Members Column メンバーズコラム

伝えたいのは、情報ですか? 情熱ですか?

エサキヨシノリ (情熱の学校)  Vol.60

エサキヨシノリ

「クリエイターやマーケッターならまだしも、広告代理店営業マンが独立して、
成功した話なんて聞いた事ないわ。悪い事、言わへんから、やめとけ。」
当時の上司や同僚に、そう言われながら、それでも僕は、その場所に留まる事ができませんでした。

憧れて飛び込んだ広告(販促、PRなども含めた企業コミュニケーション活動を
広義の解釈としての【広告】という表現で以後、お話し致します)の世界。
自己実現のため「上」を目指し続けた当時の僕。
しかし僕が目指した世界にあったのは、クライアントの意向と社内政治、
競合広告代理店との競争の間で心身がボロボロになっていく上司や仲間の姿、
そして消費者を半ば無視した机上だけで創られる広告のあれこれ、であり、
それは仕事の規模が大きくなればなるほど顕著に現れました。

もちろん、今でも広告の世界から教えてもらった多くに感謝していますし、
ダークで面倒くさい事ばかりが、「その世界」であるとは言いません。
だけど、当時の(今より子どもだった)僕には、耐えきれなかったのです。
その一方で、広告を通じて企業が消費者や得意先企業に「伝えるべき事」は、
もっと違う部分にあるはず、と思い始めていました。
そして04年12月、僕は、「企業が広告を通じて本来、伝えるべき事」の答えを見つけ、
その答えの大切さと伝え方を、今度は中小・零細企業の皆さんに説いて行く仕事を
僕の一生の仕事とするため、独立しました。

独立後、「その答え」は意外と早く見つかりました。それは「情熱!」です。
企業は、「その会社の、社長の、社員の『情熱』を、広告を通じて伝えるべきである」という事です。
しかし独立当時からこれまで、中小・零細企業さんの広告展開を見てみると、
やはり大企業と同じく、いや、もしかしたら、それ以上に、彼らは未熟で、画一的な表現手法を用い、
自社・自社商品の機能的価値(例えば、早い、安い、お得、○○%アップなど)を、
「情報」として伝えようとしていました。
その結果、彼らの「本来の価値」が表現されず、
消費者や得意先企業から「指名されるブランド企業」になるどころか、
「その他大勢の中の一社」から脱する事ができないでいたのです。
(実は、それは、しょうがない事でもあります。なぜなら、彼ら中小・零細企業さんには、
広告の考え方や戦略、戦術などを正しく学ぶ機会がほとんど与えられないからです。)
故に、大切な事は、誰もが言える「情報」を伝える努力ではなく、
その会社だけしか伝えられない自社だけの「情熱」を伝える努力なのです。

例えば、
その会社の「創業動機」
その商品の「開発に懸けた想い」
お客さまに「喜んで頂きたいという願い」
これだけは「譲れないというこだわり」
など。

その会社を語る時、思わず体の真ん中から「熱いもの」が込み上げてくる、
その感覚。その商品がお客さまの手に届き、それを使いながら微笑む姿をイメージした時、
思わずあふれる、その感覚。それを、その会社だけの、商品だけの「情熱」として、
誰に伝え届けたいのか?そして、どんな風に喜んで欲しいのか?を「言葉」にする努力が大切なのです。
そして得られた「言葉」こそ、その「会社だけの本来の価値」なのです。

そして、次なる答え(その言葉は、どこにある?という問いに対する答え)は、
会社や商品の「外」にあるのではなく、その会社や商品の「中」にあります。
だから(実は)、広告の考え方や、戦略・戦術を外から取入れる前に、
会社や商品の中にある「情熱」をヘタな表現でもいいから「言葉」にする事を先決として頂ければ幸いです。
そうすれば、後の表現方法・手法は、御社独自のものとして、自ずと、幾らでも見えてきます。

最後に、僕は、これからも、「俺の、私の情熱を伝えたい!」という人々や
会社のお力になるために、変わらず働いて参ります。 

伝えるのは、情報ではなく、あなたの「情熱」です。

僭越ながら、勝手ながら、僕が、ずっと想っている事を書かせて頂きました。
このような機会を下さったKNSの皆さんに感謝いたします。最後まで読んで頂いて、
ありがとうございました。

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