Members Column メンバーズコラム

NPO法人 ツーリズム研究機構でございます。

高木英彦 (特定非営利活動法人ツーリズム研究機構)  Vol.494

高木英彦

「相変わらずアクティブにご活躍ですね?」(KNSのメンバーは皆そうだけど)とよく言われる。経産省現役(中央の官僚ではなく地域コーディネータだ)のときは、それでも「いやー、なかなか○×△」と違和感なかったんですけどね。63歳で2回目の定年を迎えようとしている今、アクティブにやってるつもりが自らの行動を振り返ってみると、クリアさが減ってる? ストレートではない? 迷いがある? 納得していない? ことになってます。「歳だからね」と逃げるつもりないけれど、モヤモヤがいっぱいの今日この頃です。

さて、2005年4月から近畿経産局のツーリズム担当課長として正式参加したツーリズム研究会も、2015年にはNPOツーリズム研究機構と法人化を果たし、単なる勉強会の殻を破って地域で事業を請け負うようになりました。私は二足の草鞋になりきってはいないんですが、一般的に役員は理事と表されますが、国家公務員は兼業禁止なので、定款に定めるコーディネータを設置してもらってボランティア的に参加しました。
NPOツーリズム研究機構の大きな目的の一つに、自治体レベルでのツーリズム振興を活用した地域活性化があります。目に見えるところから地域経済を切り取り、ミクロの取り組みを束ねてマクロにしていくように心がけています。
ツーリズム? えっ、観光じゃないのとよく言われますが、ツーリズム(世界標準の概念)です。観光(Sightseeing)+ビジネス旅行と縦に割って考えてしまうのが日本人の性(さが)なんでしょうね。観光基本法成立前に、産業ツーリズムに関する調査報告を近畿経産局として運輸省に持って行ったときも、産業振興だから経産省の仕事ですねとお咎めなしだったりしました。世界標準で考えて、報告書には「観光」も包含してるんですけどね。お互いに大人の考え方をしたとも言えますけど。(笑)

閑話休題、NPOツーリズム研究機構のコーディネータとして、2019年に私が関わった二つの事業をご紹介しながら、つれづれに考えてみたいと思います。

☆ すべての地域に優秀なプロデューサーが存在するわけではない ☆
まずは、2月に実施した「コスカレードin吹屋ふるさと村」。これは2018年の豪雨による風評被害からの脱却を目的とした実証イベントをNPOがプロデューサーしたもの。岡山県高梁市では備中松山城が観光客に人気ですが、同市吹屋地区、当日朝は雪が積もるなど山の上は寒かったです。閑散期の集客実証事業としてコスプレパーティーをコスカレードの協力を得て実施し、約30人のコスプレーヤーが参加してくれ、インバウンドを含む観光客に新たな魅力を提示しました。また、周辺地域で伝わるハロウィーンに似た風習「ほとほと」をアレンジして復刻した「つまみぐいウオーク」も開催。飲食店など10店舗が協力し、柄杓を手にした参加者が「ほとほとっ」と叫び、カレーやお汁粉などの振る舞いに舌鼓を打っていました。

集客では、チラシや主要駅でのポスター掲示などレガシー広報に加えWeb、SNSでも展開したところ、こちらに軍配が上がったようです。事業のまとめとしては、私がメディアで語ったように「今回は吹屋がコスプレの聖地になるノウハウをためる第一歩。今後も何かしら仕掛けて、にぎわいのベースを作りたい」ということです。加えて、ツーリズム研究機構がお手伝いしたように、地域のやる気満々の観光協会だけではマンパワー不足、ネットワーク不足で、企画、資金確保、事業実施は難しいようで、せっかくベースを作ったのに継続・発展させていく資金がありません。地域経済の大きな課題が浮き彫りになりました。

★食わず嫌いを払拭しろ ★
「山辺の道モニターツアー」、「食」と「農」の魅力を活かして外国人観光客を対象にしたウォーキングに、ツーリズムの専門家として参加してきました。
このプログラムは昨年12月実施の奈良県庁の委託調査事業で、10月の大雨の中で実施した「自転車で巡るひみこの郷 & OPEN FARM@南檜垣」とのカップリングイベントです。NPOは協力機関の位置づけで、わたしはツーリズムの専門家として外国人と一緒に山辺の道を歩きました。
役割は、10数キロに及ぶウォーキングの中でインバウンドの反応を生声として聞き出し、新たなツアー創成に資するアイデア出しと来日中のインバウンドへのリーチ、情報発信方法を考えるということ。普段の知識でも答えは出せそうですが、現場が大事。
山辺の道は、日本史上最古の現存する道として知られ、桜井市の三輪山の麓から奈良市の春日山の麓まで、奈良盆地の東の山々の裾を縫うように南北に走っており、スタート地点には、これまた日本で最も古い神社である大神神社(おおみわじんじゃ)があります。
案内役は、地元の桜井市職員、天理市職員にお願いし県庁職員も一緒で心強い。日本人の私でも知らない説明があり、それをインバウンド達は興味深く聞いていた。神話の世界に近いテーマだが、質問も活発で、地元の人には当たり前のことが、ツーリストの我々にはとても新鮮で魅力満載のウォーキングでした。お彼岸の時には二上山の二つの山の間から日が昇るのが見えるスポットに、大神神社摂社の檜原神社が祭られ、御祭神は天照大神若御魂神(あまてらすおおみのかみのわかみたまのかみ)であるなど、たいへん奥深い説明にもインバウンドはついていくことができていた。
インバウンドを受け入れ、柿の葉寿司の調理体験を提供してくれた地元の方々にも、気づきとともに大きな刺激を与えることができて、外国人はちょっと?という偏見、食わず嫌いを払拭できたのは大きな収穫でした。あたらしいツアーの創成と販売が、今後に期待されるところです。

☆★ IT、苦手を克服しろ ★☆
FIT(外国人個人旅行者)が主流になりつつあるインバウンド観光において、今回の山辺の道のようにTripAdvisorなどのWebに掲載されにくい地域は、どのように情報発信すれば良いのかが今回の課題の一つだったので、ツアー中にインバウンドにいろいろ聞いてみた。主要駅に設置している外国語の観光パンフレットもインバウンドには有効だが、来日中の彼らの情報源はWeb、SNSがほぼ100%とのことであった。
高齢化が進む地域の受け入れ側にとっては不得手な分野ではあるが、Facebook、Instagramなどを介して英文で情報発信するなどITリテラシーの向上とともに、本丸のTripAdvisor、JapanGuideなどにアプローチすることも必要になってきます。
訪日外国人数は4000万人の目標達成には、吹屋地区や山辺の道など今まで外国人に認知されていない地域への誘致が必要で、地域の人たちが受け入れ可能な方法を、それぞれの地域が考えていくことが課題かなと思います。あくまでも、ミクロの取り組みを基本に、各地の取り組みを束ねてマクロでの情報発信が必要でしょう。

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