Members Column メンバーズコラム
どうなる関西の製造業!!
内海美保 (経済産業省近畿経済産業局) Vol.154
皆様こんにちは。
近畿経済産業局の内海美保です。現在所属している製造産業課では、関西の製造業の活性化を担当していますが、その幅はとても広く、着物や焼き物などの伝統工芸から、繊維・ファッション、日用品、コンクリート、鉄、機械、飛行機、自動車など、ありとあらゆるものづくり産業を担当していると考えていただければいいと思います。
ですから、「きものデザインコンクール」の表彰式に和服で出席して、着物姿のまま航空機の会議に出席するということもしばしば起こります。そのときは結構うけますけどね。(*^▽^*)
ところで、最近の我が国の製造業は最近大変な状況になっているようです。なんてことをいうとメンバーの皆様にお叱りを受けるかもしれませんが。でも、実はとても心配なことが起こっています。
直接的な原因は、最近少しましになった円高、原料価格の高騰、東日本大震災や欧州の債務危機による市況悪化、タイの洪水など経営環境が悪化したからです。でもそういった短期的な環境の悪化だけではなく、もともと新興国との厳しい競争にさらされていたエレクトロニクスや汎用素材の分野で厳しい状況になったことが厳しい状況になった大きな要因の一つです。
これまで日本のものづくりは、高い技術力と各部品が絶妙な組合せで統合されるように設計・調整する摺り合わせに強みを持っていて、高品質な製品を先進国向けに輸出していました。しかし、パーツを組み合わせれば製品が完成する「モジュール化」が進み、アジアの技術力が急激に向上してきて、新興国で中間層が爆発的に増加して世界シェア獲得には日本が新興国の市場をゲットしなければならないところだったのに、品質が向上したアジア製品がシェアを拡大してしまいました。
中国や韓国などのアジア企業は大規模投資を行い低コスト化を実現していますし、一方、欧米の企業は、コア技術をブラックボックス化してインターフェースを拡大して市場を広げるという作戦に出ました。そのような中、日本企業は欧米型にもアジア型にも構造転換できなかったという問題があります。
さらには、タイやベトナムは広大な工業団地を用意して、技術力のある日本企業への誘致を積極的に行っています。海外に市場を求める自動車などのメーカーは現地に組立て工場を持っていきますが、そのうちに部品や材料も現地で調達しようとします。そうすると、日本下請け企業(中堅も中小も)は仕事が減ってきます。売上が減れば当然、雇用も維持しにくくなってきますよね。産業のサービス化で、製造業で維持できない人員をサービス業に転向してもらえばいいではないかという議論もありますが、長年ものづくりに携わった人は、やはりものづくりで生きていきたいと思われますよね。それに、一般的には製造業よりサービス業の方が賃金が低いと言われており、簡単ではありません。
やはり、日本はものづくりで富を増大させていかないとだめです。
そこで、来年度の政府の方針は、復興・防災対策はもちろんのこと、成長による富の創出及び暮らしの安心・地域活性化を大きな重点にしています。中でも、「世界で勝ち抜く製造業の復活」を掲げ、私たち経済産業省は真剣に取り組もうとしています。
政策は政府や国会だけで考えるものではありません。私たち近畿経済産業局のメンバーも日頃、接している製造業の皆さんが何に悩み、何に困っているか、どうしたら稼げるようになるのか、成長できるのかをいつも考えています。
25年度予算は国会での審議が始まりますが、26年度に向けての議論は実はもう始まっています。本省と議論していますと、本当に大手や中堅メーカーとそこに部素材や部品を供給するサプライヤーの両方を一体として経営基盤強化・技術力の強化、新市場への展開をしていかなければならないと言っています。東京の人たちは大手企業のことはよく知っています。でも、大手企業のサプライヤーとなる地域の中小企業のことはあまり知りません。私たちのような地域の経済産業局はその反対です。そこで、本省と地域の経済産業局はいつも情報を共有し議論を続けています。
小手先の政策ではなく、中小企業支援策だけではなく、本当の意味での製造業全体の復活をどうして実現していくか・・・を真剣に考えているところです。一つには、大手や中堅のメーカー(いわゆる川下企業)が海外を含めた市場の拡大を図る一方で、そこからの仕事にきちんと答えられる、中小企業のサプライチェーンをしっかり作っていく。このどちらがかけても成り立っていきません。KNSメンバーにも製造業の方がたくさんいらっしゃいますが、どうかいろんな意見をお寄せください。
ちょっと、堅い話になっちゃいましたが、このところこんなことばかり考えているものですから。