Members Column メンバーズコラム

未来へつなぐボランティア活動

吉田真二 (岩手県 農業研究センター 畜産研究所)  Vol.626

吉田真二

コロナでだいぶご無沙汰しております。岩手県の吉田真二です。
大リーグの大谷選手をはじめさまざまな競技で世界を舞台に岩手県出身選手が活躍するスポーツ界という頼もしい時代に2年間所属したスポーツ振興課から、4月に岩手県農業研究センター畜産研究所に異動になりました。
「岩手県は農業県」と思い、採用から10年以上異動希望を出していた分野ですが、35年目にしてようやくです(苦笑)。畜産研究所は放牧地や採草地を含めると、おおよそ大阪市北区と中央区を合わせた敷地内に肉牛350頭、乳牛60頭、豚100頭、鶏1,600羽を飼い、サシの入った黒毛和牛や岩手の強みである赤身の短角牛の品種改良をし、防疫衛生管理や獣医師の元での予防治療、畜産経営など、高校の生物、化学でやったことを思い出しながら学びの多い毎日です。

これまで生活保護・高齢者福祉、国際交流、東京・NY駐在、地熱発電・再生可能エネルギー、国際観光、政策調査、大型児童館、路線バス補助、県組織再編、大阪、企業誘致・物産販売、被災者支援、若者文化・NPO支援、宮古地域振興、スポーツ、畜産研究と様々な分野を経験させてもらったことは行政ならではと思っています。民間であれば2、3年で転職して新しい顧客とその業界の課題に向き合うようなところもあるのではと思います。

並行して、これまで多くのボランティア活動、NPO活動に関わってきました。きっかけは2つ。
1つ目は、異動、転勤。公務員は前述のように様々な部署を異動、転勤して歩きますが、せっかく親しくなった関係者と一緒に盛り上げていた業界・人との関係が異動で切れてしまうのがさびしく感じることがありました。国際交流の時にはボランティアの方々が交流を盛り上げていました。「そうか、では自分もボランティアで関われば、仕事で関係がなくなってもその業界や人の繋がりを継続できるな。」と気付きました。
2つ目は、ボランティアとしての成功体験、達成感。平成9年に岩手県内で初めての大きな国際交流イベント(「国際青年の村」:世界17か国150人の外国青年と全国150人の日本青年の10日間の交流事業)をボランティアの実行委員・スタッフ(県内140人の青年)の一員として運営した時に、裏方の私たち実行委員・スタッフが、イベント参加者たちによりサプライズでステージに登壇となりスタンディングオベーション(全員総立ちで拍手、感謝)を受けたことがありました。1年がかりで仕事のあとや週末に話し合い準備して来た大変なイベントだったので、感動して参加者代表と抱き合ったり、みんな泣いたり笑ったり。
イベント終了後、記録ビデオ、記録誌を作成するまでやって実行委員会は解散しましたが、メンバーの多くはイベントを成功させた達成感、熱い思いを抱えたまま、あえて規約を持たない「ハーティーネットワーク」という緩やかなグループを作り、賛同した70人ぐらいで「やさしい未来づくり」をテーマにメンバーそれぞれのやりたいことを「この指とまれ」方式でみんなでサポートして活動し始めました。人によって興味分野が違うので、福祉施設訪問・遠足の企画引率、障がい者のコンサートや郷土芸能の舞台、自主上映会、川の清掃、植林、豪雪地帯の一人暮らし高齢者宅の雪かき(スノーバスターズ)、アートフェスティバル、子どもの遊び場などなど、主催、共催で毎週、毎月のように活動。経費が必要な活動は企業を回って説明して寄付をもらってチラシ、パンフレットでスポンサー紹介。思いがある人が集まって支援者を集めることが出来れば、本業、肩書きと関係なく、自分たちも新しいことを学び成長しながら、市民レベルで多くの人が笑顔になり喜ばれる活動が出来ることを経験してきました。このことが今も色々な活動を続ける原動力になっています。
当時はまだNPO法が出来て間もない頃で、岩手での活動団体も少なかったので、ボランティア活動を普及する先頭を切る勢いもありましたが、東日本大震災津波で一気に流れが変わり、今では多くの団体、個人がさまざまなボランティア活動、NPO活動をするようになっています。
年数を経て設立当初のコアメンバーが転勤したり仕事が忙しくなったりする中で、実働人員、活動は縮小されていますが、今も他団体の活動に協力して主に2つの活動を継続。冬には前述のスノーバスターズと、秋には小中高生50人を公募して盛岡宮古間100kmを2泊3日で踏破するサポートをしています。
皆さんがこのコラムを読む10月の3連休はコロナで2年間休止した活動が再開されて宮古に向かっています。感染拡大防止のため参加者は15人に絞りましたが、一緒に歩いたり、車で先行したりする途中休憩対応や救護班などサポートスタッフは倍の人数。参加した子どもたちが数年後にスタッフとして加わるような、次世代育成につながる歩みを続けていきます。

ところで、岩手を舞台にした「あまちゃん」以来、注目するようになったNHKの朝ドラですが、この10月にスタートの「舞い上がれ!」は東大阪市が舞台。以前なら雰囲気も言葉も半ば異国のように感じるだけでしたが、今ではMOBIOの奥田さんや、隣の平野区のVIXメンバーの工場とその社長さん、従業員さんたちの顔が浮かび、岩手のチームを応援に行った花園ラグビー場があるなと思い出す地域であり、関西弁を懐かしく心地よく聞く毎日になります。

PAGE TOP