Members Column メンバーズコラム

伝統芸能を考える

内海美保 (近畿経済産業局)  Vol.223

内海美保

私は現在、近畿経済産業局でクージャパンの推進をミッションとして活動しています。仕事とは直接関係はありませんが、日本の文化の一つ、伝統芸能について、ご紹介したいと思います。

数十年間、趣味として習ってきた小唄と三味線を、娘に伝えたいという想いから、母に熱心に勧められ、母を師匠として、数年前から小唄と三味線を習っています。音楽は嫌いではありませんが、家で母が稽古をしているのを聴いていて簡単に割り切れない微妙な間合いに何となくしっくりこない感じを持っており、避けてきたのですが、母のボケ防止にもなるかなと、数年前に伝統芸能の道に足を踏み入れました。

昨年、私の属している堀派が100周年を迎えたので、少し、小唄とは・・・と少しひも解いてみました。
堀派は、堀小多満(ほりこたま)という女性が、当時江戸小唄の草分けといわれた横山さき師について小唄の修練に努め、大正2年に「堀派」を創立したのが始まりです。小唄家元の認可申請書を東京都に提出し、小唄家元第1号として正式に官許を得たということです。家元が行政庁の許可を得るということは、どのような法令によってなのか、不思議な気がします。大正12年の関東大震災で堀小多満は大阪に移り、大阪道頓堀通りに大阪稽古所を設け、関西進出を果たします。その後、中国、九州、北陸その他各地に広がっていったそうです。
現在、堀派では、師匠に師事して1年たつと、芸名をいただきます。創立者の名前にちなんで、必ず、小を付けられます。私の英名は、大師匠の吉、師匠の綾を一字ずつ頂いて「堀 小吉綾美」と付けてもらいました。
お座敷で唄うものでしたので、三味線はバチなどを使わず、人差指爪先の肉で弾く「爪弾き」で、粋に歌うのを特徴としています。演奏時間はおよそ1分半から3分程度。 長くとも5分以内で、詞の内容は遊里物・遊女物(遊里のお色気を扱ったもの)、慕情物・情痴物(市井のお色気を扱ったもの)、芝居物・役者物(芝居や役者を題材にするもの)、バレ唄(諷刺・洒脱のきいたもの)などがあります。関西の師匠の中には、台湾で仕事をしている人が台湾でお弟子さんを持たれるようになり、台湾での社中さんも増えてきました、日本人の私でもなかなか情緒を出すのが難しい小唄や三味線ですが、見事に歌い上げておられます。高齢化が進み、私でも若い方から数えて何番目、という感じですが、海外に日本の伝統芸能を愛する人が増えてくれるのは嬉しいものです。縁あって入ったこの世界、少し極めてみたいと思います。

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