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香港・深圳のスタートアップシーンを訪ねて

長川勝勇 (大阪イノベーションハブ)  Vol.397

長川勝勇

2018年も新年が明けたと思ったらあっという間に1月が終わりました。今年はとても厳しい寒さが続いていますが、皆さんのお住いの地域ではいかがでしょうか。わたしは不覚にも数年ぶりに高熱が出る風邪をひいてしまい、このコラムを書いている今もベッドで布団にくるまって書いている状況です(笑)。
さて私の勤務先である大阪イノベーションハブ(OIH)は、「グローバル展開が期待されるプロジェクトを創り出す人材を輩出する」というミッションがあるのですが、それを実現するための手段の一つとして、主に学生や若手起業家を対象に海外の「イノベーションの聖地」を訪ねることでアントレプレナーシップを醸成する「OIH海外ワークショップ」という事業を毎年実施しています。

過去4年間は米国シリコンバレーを訪問して、現地の投資家の前でのプレゼンテーション、スタンフォード大学など現地の大学でスタートアップ関係やデザイン思考の講義を受講、GoogleやAppleといった著名なイノベーション関連企業への訪問、現地起業家との交流によるネットワークづくりなどをしていましたが、今回は昨年から大阪市が進めるビジネスパートナー協定の関係で深?市とご縁があって、ちょうど今年の1月に香港で開催される「アジア金融フォーラム(AFF)」のタイミングと合わせて深?の現地起業家やアクセラレーター、コワーキングスペースなどスタートアップ・エコシステムに触れるために、今年の海外ワークショップは香港・深?を訪問することになりました。

ご存知の方も多いかと思いますが、中国の経済特区に指定された深圳はこの30年ほどで急激に発展した都市で、現在の昼間の人口は約1,300万人いて、その平均年齢は34歳という若さだと言われています。私のように髪に白いものが混じっていたりする人が電車に乗っていると「おじいさんこの席をどうぞ」と席を譲られることもあるそうです(苦笑)。実際私たちが訪問した深圳の中心部には見上げるほどの高層ビルが立ち並び、その前を若いビジネスマンが笑顔で話しながら闊歩し、またあちらこちらで建設中のビルや道路が造られている最中で、まだまだこれから発展する気満々な街といった印象でした。

今回は初めての地域への訪問ということで、従来対象だった学生や起業家からターゲットを広げて、中国・深圳に関心のある中小企業の経営者なども含む総勢21名と一緒に、現地集合現地解散で1月14日から16日まで香港に、17日から20日まで深圳に行ってきました。千葉県から一人で参加したイノベーション関連に関心があるという医学部の女子学生や、「客観的にこの町を見てみたい」という深圳に工場を出している中小企業の経営者まで、さまざまな個性の参加者となり、いろんな視点からの意見や感想が聞けたことは私にとっても大いに参考になった一週間でした。

ここで旅行日記のようなお話しをしてもあまり意味がないので、この香港・深圳の7日間で感じたことを以下にまとめてみます。

1) 自分の国、自分の住む土地に誇りを持っている
とにかく香港の人も、深圳の人も、自分が住む街、場所がどれくらい誇らしいかを自信をもって語ってくれます。私はその偏愛ぶりに一瞬とまどうほどでした。
次々と「世界一の○○」「東洋一の□□」といったことが説明の中に出てきます。
日本人は自分の国や街をこれだけプッシュすることはあまりないような気がしました。

2) ここに来た人はみな「深圳人」
これは深圳湾創業広場というスタートアップとアクセラレーターやインキュベータ、ベンチャーキャピタルが集まる区域にあるオブジェに刻まれている言葉で、中国だけでなく世界中から集まる人が「深圳人」なんだ、という意味のスローガンです。
シリコンバレーも多様性がイノベーションを生み出していると言われますが、まさに深?は多様な人種や価値観を持った人が集い、ビジネスを行う場所になっています。

3) 民主主義国家では不可能なスピード感
これはいたしかたないことですが、例えば橋をひとつ香港と深圳の間に架ける、となった場合、香港では賛否両論を議論し決議まで10年かかったそうですが、深圳は1年かからない。共産主義国のトップダウンの実行スピードは民主主義の比ではありません。有無をいわず実行し、失敗だったらまた即やり直す。
これはさすがに日本と比較することはできませんが、こと経済発展に関する決断と実行スピードが今の深?を作っていることは間違いありません。
訪問した精華大学深圳キャンパスの職員の方が、「深?の10年前って、100年ぐらい前のような感覚なんです」とおっしゃっていたのが今の深圳の勢いを表しているなーと思ったのと同時に、私がまだ幼かった日本の高度成長期のころ、親の世代が同じことを言っていたのを思いだしました。

4) それでも日本は素晴らしい、と教えられる
先述のとおり、香港でも深?でもその住民は自分の住む街に自信と誇りをもって声に出して自慢しています。
ただ、深圳で観光事業会社を経営している、今回のツアーガイドを務めていただいたLEE社長から聞いた言葉は、私たちがただ中国の発展ぶりやシリコンバレーの特殊性などを口にする前に、自分の心に刻んでおかなければと感じた私たち日本人へのメッセージでした。

「深圳は世界一になろう、世界一のものを作ろうと日々努力している。それはすごいことだし、誇るべきことだが、すでに日本には中国が到底かなわないような素晴らしいものがたくさんある。残念なのは、ここに来る多くの日本人は自分たちのことに自信がないのか、気づいていないのか、それを誇らしく語る人を見たことがないのです。」

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