Members Column メンバーズコラム

demo!expoに寄せて

兼松泰男 (大阪大学)  Vol.649

2023年6月17日、KNS20周年記念定例会に参加しました。冒頭だけの参加です。若い世代にバトンを渡す大会になったのではないでしょうか。基調講演?「KNSラジオ」、見ていて、照れくさくなりました。でも、すごいですね。「ああ、そうか。」わかったことは、機会なんだってこと。勝手にdemo!expoやっていいんですよね。それが、繋がっていくと面白そうだなと思いました。

酒場、キャンパス、鉄道の、その先には、どんなアイデアが出てくるのでしょうか。勝手に夢想してみましょう。カップルで楽しむ。親子・家族で楽しむ。グループで楽しむ。地域で楽しむ。参加型、体験型の交流ができるといいなあ。お祭りに合流できるのもいいですよね。ずっと続いていく仕掛けであること、人のつながりを大切にすること、といったことを考えればいいのかな。なりわいとパートナーを見出すきっかけをつくるということかな。

ここ数年、里山や海岸、鉱山跡など産業史跡、博物館などを見て回っています。先日、滋賀県守山駅で自転車を借りて、徘徊していたら、守山市ほたるの森資料館に行きつきました。既に蛍の飛び交う時期は過ぎていました。小さな透明な水槽に水が入っていて、上に、目の粗い網があり、その上に水辺の苔が載せてある。2メートル四方の机の上に、一面にこの小さな水槽がおいてあります。壁には、いろいろな蛍の話や施設の説明がいたるところに貼ってあります。それを眺めていたら、「いいものをお見せしましょう。」と声がかかりました。水槽の中を覗いてみると、長さ1ミリ程度のごみのようなものがたくさん入っています。虫眼鏡で拡大して見ると動いています。孵化したばかりの蛍の幼虫でした。水槽にオス2匹、メス1匹を入れておくと交尾して、およそ千個の卵を生み、孵化して、その中の2,3匹が、なんとか生き残るのだそうです。幼虫は変態を繰り返し、大きくなっていき、体の大きさに見合ったカワニナという貝を食べて育ちます。ちょうどよい大きさのカワニナを探して与えるのが、とてもたいへんなんだそうです。苦労して育てた蛍を周囲の人工の川、蛍の森に放って、飛び交う蛍の光を楽しむことができます。蛍の光ツアー、蛍合宿なんか楽しそうですよね。現地テント村や民泊と大学での生物発光・化学発光の実習を組み合わせた親子教室を学生企画でやるというのはどうでしょうか。

光といえば、昨年から、サイエンスフェスタ大阪に参加して、「太陽で遊ぶ」という企画を実施しています。
https://www.pesj-bkk.jp/OSF/pdfdoc.php?gbsr=&memo=title_regular&id=Gpl0FivBkD
中高校生向けの企画です。太陽の光を使った実験は、いろいろと楽しめます。真っ暗にした土蔵に、ひとつの穴を空けたところを想像してみてください。ひとすじの光線が見えますか。この光を使ってみましょう。土蔵のかわりに、テントで、やってみました。テントでつくったカメラオブスキュラ(巨大ピンホールカメラ)は、外部の情景を壁に映し出し、不思議な感覚を引き起こしてくれました。

1970年万博のシンボルは、太陽の塔 https://www.pesj-bkk.jp/OSF/pdfdoc.php?gbsr=&memo=title_regular&id=Gpl0FivBkD
ですよね。もうスケジュールが抑えられてしまって、使えないかもしれないけれど、太陽の塔を生かしたいと思うのです。岡本太郎って、demo!expoに通じていませんか。天体としての太陽から、太陽光利用まで、太陽利用も自分事として考えてみると思わぬアイデアが出てきます。試作や実験を交えた、息の長い、ワークショップをやりませんか。学校や、青少年野外活動センターとか、図書館、博物館、公共の場を活用したら、どこでも、太陽の実験はできますよね。太陽の塔からはじまるネットワークが、人と人をつないで、コミュニティとコミュニティをつないで草の根のように育っていく。それぞれの根も深く、深く成長していき、つながり、助け合って育っていく。

20年前、KNSを立ち上げたころ、失われた10年が、失われた30年へと突入していく、そんな兆候を感じていました。けれども、渦中にあって、産学官民の「学」の意味を見失っていたように思います。「学」の土台は、言うまでもなく人です。未知を楽しみ、挑戦することで、成長していくのが、本来の「学」の在り方です。「学問」は、その字のごとく対話から生まれます。権威と専門の壁で、コミュニケーションが成り立たず、やせ細った学問になる危険性とは、常に隣り合わせなのですが。また、「学」はいたるところにあります。未知であることは、恥ずべきことではなく、小さな不思議、わからないことを抱きしめて、わかるような道筋を見つけ続けていく営みを大切にしたい。そのためにも、大学を開かれた場に変えていく。抑えられていた、考える楽しさを取り戻す。成し遂げたいこと、好きなことに没頭し熱中して、道を切り拓いていく人たちが報われる仕組みを取り戻す。これからの長い道のりをゆっくりと歩いていきましょう。

その起点としてのdemo!expoを一緒につくっていきたいと、私は考えています。

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