Members Column メンバーズコラム

環境カウンセラーって、仕事になる?

堀江 健司 (環境カウンセラー)  Vol.815

皆さんは、「環境カウンセラー」という制度をご存じでしょうか。
少なくとも私は、知りませんでした。
当時、退職まであと数年という頃、退職後はこれまでの経験を活かして中小企業の支援をする仕事ができないかと考えていました。製造業で40年あまり会社員をし、その中で携わってきた経験や新たに学んだコーチングも活かして、経営者の伴走支援のような仕事ができればと思っていました。
そんな時、ある知人に仕事の探し方を相談したところ「環境カウンセラーになったらどうか」と勧められて初めてそんな制度があることを知りました。その人自身が環境カウンセラー会の理事をしていて、「人脈もできるし、いろいろ紹介できる」とのことでした。
つまり、私の場合、環境問題への強い使命感から環境カウンセラーになったわけではなく、「今までの経験が活かせる部分もあるし、何より中小企業支援の仕事につながりそう」というとんでもなく打算的な動機でした。
環境カウンセラーは、環境省が認定・登録する制度です。環境に関する知識や経験を持つ人を登録し、企業や自治体、市民などの相談に応じる、いわば環境分野の人材バンクです。
カウンセラー会に参加してみると、環境問題について長年真剣に取り組んでいる方が多く、自分のような人間が入ってよいのか、少し場違いな感じもありました。
そんな中で、ある時実際に環境カウンセラーとして仕事をする機会を得ました。
地方の製造業からの相談で、機密文書を焼却処理しているが、その費用が増えているので再資源化できないか、というものでした。 現地で話を聞くと、単に紙の処理方法だけの問題ではありません。 顧客との間で紙の図面をやり取りしているなど、そもそも紙を発生させない仕組みを考える余地もありました。 そこで、再資源化の方法だけでなく、電子化やDXによるペーパーレス化についても提案を行いました。 環境対策というと何か特別なことをするイメージがありますが、この会社の場合、仕事のやり方を変えて紙を減らすことが環境への取り組みになり、同時に業務効率化にもつながる可能性がありました。 なお、この支援には県と町の担当者も同席していました。
そこで感じたのが、環境カウンセラーは企業だけを相手にする仕事ではなく、自治体との関係もかなり重要なのではないか、ということです。
自治体には、企業を支援したいと思っていても、行政という立場では言いにくいことがあって、例えば制度や補助金の説明はできても「その仕事のやり方そのものを変えたほうがいいのでは」といったところまで踏み込むのは、なかなか難しい。そこに第三者である環境カウンセラーが入れ
ば、専門家として企業と一緒に考え、行政とは少し違った立場から提案することができます。 自治体の担当者にとっても、専門家を推薦する際の一つの根拠になるのではないかと感じました。
それが、環境カウンセラーという肩書には思っていた以上に意味があるかも、と感じた経験でした。
一方で、この制度は現在、大きな曲がり角にあるようです。
制度創設から30年が経ち、登録者数は減少傾向にあります。高齢化も進み、登録はしていても実際には活動していない人がいることも課題になっています。環境省からは、現状のままでは制度の存続が数年以内に難しくなる可能性があるとの見解が示され、今後のあり方を見直す方向性が示されています。
環境カウンセラー会としても、この問題には危機感があります。 環境省が制度をつくり全国から環境カウンセラーを登録するところまではできている。でも、その先、この人たちに実際にどう活動してもらうのか、企業や自治体とどうつなげていくのか。そこは地域の環境カウンセラー会に任されているところが大きいように、私には見えます。 各地域のカウンセラー会は、十分な予算や人員があるわけではありません。その中で、それぞれに活動しています。実際に参加してみると、環境問題に真剣に向き合い、何とか社会の役に立とうとしている人が少なくありません。 それでも、個々のカウンセラー会の努力だけで、全国に登録されている専門人材を企業や自治体につなぎ、制度全体を活性化させるには限界があります。
今回の環境省による見直しは、カウンセラー会にとって危機である一方、これまでの制度のあり方を考え直す機会でもあるのではないかと思っています。
その中で私が期待しているのは、環境カウンセラーを本当の意味で人材バンクとして機能させることです。 例えば企業や自治体が、「廃棄物について相談したい」「環境とDXについて専門家の意見を聞きたい」「生物多様性について相談したい」と考えたとき、環境省に登録されている人の中から、必要な経験や知識を持つ人を探せる。そして、その人が仕事として支援する。 こうした仕組みが機能すれば、登録する側にも明確なメリットが生まれます。
私自身、登録したばかりなので、当初勧められたように「カウンセラーの人脈から仕事を紹介してもらう」ことが本当にできるのかは、まだ分かりません。 ただ環境カウンセラー個人の人脈に頼るだけではなく、環境省に登録されている人材を企業や自治体が必要なときに探して仕事を頼めるような仕組みがあればいいのではないか、とは感じています。 そうなれば、環境に関係する仕事で自分の経験や知識を活かしたい人にとって、環境カウンセラーになる意味も変わってくるのではないでしょうか。 退職後の人だけではなく、現役で仕事をしながら環境分野でも経験を活かしたい人にとっても、登録する価値が出てくる。結果として、高齢化や「登録しているだけ」という問題の解決にもつながるかもしれません。
会で実際に話してみると、環境問題に対して熱心に取り組まれている方も多くいます。ただ、その取り組みはどちらかといえばボランティア活動に近い感覚で、この資格が直接的な報酬やビジネスの機会へと結びつくことを思い描いている人はそれほど多くなさそうです。 しかし、これまでの経験を退職後も社会の役に立てたい。現役の仕事とは別に、環境分野でも自
分の専門性を活かしてみたい。そんな人にとって環境カウンセラーが一つの選択肢になれば、今の制度が抱える問題の解決にもつながっていくのではないかと感じています。
私自身、登録して約2年、理事になってまだ半年ですので、環境カウンセラーの世界について、まだ知らないこともたくさんあります。最初は「中小企業支援の仕事につながるかもしれない」という、少し打算的な動機で登録しましたが、実際に活動してみると環境という切り口から企業や自治体をつなぐ側面も少し見えてきました。 せっかく全国の専門人材を登録している制度なのですから、登録しているだけで終わらず、必要としている企業や自治体とつながり実際の仕事につながる仕組みにできれば、もっと面白い制度になるのではないかと思っています。
というわけで、私としては、企業支援の仕事がもう少し増えてくれることを素直に期待しているところです。

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