Members Column メンバーズコラム

大学を地元企業様にとってもっと身近な存在にしたい

二宮 章浩 (長岡技術科学大学)  Vol.703

長岡技術科学大学に、産学連携コーディネーターとして勤務しています二宮と申します。しかし非常勤ということもあり、ほぼ関西で活動しています。新卒で製造メーカーに入社した後、6年でコンサルティング会社に転職し、その後17年に亘り企業様の改革活動の支援を行いました。その後、コロナ禍前の2019年より独立すると共に大学に勤務しています。今回は、中小企業の目線からの大学と企業の連携をテーマにしたいと思います。

 

■企業の皆様にとっての大学の存在とは?
突然ですが、皆様にとって大学は遠い存在ですか?近寄り難い存在ですか?

遠い存在、あるいは敷居が高く近寄り難いと思われている方も少なくないのではないかと思います。コロナ禍前の2019年頃までの私も、実はそうでした。大学との接点と言えば、自分が関心あるテーマで先生が講演されているのを聴講するくらいでした。聴講して名刺交換しながら少し意見交換をしても、そこから先生を訪問しようとまでは考えませんでした。そこには、どこか勝手に、心理的な敷居の高さを感じていたように思います。

それでは、大学との接点が不要だったかと言うそうではありませんでした。コンサルティングをしている上で、新商品開発や新規事業構想の支援において、お客様は技術的な壁に直面していました。当然、我々コンサルタントにはそれを解決する力はありませんので、そんな時に大学の先生にアプローチすればよかったと今にしてみれば、強く思います。

■大学の先生側からみた産学連携

  大学への関わり方・見方が変わったのは、高校の同級生の誘いもあり、長岡技術科学大学(https://www.nagaokaut.ac.jp/)に産学連携コーディネーターとして勤務するようになったからです。先生方と直接、話をするようになり、勝手に思い描いた虚像ではなく、実像の先生を知ることが出来ました。

先生方は進めてきた自分の研究を社会に役立てたいと思っています、あるいは社会貢献するために研究をされています。研究成果の社会実装に向けては、企業様の支援が欠かせません。

例えば、開発した製品を量産してくれる企業がなければなりませんし、研究している新技術・新素材を採用して新製品を開発したいという企業がなければなりません。そして企業と一緒に追求することで、ユーザーとの接点も持ちやすくなり、社会貢献を実現しやすくなります。従って、先生方は企業と共同研究を進めようとして、接点を強く求められています。

但し、大学の中でも長岡技術科学大学は社会実装を追求している大学であるかも知れません。同大学は、高専卒業生が大学3年生として入学できる特殊な大学で、大学生の80%以上が高専卒業生です。そのため、社会に役立つ技術に着目している研究室が多く存在します。それは大学の名前にも表れていて、“技術(即ち世の中に役立つ研究成果)を科学する”という意味で、技術科学大学となっています。

以上のことから、実は企業様は大学の先生を遠く感じたり、敷居高く感じたりする必要はなく、どんどん関わりを持ちに行けばよいのではないかと思います。

■共同研究の難しさ

 研究成果を社会実装したい“先生”と商品・サービスを販売したい“企業様”が出会えば、共同研究が成立しそうに思います。しかし、私のこれまでの経験からは、そう物事は簡単に進まないと思います。簡単に進まない理由として、以下のようなものがあります。

  • 企業様が求めている研究成果を持っている先生がなかなか探せない。
    (研究成果の表現が分かりにくいという場合もありますし、その表現と企業が求める技術のイメージとが一致していると判定しにくい場合もあります)
  • ある先生の研究成果だけでは、企業様は商品化・サービス化できない。
    (新商品開発において、ある先生の研究成果でブレークスルー出来ても、それだけでは足りず、別の技術も組み合わせないと商品とならない場合も少なくありません)
  • 企業様内で予算や人員を確保できずに、共同研究を推進できない。
    (タイミングの問題が大きく、他の商品開発や活動を優先させて、予算や人員を確保できない場合もあります) など

産学連携コーディネーターになってから、共同研究を推進してきましたが、上記以外にも成立しない理由はあり、企業様と先生のお互いの思いを合わせるのは難しいこと、あるいは時間がかかることだと痛感しております。

それでは、企業様と大学(先生)との産学連携をどのように進めればよいかについて以下に記述致します。

■企業様と先生の関係作りからスタート

  前述で、共同研究の実現の難しさを説明致しましたが、これはお互いの研究テーマが一致していたら、「いきなりすぐに共同研究が始まるか」という観点で記述しています。新規顧客開拓でも何でも何かを始めようとすると、そうだと思いますが、研究テーマの一致があろうとも、お互いを知り合って、関係を深めるステップが必要だと思います。関係を続ける中でお互いの思いが一致して、共同研究を実現するタイミングが来るのではと考えます。

  このことに至るまでには、一つの経験がありました。それはマッチングイベントでの長岡市内のプラスチック加工会社との出会いがきっかけでした。私は大学と並行してコンサルティング会社にも所属しており、そちらの肩書でこの加工会社とお会いしました。そこで大学の産学連携コーディネーターでもあることを伝えて、大学との接点をお聞きしました。その回答が「大学キャンパス内で開催されるイベントに参加して、先生にお会いしたことがあっても先生とじっくり話したことがない。」というものでした。そこで、まずは大学の先生と話してもらうことから始められればと思いました。そして、同社の社長の関心事をお聞きして、それにマッチした先生をピックアップし、改めて共有しながら、意見交換を行いました。関心の強さで優先順位を付けて、先生訪問を実現させたところ、喜んでもらえました。そこから、これまで10社程度の訪問を実現させ、現在も3社と訪問先の先生の選定の打合せを行っています。

■企業様と先生の関係構築のステップと手段

  共同研究を実現するまでのステップの例として、以下のようなものが考えられると思います。

  1. 大学や先生、大学関係者との接点を持つ。
    接点場面例:セミナーに参加、大学のHPにある技術相談で問合せ 等
  2. その接点を用いて、関係を構築する。(詳しくは後述参照)
  3. 共同研究を行う。(必要に応じて、大学と連携して、補助金を獲得する)

  関係を構築するためにどんな手段があるのかを、産学連携コーディネーターと言う立場で私が実施していることから、いくつかご紹介させて頂きます。

  • 企業様の事業や商品にマッチしそうな研究をされている先生とのご面会
    (※大学発行のシーズ集(例えば、後述の図参照)やネット検索で先生の研究内容を知ることは出来ますが、前述したように、自社とマッチしているかを判断するのは難しいところがあります。そこで頼るべきは、先生の研究を非公開のものも含めて知っている産学連携コーディネーターだと思います)
  • 先生が装置等を試作する場面での支援
    (※新しい研究を行おうとすると、新規の装置が必要になり、装置設計、装置の構成部品の製造&供給、等で支援できる可能性があります)
  • 大学に設置されている技術相談窓口への相談

(※抱えられている技術的な課題、あるいは現場の改善課題など、あまり考えずに大学との接点を持つために相談されてはどうかと思います。それにより、産学連携コーディネーターとの接点が持てるかと思います)
長岡技術科学大の場合:https://ntic.nagaokaut.ac.jp/flow/

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