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起こせ!連携イノベーション – 岩大・盛岡モデル –

金澤健介 (岩手大学三陸復興・地域創生推進機構(盛岡市商工観光部))  Vol.396

金澤健介

KNSのみなさま、お世話になっております。
期待のルーキー…もとい(笑)新参者の金澤健介です。KNSのみなさまには、昨年9月2日の第11回産学官民コミュニティ全国大会からお世話になっております。はじめましての方も含めまして、今後ともよろしくお願いいたします。

私は、盛岡市商工観光部ものづくり推進課立地創業支援室の職員ですが、昨年4月の同室への人事異動とともに、岩手大学三陸復興・地域創生推進機構に派遣となりました。

岩手大学では、相互友好協力協定締結自治体との共同研究という形で、自治体職員の派遣を受け入れ、産学官連携の推進、ひいては当該連携による地域創生を推進しています。現在は、盛岡市のほか、八幡平市、北上市、久慈市及び釜石市から1名ずつ派遣されておりますが、派遣期間や研究テーマは、自治体により異なります。
盛岡市の場合は、平成19年度から派遣が始まり、私が6代目共同研究員となります。派遣期間は2年間で、2代目研究員からは、テーマとして「盛岡市における産学官連携による持続的な産業振興に関する実践的研究」を掲げて、活動しています。

現在、歴代研究員が尽力してきた結果、一定の成果を残しつつも、持続的な産学官連携には残念ながら至っておらず、この「連携の持続性」が課題となっています。
これまでは、行政マンである共同研究員が、コーディネーターとして産学をつなぎ、継続的に関わることによって、産学官連携としてきましたが、一流のコーディネーターと比べて、明らかに知識・経験が不足しており、ようやく慣れてきた頃に異動となるため、労力の割に成果が出にくく、持続的な連携に至らない状況となっていました。本来、理想の産学官連携とは、共同研究員が関わらなくとも、産学と官(市役所等)が自発的に連携し、三者がそれぞれに利益を得ながら、産業振興の持続している状態を差すもので、この状態が、ほかの企業及び業界に波及することにより、持続的なまち・ひと・しごとづくり―地域創生―が推進されるものと考えます。
そこで、この現実と理想の間を埋めるものとして、産学官連携における「官」の役割に注目し、仮説として「連携の持続性は官が動くことによって生まれ、この官を動かすことこそが共同研究員の役割ではないか」と考えました。共同研究員にとっては、派遣元自治体の実態・実情把握が比較的容易であることと、行政マンとしての能力を最大限に活かせることから、まさに特権・得意分野と言えます。

この仮説を具現化し、課題解決方策として提案するものが、新たな連携手法「岩大・盛岡モデル」(MIUモデル=Morioka city and Iwate University モデル)です。
これは、共同研究員が官(市役所等)に対して、情報交換(産学の動向を伝えるとともに、官の実態・実情を把握する)及び折衝を行うことにより、産学と官をつないでいくものです。また、必要に応じて、コーディネーター(INSいわてコーディネート研究会等)や金融機関(いわて産学連携推進協議会等)とも連携していきます。
具体的な活動スキームとしては、市役所担当課へのヒアリングによる情報収集と、市の会議への出席を二本柱としています。この後者の利点の一つとして、会議の場での民間事業者との出会いが挙げられますが、これは、会議構成員を委嘱されている事業者はパブリックマインドを持っている可能性が高く、なおかつハブ企業である可能性も高いためです。
共同研究員がこの活動を行うことによって、大学の研究シーズを活用できる相手先を飛び込み営業よりも効率的に見つけることができ、さらに大学との連携に至った場合は、市政課題の解決にも関係する可能性が高く、そのため、産学の動向に、官も注目せざるを得なくなります。そして、この動きがほかの企業及び業界に波及することにより、やがては持続的な産業振興・地域創生につながるものと考えます。
また、このモデルに基づく新たな産学官連携を進めていくうえで、官において重要なことは、プライベートマインドを持ち、民間事業者と目線を合わせながら、税収増加や市政課題解決に向けて、持続的な施策を講じていくことであるといえます。具体的には、産に対して、業界全体の支援・調整を図りながら、必要に応じて投資的に助成を行い、税収を上げていくことと、学に対して、政策や地域のニーズといった情報提供を行いながら、学識経験者からの意見を得て、政策形成に活かしていくことです。
これらのことから、共同研究員が官と強固に連携しながら、産学官連携を外側から支援することによって、連携の持続性は生まれるものと考えます。

岩大・盛岡モデルについては、昨年4月の着任以降、日々の活動を通じて、発案したものです。現在、林業・木材産業を中心に、このモデルに基づく連携を進めているところですが、まだ成果は出ておらず、モデル自体も決して完璧なものではありません。来年3月までの残任期の中で、ブラッシュアップを図りつつ、実証していきたいと考えています。
そして、岩大・盛岡モデルによる連携手法のイノベーションを通じて、実際にイノベーションが引き起こされることを願ってやみません。

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