Members Column メンバーズコラム

シニアの働く場をつくる

濱名研 (株式会社新事業開発研究所)  Vol.298

濱名研

今回は、今している仕事の話をします。
2013年から、私は豊中市の庄内でシニアワークセンターとよなか事業というものに関わっています(自分たちで名乗っている通称です)。
市の委託を受け、シニアの皆さんに就労の機会・場を提供する仕事です。
今の60代以上の方は昔より元気なのに、就ける仕事は限られています。
もちろん、シルバー人材センターやボランティアといった場もありますが、そこに収まらない働く場を提供しています。

具体的には、農業、タブレット講師、集合型の内職、塾講師などです。
やりがいがある仕事に携わり、手と頭を動かし、感謝されることで、要介護状態にならず、健康に生活していけること、収入の足しになって、できれば地域の課題解決に役立つことを意図しています。

集合型の内職を例に取り上げます。
これは2014年の7月から始めました。

集合型内職は、豊中市内の庄内と蛍池の2拠点(内職ひろば庄内、内職ひろば蛍池)で、40人以上の方が内職に来られています。庄内はビルの一室、蛍池は2階建て長屋です。現在の作業は、手袋の検品や、建材への両面テープ貼りなど。作業場の開いている時間なら、週に何時間、何日来てもOKとしています。

シニアの方は忙しいもので、病院に通ったり、お孫さんの世話をしたり、ボランティアや習い事をしたり、友達と旅行に行ったりされています。その隙間に内職に来ていただいています。一方、一人暮らしで、家に一人でTVを見ているよりはと毎日来られる方もおられます。

来られている方は、パートの仕事が少ない70代の女性が主力です。
本当は男性にも来てほしいのですが、今の仕事は女性向きのようです。
看板としてはシニア向けの仕事を掲げているにも関わらず、やってみて意外だったのが、様々な理由でこういう場を求めている人が多いことです。仕事になじめなかった、あるいは仕事に就いたことのない若い人、怪我や病気をしてリハビリ中の方、妊婦さんなどなど、多様な年代、多様な事情の方が来られて、他にない居場所となっています。それでも、困難を抱えた方の場のような打ち出し方はせず、「集まって楽しく内職をする会」という至ってフラットな場としているのは良いなと思っています。誰でも気兼ねなく参加できますので。

それだけ不確定要素が多く、能力による排除もしない一方で、取引先企業さんには、一定以上の品質と納期を保証することが必須なので、現場スタッフは大変です。段取りや指導、チェック、手直し、手の足りない分の穴埋めをしつつ、楽しく過ごせる場を維持しないといけません。人によっては特別な配慮が必要です。

タフな仕事ながら、やりがいはあると思います。作業場は冗談の飛び交う和やかな雰囲気ですし、会員さんが楽しみに通ってこられること、「役に立っている」と感じられること、能力が上がってたくさんの作業をこなせるようになることが、スタッフの達成感にもなっているようです。

残念ながら今はお休みされていますが、ある女性の「私ね、毎日、主人に「仕事に行ってきます」って言って出てくるの。買い物や用事に出かけることはできるけど、仕事に出かけるのは全く違うの」という言葉は印象的でした。

私自身は現場のスタッフではなく、現場スタッフのサポートや、事業の事務処理、会員の募集、取引先や連携先との交渉をする役割です。
いつも作業場にいるわけではありませんが、事務所が庄内にあり、庄内の作業場には近くの人が通っているので、商店街を歩いていたり、電車に乗ろうとすると知っている会員さんに会ったりします。今まで説明会に参加するなど、接触のあった方は200人以上で、随分シニアの知り合いが増えました。どこで見られているか分かりません。

一例として内職を取り上げましたが、農業は自然の中で身体を動かし、成長を見届ける充実感があり、タブレット講師には同年代に機器の使い方を教え、感謝されながら上達する喜びがあり、塾講師には子どもの力を伸ばすやりがいがあります。参加されている皆さん、一様にいきいきされています。

70人以上の方が参加しているとはいえ、潜在的な対象者からするとまだ一部。
まだまだ出会えていない人、条件が合わずに参加していただけなかった方がおられます。特に場所の制約は大きく、身近な拠点を増やして行けたらと考えています。
また事業を安定させること、参加者にもっと収入になるようにすることが必要です。できればもっと違ったタイプの仕事も。

これが唯一の解とは思いませんが、こういう場が他市にも広がっていくと良いなと思っています。

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