Members Column メンバーズコラム
小樽に戻って早3年、剣道と相続
土屋 武大 (松ヶ枝堂薬局/小樽つちや行政書士事務所/剣道錬士七段・元経済産業省) Vol.813
0.はじめに
これまでKNSのメンバーズコラムには、2018年11月にベトナムから「二度目の海外赴任はベトナムで」、2021年12月にインドから「三度目の海外赴任はインドで」、そして2024年10月に小樽から「約30年ぶりに故郷・小樽に戻ってきて」と題して寄稿させていただきました。
前回は、2023年7月末に約21年間勤めた経済産業省を退官し、約30年ぶりに小樽に戻り、家業の松ヶ枝堂薬局に参画したことや、小樽つちや行政書士事務所を開設したことなどを御紹介しました。
それから約2年が経ち、小樽に戻って早くも3年となりました。今回は、この3年間で中心的な仕事となった相続業務と、7歳から続けている剣道について書かせていただきます。
1.小樽に戻って早3年
現在、家業である松ヶ枝堂薬局の二階に、小樽つちや行政書士事務所を構えています。一階が薬局、二階が行政書士事務所という少し変わった形で、薬剤師として薬局の仕事に関わりながら、行政書士としての業務にも取り組んでいます。
行政書士事務所を開設したのは2024年1月です。行政書士は、相続、遺言、在留資格、許認可、法人関係など、取り扱う業務の範囲が大変広いため、開設当初はどの分野を中心に取り組んでいくのか、明確に決まっていたわけではありませんでした。
また、長く国家公務員として勤務した経験があるとはいえ、行政書士としては全くの新人です。資格を取得して看板を掲げれば、すぐに仕事が来るというものでもありません。
ホームページを作成したり、知人に事務所を開設したことを伝えたり、御相談いただいた案件に一つずつ対応したりしながら、少しずつ仕事を増やしてきました。その中で、現在、最も多く取り扱っているのが相続に関する業務です。
2.相続業務と毎日のコラム
相続人を確定するための戸籍収集、法定相続情報一覧図の作成、金融機関での相続手続、遺産分割協議書の作成など、相続が発生した後に必要となる手続をお手伝いしています。
相続というと、多額の財産をめぐって家族が争う場面を想像される方も多いと思います。しかし、実際には、財産の金額がそれほど大きくなくても、手続が簡単とは限りません。亡くなった方名義の不動産が何十年もそのままになっていたり、相続人が遠方や海外に住んでいたり、戸籍を集めた結果、家族が把握していなかった相続人が判明したりする場合もあります。また、相続手続の途中や手続後に、借金や保証債務が判明することもあります。
つまり、財産の金額が少ないことと、相続手続が簡単であることは別問題です。
こうした業務に取り組む中で感じるのは、相続は一件として同じものがないということです。財産の内容だけではなく、家族関係、相続人が住んでいる場所、不動産の名義、借金の有無などによって、必要となる対応が異なります。
2025年7月22日からは、事務所のホームページで相続に関するコラムを毎日掲載しています。
当初は、毎日書いていれば、いずれテーマがなくなるのではないかと思っていました。実際、何を書くか悩んだり、以前の内容と似ているのではないかと感じたりする日もあります。
それでも、実際の相談で質問されたことや、業務を進める中で気づいたことを一つずつ取り上げていくと、書くべきことは次々に出てきます。こうして書き続けてきた相続コラムは、今回の原稿を書いている時点で400回を超えました。
インターネット上には相続に関する情報が数多くあります。他方、御相談いただく方からは、「いろいろ調べたのですが、自分の場合に何をすればよいのか分かりません」というお話をよく伺います。
専門的な用語をそのまま並べるのではなく、その方の状況に置き換え、まず何を確認し、次に何をすればよいのかを分かりやすく説明することが重要だと、毎日のコラムを通じて改めて感じています。
3.剣道がつないだベトナムと小樽
行政書士業務と並んで、小樽に戻ってからも力を入れているのが、7歳から続けている剣道です。
これまでのKNSコラムでも、インドネシア、ベトナム、インドでの剣道について書かせていただきました。特にベトナム赴任中は、現地のベトナム人剣士や日本人剣士と一緒に、仕事以外の時間の多くを剣道に費やしていました。
そのベトナムで築いたつながりから、大変うれしい出来事がありました。
2025年3月に小樽に来てくれたベトナム人剣士は、私がベトナムに赴任していた当時は、まだ剣道を始めていませんでした。そのため、以前から面識があったわけでも、一緒に稽古をしたことがあったわけでもありません。
私がベトナムを離任した後に剣道を始め、現地のベトナム人剣士を通じて紹介していただきました。ちょうど仕事で北海道に出張する予定があり、「小樽で一緒に稽古をしたい」と、出張にもかかわらず防具一式を持って小樽まで来てくれました。剣道の防具は相当な荷物になります。それを仕事の出張に持参し、さらに小樽まで足を運んでくれたことを、本当にうれしく思いました。
そして、小樽で初めてお会いし、一緒に稽古をしました。
私がベトナムに赴任していた時には、まだ剣道を始めていなかった方と、数年後、小樽の剣道場で初めて会い、竹刀を交えることになるとは全く想像していませんでした。
直接の知り合いではなくても、一人のベトナム人剣士が間に入ることで、新しい縁がベトナムから小樽までつながりました。言葉や国籍が違っても、防具を着けて一緒に稽古すれば、自然と相手との距離が近くなるところが、剣道の大きな魅力だと思います。
小樽では、自分自身の稽古だけではなく、小樽剣道連盟の運営、大会の審判、若い剣士への指導などにも関わっています。2026年には、「第1回運河の街おたる剣道大会」の開催にも携わりました。
剣道を自分のためだけに続けるのではなく、これまで国内外の先生や剣士から教えていただいたことや、剣道を通じて築いたつながりを、次の世代につないでいくことも、これからの自分の役割ではないかと考えています。
4.人とのつながりとこれから
行政書士と剣道は、一見すると全く関係のないものに見えるかもしれません。しかし、どちらも自分一人では完結しないという点では共通しています。
行政書士業務では、弁護士、司法書士、税理士、金融機関、自治体など、多くの方と連携する必要があります。剣道でも、日々の稽古、大会の開催、若い世代への指導、海外の剣士との交流は、一人だけではできません。
KNSの活動も、業種、地域、組織などの枠を越えて人と人が出会い、そこから新しい取組が生まれていくことが大きな特徴だと思います。
先述したベトナム人剣士との出会いも、私とその方との直接的な関係から生まれたものではありません。間に入ってくれた方がいたからこそ、小樽で一緒に稽古をすることができました。
人とのつながりは、もともと知っている者同士だけで終わるものではなく、そこから次の人へと広がっていくものだと改めて感じました。
小樽に戻ってからの3年間は、当初から明確な道筋が見えていたわけではありません。ただ、振り返ってみると、小樽に単に「戻ってきた」というだけではなく、行政書士業務や剣道を通じて、自分なりの仕事や役割を少しずつつくってきた3年間だったように思います。
今後、行政書士としてどのような業務が増えていくのか、また、剣道を通じてどのような出会いがあるのか、私自身にもまだ分かりません。
まずは、目の前の一件一件の業務にしっかりと取り組むとともに、毎日の相続コラムと剣道の稽古も引き続き頑張っていきたいと思います。
(以上)
