Members Column メンバーズコラム

盛岡市の緊急経済対策

及川隆 (盛岡市)  Vol.543

及川隆

 2020年は,新型コロナウイルス感染拡大により,世界中のあらゆる活動が大きな影響を受けた一年となりました。日本で唯一「感染ゼロ」を続けてきた岩手県も,7月に感染者が初確認されて以降,11月にはクラスターが発生するなど感染は着実に拡大しており,収束の見通しは立っていない状況にあります。この間,経済的な影響を受けている多くの市民や事業者への支援に,盛岡市としても緊急的かつ重層的に取り組んできました。その取組の概要と,取組の中で感じたあれこれをつらつらと書いていきたいと思います。

■第1弾(4月補正)
 まずは事業者の資金繰りと雇用確保の観点から,次の事業に取り組みました。
・岩手県制度融資への保証料・利子補給。(3年間実質負担ゼロ)
・雇用調整助成金事業主負担分の補助⇒国2次補正による拡充により事業中止。
・地域企業家賃補助事業補助金
売上が50%以上減少した小売,飲食・宿泊業及びサービス業の中小事業者への家賃補助。(補助率1/2 上限10万円/月 3か月分)

■第1弾(4月補正)
 まずは事業者の資金繰りと雇用確保の観点から,次の事業に取り組みました。
・岩手県制度融資への保証料・利子補給。(3年間実質負担ゼロ)
・雇用調整助成金事業主負担分の補助⇒国2次補正による拡充により事業中止。
・地域企業家賃補助事業補助金
売上が50%以上減少した小売,飲食・宿泊業及びサービス業の中小事業者への家賃補助。(補助率1/2 上限10万円/月 3か月分)
・盛岡商工会議所新型コロナウイルス対策事業補助金
県,国等の各種支援制度に係る周知相談体制の構築等,緊急的な支援策の実施に向けた盛岡商工会議所に対する補助金の増額。
・勤労者向け生活資金への支援
東北労働金庫による実質無利子での生活資金融資。(上限50万円)

■第2弾(5月補正)
特に大きな影響を受けている業種,事業者への支援を中心に取り組みました。
・観光基盤維持支援金
観光関連事業者(宿泊施設,観光バス,タクシー,わんこそば事業者)に対し,経営基盤の安定化と感染防止対策の支援金を支給。(1事業者当たり最大100万円)
・盛岡の宿応援割
県民が市内宿泊施設を利用した際の宿泊料補助。(1泊1人当たり3千円助成)
・プレミアム付き飲食・宿泊応援チケット「モリオ☆エール」
盛岡商工会議所が行う,飲食・宿泊業を対象としたプレミアム付き応援チケット事業への補助。(額面2,500円分(500円単位)のチケットを会議所が作成し,参加店舗に100枚ずつ配布,2,000円で店舗にて販売,プレミアム分5万円を事業者に事前給付)
・宅配サービスプロジェクト支援
盛岡商工会議所が行う,タクシー事業者と飲食業とが連携したテークアウトデリバリー事業のスタートアップ時の広報・普及活動や,タクシー運行に係る補助。
・地域経済好循環推進事業補助金(グループ補助金)
地場産業等を活かした新たな事業を行う複数の事業者等グループに対する事業費補助を通じ,地域経済の好循環につながる取組を支援。(補助率9/10,上限100万円)
・「もりおかエール便」の送付
都道府県をまたいだ移動自粛により帰省できない盛岡市出身の学生等に,盛岡三大麺等の特産品を詰め合わせた「もりおかエール便」を送付。
・もりおか事業継続支援金
セーフティネット保証等の融資を受けた事業者に対し,事業継続への応援資金として支援金を給付。(法人20万円,個人10万円)

■第3弾(6月補正)
新たに学生向け支援やウィズコロナ対応に向けた事業者支援を充実しました。
・雇用継続支援金
国の雇用調整助成金を受給し,雇用の維持を図った中小事業者に支援金を支給。(上限30万円)
・雇用調整助成金等申請費用補助
雇用調整助成金の申請に当たり,社会保険労務士に申請書類の作成を依頼した場合の費用を事業者に一部助成。(上限10万円)
・大学生等有償インターンシップ事業
アルバイト収入が途絶え,学費や生活費に困っている大学生等を,地域企業の有償インターンシップとしてマッチングし,受入企業に賃金相当額を給付。(時給上限1,000円)
・大学生等生活安定支援事業
経済的に困窮している大学生等を,市がパートタイム会計年度任用職員として任用。
・中小企業情報発信緊急支援事業
大手就職ナビサイトへの掲載料を補助し,地元中小企業の採用活動を支援。(補助率10/10,上限100万円)
・「2020盛岡プレミアム付き商品券SANSA」発行事業
業種を限定しない多様な参加登録店舗で使用可能なプレミアム商品券を発行。額面12,000円分(1,000円単位)の商品券を10,000円で販売。(プレミアム率20%,20万枚発行)
・住宅等リフォーム支援
個人住宅や事業店舗等のリフォーム工事(30万円以上)を行った者に対し6万円分のプレミアム商品券を支給。
・盛岡の食・特産品発信事業
盛岡の食や特産品を全国にプロモーションするテレビ番組を制作。
・業界団体等運営支援事業補助金
「新しい生活様式」に対応するための経費について,岩手県中小企業団体中央会及び盛岡市商店街連合会を通じて加盟団体に助成。(定額10万円+組合員数割2万円/社)
・技術シーズの発信
市内企業の持つ優れた技術シーズを集約・情報提供し,企業ニーズのマッチングを支援。

■第4弾(8月補正)
コロナ後を見据えた地域産業の将来に向けた取組を進めました。
・MORIO-Jキャッシュレス化推進支援事業
地域ポイントであるMORIO-Jカードを拡充し,電子マネー機能を備えたスマートフォンアプリ開発を支援。
・事業拠点分散化等動向調査業務委託
サプライチェーン棄損に伴う生産拠点の国内回帰の動きや本市への企業進出の動向をより詳細に把握するための企業調査を実施。
・サテライトオフィス立地促進事業
事業拠点の分散化を検討している県外企業に対しサテライトオフィスを体験する機会を提供し,当市への移転検討を後押し。

■第5弾(10月補正)
・オンライン就職面談会,オンライン企業研究会
オンライン面談をより効果的に実施するための調査研究と,参加企業の実施体制の構築を支援。
・盛岡市まち・ひと・しごと創生総合戦略推進事業
デジタル化の推進により求められる地域社会経済全体のDXに長期的・分野横断的な視点を持ち,今後の取り組むべき方向性や対応策を検討するための調査・分析を実施。
・盛岡市特産品販売促進事業費補助金
市内特産品の販売に係る送料を市が補助。
・特産品消費拡大支援事業
盛岡手づくり村の売場及びインターネットショップにおいて市内特産品を3割引で販売するキャンペーンを実施。
・プロスポーツ試合を生かした地域経済支援事業
市内開催の岩手ビッグブルズ及びいわてグルージャ盛岡のホームゲームを観覧する市民等に対し本市特産品を贈呈。
・ひとり親家庭就業支援事業
ひとり親を市が会計年度任用職員として雇用するとともに就職活動を行う時間を提供し,経済支援及び次の安定した就業を支援。

■年末年始生活経済支援(12月補正)
・盛岡市地域企業者家賃等支援給付金支給事業
売上が30%以上減少した小売,飲食・宿泊業,運輸業及びサービス業の中小事業者への家賃給付。(月額家賃の2/3に一律3万円を加算した額の3か月分,※1か月あたりの上限額は13万円(ただし,支払家賃相当額を超えない額))
・ひとり親世帯臨時特別給付金の再支給
1世帯5万円,第2子以降1人につき3万円を年内に追加支給。

以上がこれまで取り組んだ新規事業ですが,細かいところで工夫したポイントがいくつかあります。
例えば,第2弾で取り組んだ飲食店の応援チケット「モリオ☆エール」では,過去の取組でプレミアム分の清算事務が事業者と商工会議所双方で負担になっていたことから,事業者への応援という名目で清算を行わない「渡し切り」とし,しかも申込と同時にプレミアム分5万円を振り込む「前渡し」式にしてみたところ,事業者からは「手続きが非常に簡便でよかった」「プレミアム分を先にもらえて励みになった」といった声が寄せられました。
また,第3弾で取り組んだ「2020プレミアム付き商品券SANSA」では,過去の商品券事業で発売時に長蛇の列ができていたことから,インターネット又はハガキによる「事前申込方式」を採用するとともに,商品券の引き渡しについては,ファミリーマートの協力を得て,当選者に郵送される購入引換書をコンビニの店頭で商品券と引き換える方式とし,三密を避けることができました。
一方で,課題もありました。
大きな影響を受けていた観光関連業界に給付した「観光基盤維持支援金」の対象事業者として「わんこそば提供事業者」を位置付けたことから,盛岡三大麺を構成する「盛岡冷麺」「盛岡じゃじゃ麺」提供事業者から「なぜわんこそばだけが観光関連なのか」「不公平だ」とのご指摘を受けることとなってしまいました。もとより地元でも日常的に食べられている冷麺,じゃじゃ麺と比較し,わんこそばは観光客の利用割合が高かったことから,緊急事態宣言により観光客が激減していた時期に大きな影響を受けた観光関連事業者のひとつとしてわんこそば提供事業者を位置付けたものですが,「何をもって公平・公正とするのか」をもっとしっかりと丁寧に説明すべきであったと,今後の教訓となりました。
2021年も多くの事業者がコロナ禍に苦しんでおり,今後とも切れ目ない支援策を打っていく必要があります。事業者の声をよく聴き,あるいは声なき声にも耳を傾け,市民への説明責任を十分に果たし,withコロナを前提としたパラダイムシフトに対応した地域経済施策を進めていきたいと思います。

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