Members Column メンバーズコラム

クリエイターが惚れ込んだ観光資源を生かす企画-実現-今後

山下大輝 (株式会社マジカル)  Vol.290

山下大輝

2014年4月9日、起業して9日目。

気がつけば目の前に徳島県庁が。
今まさに乗り込もうとしている自分。

全て人と人とのつながりがあってこそだと実感します。

株式会社マジカルは、2014年4月1日に起業したばかりのデザイン事務所です。起業前からあれもしたい、これもしたいとやりたい事だらけでスタートしました。その中のひとつに「徳島県の阿波踊りを世界に広めたい」との想いで阿波踊りを世界に広める為、着々と企画書を作成していました。

徳島県の阿波踊りは「連」というチームで構成されており、その数は大小合わせると徳島県内でも1000を超えるほどの数があり、その中でも技術力や迫力、そして表現力豊かな有名連というものが33連存在します。33連の中でもまた阿波踊り振興協会が16連、徳島県阿波おどり協会が17連とそれぞれ所属している協会が分かれており、とにかく歴史的にも深く8月お盆の時期に開催される本番の踊りでは町中の道路を演舞場にしてしまい、町全体が熱気に包まれます。日本全国でもこれほどまでに地域全体を巻き込むほどのお祭りは無いと思います。最近では大阪や東京など徳島県外にも阿波おどりが広まり、その中でも東京の高円寺の阿波おどりは有名で、本場徳島の来場者を凌ぐほどの盛り上がりようです。日本以外にフランスや台湾など海外でも阿波おどりを披露し、かなりの成功を収めています。最近のフランスでの演舞は特に盛り上がりを見せニュースなどでも取り上げられていました。しかし、それほどまでに魅力的で人の心を打つ阿波おどりでも、大阪ではまだ名前を聞いた事はあるが盆踊りと何が違うのかわからない人が大半といった人が多く、それを僕たちマジカルがどうにか世界に広めようと勝手にプロモーションを企画しました。

企画したのはいいが、誰にこの企画を、想いを持っていけばいいか…。

その当時は全くそのことを考えておらず30秒ほど悩み抜いたあげく「県庁へ飛び込もう!そうしよう!」と社内満場一致で勢いづきました。その時考えていたのは「阿波おどりプロモーションやらせて!」と書いた旗を作って拡声器で県庁前で直談判。今考えても最高にインパクトのある飛び込みスタイルだと思います。この熱い気持ちを伝える為ならちょっとくらい警察のお世話になってもいいかなというくらいの気持ちでした。そんな時に相談に乗ってくれたのがメビック扇町でした。事情を説明し徳島県庁に勤めておられる方をご紹介頂き県庁内部へ無事潜入。もしあの時メビック扇町へ相談出来なければ、つながりがなければ、違う形で皆さんに僕たちのこの想いをお伝えしていたかもしれません。無事に徳島県庁へ潜入出来た僕たちは早速企画内容をプレゼンしました。
企画内容は最高でしたが、やはり歴史の深い文化。色々な壁が待ち受けていました。まずは県庁の方々に気持ちと企画を説明し、次に各連をまとめる連長という33人の長の方々の了承も得なければなりません。大阪から来たばかりで徳島になんの縁もない僕たちでは連長の皆さんに会う事も難しい状況で、阿波踊りに心の底から情熱を注ぐ方々へそれを使って利益を上げると言った内容を説明する責任は重く、途中本当に実現できるのかといった気持ちにもなりました。しかし少しずつ地道にやっていくしか無く、一生懸命周りの方々へ説明し、協力していただける方々も少しづつ増えていきました。色々な人を巻き込み、関わる人に助けられながらゆっくりとその企画は形になっていきました。いざ16人の連長と17人の連長を前にプレゼンする時は本当に緊張して、今考えてもトイレに行きたくなります。菅原文太級のオーラを放つ33人の連長を前にプレゼンし、終わってみれば皆さんに快く了承して頂きようやくスタートラインに立つ事が出来たのです。その時にご協力頂いた方々には感謝の気持ちと運命的なものを感じます。その後は商品化に向けて業者さんへの売り込み営業や企画内容を周知するための無数の販促物製作や告知、初めての契約書関係の作成など、やることは膨大にあり社内一丸となって走り回りました。そのかいあって2015年8月阿波おどり本番には多数の商品もお土産屋さん、観光名所などに並ぶことができました。丸々一年かかりましたが、なんとか本番に間に合ったのは弊社スタッフが本当に頑張ってくれたおかげです。

まさかの海洋堂とのコラボ実現 !?

阿波おどりもひと段落する頃、徳島新聞社から声がかかりました。「今度、徳島県立近代美術館で海洋堂とフィギュア展をやるからそれを使えないか」といったものでした。僕たちからしてみれば願ってもないチャンスで、特に企画構想の段階から海洋堂とコラボレーション出来ればいいなーと思っていたのでやらない理由はありませんでした。しかしそれを軸にフィギュアを作って展示以外は何も決まっておらず、コスト面での壁にぶちあたりました。こちらの用意した企画は全部で99体、33連あるのです。それを全てフィギュア化するととんでもないコストがかかるのでどうにかそれをカバーできる企画をすぐさま考えなければなりませんでした。大阪に帰りすぐに社内でアイディア出し。あーでもないこーでもないと企画を練り上げ出来たのが「フィギュア着彩ワークショップ」。徳島の観光資源である阿波おどりの連の数や歴史をフィギュアを通して知ってもらい、海洋堂の造形師の技術や着彩表現力などを身をもって体験してもらおうといった内容で、一般の方々が50体、有名連が33体、徳島にゆかりのある著名人が約20体、著名人の中には徳島県知事にも参加して頂き、当日のオープニングセレモニーで知事と宮脇社長(センム)が二人で着彩する時間を設けるなど大変ご好評いただきました。合計約100体のフィギュアが徳島県立近代美術館に並びました。駄目元でセンムにワークショップの講師を直々に依頼すると快く引き受けてくださり、当日はなんと海洋堂のスタッフも何名か応援に駆けつけてくださりました。驚いたのはフットワークの軽さと探究心、そして誰に対しても謙虚に真摯に対応するその姿勢。会場に入るやいなや道具の確認だけではなく実際に塗ってみて足りない道具などは周りにあるもので代用するなどこちらの至らない点をフォローして頂き、ほとんど休憩なしでワークショップにご協力頂きました。初めてのワークショップでしたが海洋堂を始め、美術館の皆様や徳島新聞社の方々、関係者のご協力が無ければ中身の無いものになっていたかもしれません。ワークショップもすぐさま定員に達するなど好評のうちに終わりました。

徳島県内だけじゃない!天神天満阿波おどり!

関西にも阿波おどり協会があります。この一年の間、徳島での活動の中で県庁の方から関西阿波おどり協会もご紹介頂きロゴや告知ツール、イベントのポスター制作などに携わらせて頂きました。関西の阿波おどりも徳島に負けず劣らずの迫力で、踊り子さんたちの気持ちが伝わってくるのを感じました。6月には北浜リンクスというギャラリーで徳島応援プロジェクト支援事業として阿波おどり×墨象(前衛書道)の企画展も行い、当日はわざわざ徳島県から見に来られるお客様などで大盛況でした。

この約2年間の間、徳島県阿波おどり企画をはじめ、通常業務でも本当に良いご縁などを頂き周りの人たちに助けられてきました。結局のところ人と人とのつながりが大事だと思い知らされた1年でした。同時にそのつながりを呼ぶのはこれをやりたい!これだけは成功させたい!人の役にたちたい!など発信者側の気持ちの強さが比例して周りを巻き込み大きな流れになっていくのだと実感しました。起業したての不安な時期に頑張り抜いてくれた会社の仲間にも感謝します。
この企画はこれで終わりではありません。ここからもっと大きな流れを作ります。アニメ化や書籍化、映画化や海外まで、まだまだやりたい事はたくさんあります。
来年のお盆の時期はぜひ徳島へ。阿波おどりは活字だけでは表現出来ない迫力と魅力があります。

で、肝心の企画内容は何かと。
今回のコラムでは企画を通してどのような道筋を辿ってきたかを軸に書きましたが、12月26日の第51回定例会でプレゼンターとして詳しく説明しようと思っております。クリエーターが惚れ込んだ観光資源を生かす企画の内容に興味がありましたらそちらにもぜひ起こし下さい。

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