Members Column メンバーズコラム

大阪ケイオスがすすめる中小企業連携

和泉康夫 (株式会社新日本テック)  Vol.130

和泉康夫

 一昨年の秋、大阪のものづくり中小企業経営者ら19名が株式会社大阪ケイ
オスを設立し、企業PR映像の制作や運用をはじめ、総合受託加工、新技術や
新製品の共同開発、採用活動まで様々な活動を進めています。本稿では、そ
の活動について報告します。
 そもそも、株式会社大阪ケイオスがこうした企業連携を開始した契機は、
以下の背景によります。
長期化する円高やデフレ、エネルギーコストの高騰などを背景に国内市場が
縮小し、「コストパフォーマンス」、「独自の魅力」そして「海外市場の
成長力取り込み」が求められる中、私たち中小企業は、さらに、以下のような
課題も抱えています。

 【事業領域拡大の必要性】国内市場が縮小する中でも中小企業が成長を
続けるには、限られた製品や技術の高度化だけでは不十分で、事業領域
  を拡大する取組みが必要です。
 【下請け構造からの脱却】付加価値が限定される下請け構造から脱却す
  るには、自ら市場ニーズを察知して独自の製品や技術を開発すると同時
  に、独自ブランドの構築と販路開拓が必要です。
 【中小企業ならではの付加価値アップ対策】大企業がグローバル規模で
  ボリュームゾーン市場を目指す一方、私たちものづくり中小企業は、ス
  マイルカーブの両翼である「付加価値の高いものづくり」と「市場ニー
  ズに応えるソリューション提案」で市場ニーズにきめ細かく対応すると
  同時に、自社製品や技術を「見える化」し視野を海外にも広げる必要が
  あります。
 【将来を担う人材の採用と育成】企業の将来を担う若い人材の採用も不
  可欠ですが、「ものづくり中小企業はローテク、3S(整理・整頓・清掃)
  ができていない3K(きつい・汚い ・危険)職場」という紋切型のマス
  コミ報道に甘んじていては、人材採用は勿論、その後の人材育成も進み
  ません。

 これらを全体的に考えると、中小企業と言えども大企業と同様の活動が求
められており、その対策として、「気持ち」を同じくする複数の企業がそれ
ぞれの特徴を生かせるよう戦略的に連携し、独自の製品や技術、サービスを
創発できるよう総合プロデュース能力を高め、さまざまな効率化を進めてコ
ストパフォーマンスの高い提案を顧客に提供する必要があります。これはま
さに、「企業連携による経営革新」そのものと言っても過言ではありません。
今回はその中でも独自活動の一つである人材の採用や育成の活動を紹介しま
す。

 巨大な事業所を多く持つ大企業とは異なり、中小企業は全容をまさに一堂
に紹介できます。しかし、身に見える資産だけを紹介していては、学生さん
の入社動機を高めることは困難です。そこで、実地見学と同時に、企業独自
の「ものがたり」や経営理念という「目に見えない大切な資産」を企業映像
で紹介し、「ものがたりづくり」への参加意識を学生の皆さんに持ってもら
うことを重視します。

 こうした視点から、大阪ケイオスは、阪南大学様、大阪工業大学様のご協
力のもと、「フィルム就活フォーラム」をH23年3月とH24年9月に開催しま
した。大教室で1社90秒の企業映像約10本を観た学生さんが、ヒアリング
を希望する企業3社の小間を順次に移動して、それぞれの経営者のビジョ
ンや企業独自の「ものがたり」に触れたのち、最後に全員で交流会を開き
ます。そして後日、学生さんは個別の企業訪問に加え、大阪ケイオスの冷
間鍛造関係3社合同の「冷間鍛造ツアー」などに参加し、ものづくり実地体
験を通して就業イメージを高めることができます。

 また、企業と学生さんの接点を通常時にも広げるため、平成23年度大阪府
地場産業等総合活性化補助事業の助成金支援を受けて「町工場に新風を!産
学連携就業体験型ファクトリーツーリズム 工場萌えツアー」(コンソーシ
アム型学生インターンシップ)(写真)も今春開催しました。さまざまな実
績も出てきており、今後は、こうした人材の採用や育成活動は勿論、上記課
題の対策にも力強く取り組んでいきたいと考えています。

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