Members Column メンバーズコラム

旅することは生きること

嶋崎エリ (デザインQ)  Vol.453

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KNSメンバーのみなさまこんにちは!デザイナーの嶋崎エリです。
私の趣味は「ひとり旅」です。特に海外で日本と全く異なる文化や風景に触れることが大好きです。今回は私の旅に関する、想い&思い出コラムです。
《旅のルールはひとつだけ》
ひとり旅する前に、海外旅行が好きになったキッカケは19歳の時。私は京都芸術短期大学(現 京都造形芸術大学)で美術史を専攻する学生でした。2回生の時に、専攻学科の講師(以下、先生と記します)が「みんなで1ヶ月イタリアに行きましょう!」と、夏休みを利用して「イタリア研修」が企画されました。『研修』と名のつくものですから、本でしか見たことのない(当時にインターネットは普及しておらず、情報源は書籍がほとんどです)絵画に触れ、現地で講義を受けることを想像し、イタリアへの渡航を楽しみにしていました。そして、生まれて初めて飛行機に乗り、初めての海外イタリアに飛び立ちました。

伊丹から成田へ行き、さらにアムステルダムで乗り換え、夕刻にローマに到着。なんともいえない優しいオレンジ色した街路灯に包まれた街並みが印象的で、今でも鮮明に覚えています。そんな風景をバスの窓越しに見ながら先生と約30名の学生一行はホテルにチェックイン。いよいよ翌日からの講義について説明があるかと思いきや、先生が言ったのは「では解散!集合は3日後の午前10時にホテルのロビーです」要約すると、こんな感じだったのです。「え!?解散?集合は3日後ですか??」と、私たち学生は、ローマの野に放たれました。

翌日からは、学生各々が自分の見たい場所を自力で見に行くという「放任スタイル」のイタリア研修がスタート。ほとんどの学生が初めての海外。いきなり野に放たれるには、やや経験が不足しています。研修初日は日曜日だったことから、「地元の蚤の市に行ってみたい!」と学生から提案。先生と共に全員で地下鉄に乗り、現地の生活風景を感じるなか、その道中で学生のひとりがスリに遭ってしまい(滞在費の小遣い20万円入った封筒持ってかれる)、学生達は全員落ち込み、初めてのイタリアに気後れする研修の幕開けでした。

その後、私は「イタリアで気をつけるべきことはなんですか?」と先生に尋ねました。リスト化された“気をつけるべき項目”があるかと思いきや、予想と違い答えは1つでした。「日本でやらないことは、海外でもやらない。それだけだ。例えば、日本の道端で知らない人に声をかけられ『家で食事しようよ』と誘われたとしても、そんなもん着いてかないだろう。旅先での過ごし方だって、日本と同じにすればいい」と。よく考えてみれば、稼ぎのない学生が20万円もの大金を持って蚤の市に買い物に行くなんてことは日本でもしないことだと、当時の私はそう理解しました。今思えば、スリにあった学生は「自分で携行するのが、いちばん安全」と自己管理をしていたのだと思います。しかし、「海外だから」というフィルターによって、普段ならしない行動を選択してしまったのでしょう。

先生が教えてくれた、「日本でやらないことは、海外でもやらない」それは、私の旅のマイルールとして、今でも旅先での過ごし方の指針となっています。

《旅はいつでもイレギュラー》
初めてのひとり旅で海外へ行ったのは27歳。「日本でやらないことは、海外でもやらない」そんなマイルールを設けても、そこは非日常です。タイのアユタヤでは地図を片手に街中から8kmほど離れた灼熱の遺跡へ行き、行きはヨイヨイ帰りは歩き疲れ、気づけば人っ子ひとりいない場所に私ひとり。自分が何処にいるのか、東西南北もわからない状態に(当時はGoogleマップなんてありません)。タクシーもなく到底自力で帰れなくなったところに、フルーツ売りおじさん登場!「お前を案内してやる、バイク乗れよ!」とおじさん。「いや、自分で何とかするし!(知らん人のバイクなんか乗れん!)」と歩く私。「じゃあな!」と言って、おじさんは私から離れて行ったものの、私が道行く交差点ごとにおじさんは私を待っていてくれて、私の進むべき道先案内をしてくれ、それをどこまでも繰り返す。「この人、めっちゃええ人やんか!」と、遂に私の気持ちはおじさんを信じ、バイクの荷台(といってもフルーツを切るまな板の上)にしがみついて宿まで送ってもらうことになりました。出会う人を疑ってしまい、やや心を痛めましたが、マイルールに照らし合わせれば、当然のことなのです。

ニューヨークの美術館ではスタッフに「日本へ旅行に行った写真を見せたい」と話しかけられ、差し出されたデジカメを見ると、なんとそれは私が運営に関わっている音楽イベントでの様子で意気投合。「お前をニューヨークで一番のシーフードレストランに連れてってやる!あと30分で仕事が終わるから、美術館の出口で待ってろな!」と、その時私は一緒に食事に行くことを決めたものの、マイルールに沿うと行かない選択となる。出口で待ち合わせた時には「やっぱり行けない」と断りを入れると、閉館後の美術館へ戻らされ職員ルームへ。私の心を察してか「みんな聞いてくれ!彼女は日本人、私の友達だ。今からディナーに行ってくるね!」と、職員たちに私のことを紹介し、私を安心させたのです。

そもそも旅先では、日常では起こらないストーリーもあり、イレギュラーな目の前にある選択肢の中から1つを選び前へ進む。そんな、小さな取捨選択の積み重ねが『旅』。人生だってそうなんだと、いつも思います。

《ひとり旅はしたほうがいい、できるだけ遠くに》
ひとり旅の道中は、いつでも選択に迫られます。なかには、ひとり旅の人を狙った騙り、悪意のある者も多く近寄ってきます。喜びもあるし、落ち込む時もある。贅沢もあれば、質素な時もある。親切にしてもらうこともあれば、不平等な扱いを受けることもある。前に進む時もあれば、道に迷う時もある。悲喜交々ある旅と自分の人生を照らし合わせ、遠くへ行けば行くほど、小さな取捨選択の積み重ねが色濃くなり、自分の生き方をも豊かなものにするものだと。そして、また旅に出る予定を立てるのです。

画像は19歳のわたし。ローマのスペイン階段にて。

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