

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