Members Column メンバーズコラム
「音を纏う生活の提案」、骨伝導の新たな挑戦
葛西純 (株式会社フォルテ) Vol.319
有限会社forteとしてスタートした弊社は、平成28年2月より、株式会社化を図り、IPOを意識したよりドラスティックなイノベーションを目指し始めた。
2010年、有限会社フォルテとして自転車移動中の情報取得を支援するサービス「ナビチャリ」をリリースした当初は、移動中に音を聞かせることに対して否定的意見のほうが強い状況であった。
道路交通法の解釈はどうなるのか、移動中の利用者を危険に晒すことにならないか、専用端末ではなく、スマートフォンでいいのではないか・・・。楽しさや可能性を見つめるよりも先に、「否定できる分かりやすい要素」が前面に出てしまい、結果、サービス拡大に時間がかかった経験が記憶に新しい。
2016年5月、Yahoo!ニュースのITカテゴリのトップに「ナビチャリ」が紹介されたことで、この7月までの約2ヶ月間で10件以上の導入相談が寄せられた。相談の多くは、紙やアプリケーションとしてコンテンツ化した観光ガイド情報を「もっと伝えていきたい」というニーズが内在されていた。お話を伺う中で、地域で保有する既存コンテンツに対して、管理者がサービス拡大の上で限界を感じているのではないだろうか、と疑念が浮かんだため、以下に少しだけ個人的主観を紹介する。
紙媒体やアプリケーションが「あまり使われない」原因はどこにあるだろうか?
一つのコンテンツを生み出す際に、「コンテンツ化する情報」と「情報を提供するユーザー」の関係を整理する必要があると考えている。例えば以下の3つのような観点である。
◯近さ(ユーザーがコンテンツを一緒に楽しめる人、場所と繋がれる距離)
・楽しめる仲間との接点をつくり出せるか?
・仲間同士で誘い合って出向くようなコンテンツになっているか?
◯深さ(ユーザーに提供する情報のマニアックさ)
・初心者から上級者までが段階的に楽しめるような構造になっているか?
・初心者と上級者が混同したグループの中でも楽しめるか?
◯遠さ(ユーザーとコンテンツがある地域までの物理的距離)
・ユーザーのモチベーションはわざわざご当地に足を運ばせる段階まで育っているか
・楽しみ続けるために、距離を縮めるようなサービスは備えているか
SNSの普及に伴い、インターネットとアプリケーションの連携はさらに身近なものとなっている。「観光による地域活性化」というジャンルでは、地域ごとの観光情報を一つの街単位で購入できるアプリや、地域の位置情報の差異を活用したゲーム等に新たな動きが見られる。
今までの動きと大きく違う点として、上記したアプリが自治体単位での独立したパッケージでリリースされるのではなく、全国・全世界統一のプラットフォームを目指して、ドラスティックに展開されている要素が目新しい。「近さ・深さ・遠さ」をユーザーの立場に併せて自由にカスタマイズできるようなプラットフォームが生み出されるのも近い未来の出来事だと推測される。
ここで、一つの課題として浮上してくるのが、アプリケーションに登録された情報をより簡易に理解できる仕組みである。現在は画像やテキストを画面に表示する従来型の仕組みが主流である。株式会社フォルテがチャレンジできるイノベーションのきっかけがあるとすれば、骨伝導スピーカーを介した「音声による情報理解」をより便利に、ファッション性を持って提供していくことではないかと考えている。
様々な「モノ」と「情報」をワンストップで接続できることがウリであったスマートフォンアプリの普及と比例して、「ナビチャリ」や「骨伝導スピーカー」への期待値が高まりを見せている。この背景には、個別アプリの提供ではユーザーに嫌われやすい、ダウンロードや情報検索等の「煩雑な操作」を簡略化し、その場所に行けば耳で聴くことができるという利便性に強みがあると捉えている。
LINEやWeChatなどで見られるように、他社サービスの課金決済を代行するようなソリューションや、AIレベルの音声認識技術が高まりを見せている今、有料コンテンツや最寄りの情報までも音声で推薦・紹介してくれた上で、「購入する」、「現地に行く」といったユーザーの意思決定を音声通信のみで実現できるかもしれない。
スマートフォンアプリを意識せずに活用していけるような、「未来の世界」が近づいてきている。
◆株式会社フォルテ:http://www.forte-inc.jp/
◆骨伝導スピーカー『VOCE-rable』:
PV:https://www.youtube.com/watch?v=o7ZMB78Rxhc
https://www.youtube.com/watch?v=sajDuR3_-Gc
STORE:http://store.shopping.yahoo.co.jp/voce/voce-rable.html