Members Column メンバーズコラム

介護を通して感じたこと

増田たくみ (トゥーキャンコンサルティング)  Vol.739

 いままで単身で横浜に住んだり、モンゴルに行ったりと、数年前までは24時間をほぼ自分のために使わせてもらっていた私ですが、昨年父が亡くなったのを機に認知症の母の介護が始まりました。母は昔から元気で働くことが大好きで認知症かなと思われる直前までマクドナルドやコンビニエンスストアでアルバイトをし、孫の面倒と1人では家事ができない昭和な父の面倒をみて過ごしていましたが、7年ほど前、70歳の時にアルツハイマー型の認知症と診断されました。

 自宅から実家も近く、父ががんを患ってからは実家にちょくちょく手伝いに行っていたのですが、その時もタンスからレトルトぎょうざが出てきたり、冷蔵庫に同じものをいくつも買っていたりと母の症状が少しずつ進行していることを感じていました。

 父が亡くなった直後から母を一人にしておけないので、昼はデイサービス、夜は私か妹の家で過ごすという日々が始まりました。また私たち二人とも夜が遅くなる時はショートステイという短期宿泊介護施設に滞在してもらうようにしました。今後この生活がどれだけ続くかわからないので、妹にも無理はせず、しんどかったらショートステイに行ってもらおうよ、と妹と母シフトを作って回してきました。5つ年下の妹とは似ているのは顔と声だけで、性格も趣味も全く異なり年も離れていることもあって、この年になるまで何かを一緒にするということはあまりなかったのですが、両親の面倒を見るようになってからは時々意見が食い違って喧嘩もしますが、本当に妹がいてよかったと思うようになりました。(ちなみに弟もいて妹ほどではないのですが、どうしてもの時は手伝ってくれます。)

 母の介護をするようになり、今までは無縁であった介護サービスについても知るようになりました。まずはケアマネージャーさん。地域包括センターに相談すると担当のケアマネージャーさんがついてくださるのですが、この方が本当に良い方で、母が先にお世話になっていたのですが、父の病状が悪くなり介護用のベッドなどを借りる必要がでてきた時にも素早く手配をしてくださったり、家族の意思を尊重しつつ、いろいろなアドバイスをもらえるので、母の介護のことについてはなんでも相談するようにしています。

 また介護施設選びですが、母は歌を歌うことがとても好きで、今でもテレビから自分の知っている歌が流れてくると、それまでは見向きもしていなかったのにいきなり歌詞も見ずに歌い出したりするので、「好きな歌の歌詞は覚えているんやなぁ〜」と感心することがよくあります。それぐらい歌が好きなので、デイサービスもカラオケや口腔ケアを中心としたプログラムが組まれている施設に行かせていますが、他の施設も本当に色々なプログラムがあり、楽しそうな施設もたくさんあるので、私もぜひお世話になりたいと今から思っています。また働いておられる方も色々な老人の方々を相手にしていて、本当に大変なお仕事だと思うのですが、みなさんとても親切で優しくて、私はついつい家で、特に朝、家を出る前に限ってとんちんかんなことをする母にイラッとしてしまうことも多々あるのですが、お迎えに来ていただいた際にも「髪の毛カットされてかわいい〜!」とか「今日のお洋服素敵ですね!」など声をかけていただき、バタバタしていたこちらの心まで和むことがあります。ただここ1年母には自分の家がなく、妹から「あちこち連れ回すと混乱して認知症の症状が酷くなると聞くので、やっぱり母の家を設けた方がいいんじゃない?」と提案され、サービス付き高齢者住宅やグループホームなど色々な滞在型の施設にも見学に行きました。ただ母は認知症の症状が原因でもあるとは思うのですが、あまり趣味もなく、自ら施設内で活発に活動することがなさそうなので、ぼーっとさせてしまっては、症状が進むのではないかと心配なのと、やはり利用者の方がまだ今は母より高齢の方が多く、話も合うのかなぁ…など正解がわからず、施設に空室が出た際には預けるかどうか迷いましたが、可能なところまではデイサービスとショートステイの利用でやっていくことにしました。

 介護施設に通所しながらも母は働くことが好きなので、母のことを分かってもらいながらお手伝いができる場所がないかな…と思っていた矢先、私が大阪市住之江区のアジア太平洋トレードセンター株式会社(ATC)で地域のネットネットワークづくりの活動をしているのですが、そこで仲良くなった障害者の自立生活センターでお仕事をされているご夫妻が、これまた同じ地域で仲良くさせていただいている咲洲にある西尾レントオール(株)さんが地域コミュニティスペースとして解放されているN-Loungeの日替わりカフェスペースでお店を出店されることになったと聞きつけました。母は配膳などであればできるので、これはチャンスかも?とご相談させていただいたところお手伝いをご快諾してくださいました。ただ1つ懸念されることがありました。それはお手伝いもお昼時間を過ぎるとやることが少なくなり、やることがなくなると母はすぐにウロウロしはじめ、今やっていることとは別のことに興味を持ったり、家に帰りたくなるのか、外に出て行ってしまうことがあります。以前もATCで母と一緒に写真展を見ていたのですが、いつの間にか居なくなり一人で生駒まで行ってしまい、警察のお世話になったことがありました。それ以来GPSは装着させてはいるのですが、それでも一人にはできないので、どうしたものかと思っていましたら、旦那さんが住之江区で認知症の人や家族をボランティアでサポートしておられるグループ、「オレンジサポーター」さんにお声がけいただき、母の仕事中から終了まで付き添っていただくことになりました。お陰で母はお手伝いが終わってからもお手玉やあやとりを一緒にさせていただいたり、楽しい時間を過ごさせていただいているようです。ただ、母がお手伝いをさせていただくために、色々な方を巻き込んでしまっているのが申し訳なく思っていたところ、先日奥さんから「お客さんからお手紙いただきましたよ〜」と見せてくださいました。ご来店いただいた方もやはりお母さんが初期の認知症でご家族はお母さんにどう接すればいいかわからなかったそうなのですが、母にカフェで出会っていただいて自然体で周りの方々と過ごさせてもらっている母をご覧になり、悩みが少し晴れたという内容のお手紙でした。

 人は一人では生きていけませんが、一方で知らない間に誰かの役にも立っていたり…母を通して改めて社会の温かさや色々な人の助けがあって生活ができていることに感謝する日々です。

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