Members Column メンバーズコラム

日本のグローバル競争力は、目に見えないものにある。

金桂紅 (コンサルティングファーム)  Vol.126

金桂紅

2005年の年初、海外営業の仕事では、まだ新米の私は、前職でマネージャ
ーに昇進しました。若さとやる気いっぱいの私は、すぐ社内で『売るぞう?』
と宣言し、元の受身的営業から、攻めの営業を展開しました。海外の代理店
の社長を日本に招待し、製品知識の特訓と、私の4ヶ国の語学力を生かして、
コミュニケーションを強化し、相手のやる気を引き出しました。そうすると、
3年後売り上げが2倍になりました。

しかし、3年後、同時に本格的なグローバル化の問題に直面しました。海外
で、値段が安く、品質が良く、デザインが良く、エンドユーザが求める新機
能搭載の競合製品が、次々と市場に出て来、自社の一部の製品の売上は急速
に下がりました。この時、グローバル化は、チャンスであり、危機でもある
ことを、身を持って痛感しました。

その時から私は、日本製品、日本企業の生き残り策は何かと一生懸命に模索
し始めました。JETROをはじめ、多くの海外専門の方と議論しました。本
日は、コラムの文字数制限の為、その中で分かった一部をご紹介します。

日本の製品・企業が、グローバル化の中で、一番問題になるのが、値段が圧
倒的に高いことです。物によりますが、中国製の5倍、韓国製の2倍です。
反面、一番の強みは、商品の機能、品質の高さです。機能、品質は、海外で
はオーバースペックになるものも少なくありません。このギャップを埋める
ことが出来るか?もし出来るとすると、日本企業のどのような努力で出来る
か?これが、日本のグローバル戦略の焦点になります。

日本は世界一物価が高いと言っても過言ではありません。原材料、人件費、
賃料等、中国をはじめとする新興国の5-10倍はあります。このような大き
なギャップは、日本で自社努力では到底埋められません。一部の体力がある
企業は、新興国に進出し、現地で原材料とスタッフを調達し、究極的なコス
トダウンを図っています。それでも、地元メーカに比べると、少なくとも2-5
割は高いし、さらに海外に出られない企業はどうすれば良いかの問題もあり
ます。

ここで、私は日本の究極の強みに気づきました。日本人の信頼性と思いやり
です。まず、日本人の信頼性は、外国の人にとっては想像出来ない位高いで
す。現場の末端の普通の作業者であっても、とても真面目に仕事を行います。
誰かに見られなくても、自分なりに最高に工夫しながら、信頼出来、且つ安
定した品質の物を作ります。また、細かいことでも、根気よく、コツコツ、
一生懸命に作業し、パーフェクトな物を作ります。その為、日本製はなかな
か壊れなく、且つ使い勝手が悪い所もありません。つまり、高度の信頼性の
元で生まれるパーフェクトな物、品質を、目に見えないけど、絶対的な信頼
性が求められる場面で、高価格で提供するのが、日本のグローバル化の究極
の競争力になると思います。

次に、日本人の思いやりです。特にサービス業において、言われなくても、
心からお客さんの為になることを考え、きちんと行動出来ることです。結果
的に、お客さんは、安心し、満足し、感動し、高付加価値性を感じ、高額で
サービスを受けることを望みます。

これらの日本人の高度の信頼性、高品質、思いやり、高付加価値を生かし、
海外とのコストキャップを埋められるのは、下記のケースです。目に見えな
いもの、ユーザが自分で品質を測れないもの、究極の信頼性が求められるも
の(致命的な物)。例えば、医療、食品、化学等。特に医療は、高度の信頼
性、高品質、思いやり、高付加価値サービスと極めて一致します。

グローバル化対応において、考えるべき要素は他にもあります。しかし、目
に見えないもの、測れないものを商品にすれば、グローバル化はきっとチャ
ンスなると思います。日本人の信頼性と思いやりで、グローバル化の波に乗
りましょう。

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