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「何が『地方』を起こすのか」続報 – ついに日本アニメランドが淡路島に出現
中村稔 (原子力発電環境整備機構) Vol.372
昨年末に国書刊行会から標記の「何が『地方』を起こすのか」を出版してから、半年あまりが過ぎました。
この間、本書の中で紹介している「橘街道プロジェクト」にも様々な動きや反応がありました。この「橘街道プロジェクト」は、1900年前に垂仁天皇の命を受けた田道間守(たじまもり)により不老長寿の実として日本にもたらされた「橘」に関する歴史や文化をたどると壮大かつ魅力あふれる仮想街道が関西一円を中心に浮かび上がることをモティーフに、関西の食文化、ものづくり、観光、ファッション、エンターテイメントなど様々なコンテンツを業種や地域を超えた連携でアジアや世界に発信していくプラットフォームを提供するプロジェクトです。加えて、例えば神戸の「パールパスポート」事業のように既に実現しているプラットフォームとの連携も受け入れることにより、プラットフォームのプラットフォームといった機能も期待されています。本書の出版以降、「橘街道プロジェクト」に関心が高まり、商工会議所などの経済団体や大学等からの依頼で多くの講演も実施しました。
なお、この構想のスタートや推進には、実は、KNS自体が重要なプラットフォームとして大きな役割を果たしているのです。(詳しくは、拙著「何が『地方』を起こすのか」をご覧下さい。)
さて、その「橘街道プロジェクト」の中でも、関西発で日本全国、そして世界に向けたプラットフォームとなり得る夢のプロジェクト「日本アニメランド(NAL)構想」の原型が、「ニジゲンノモリ」(←これで検索)として7月15日に淡路島で実現しました。
ここで、「アニメランドが何故プラットフォームに?」と疑問を持たれる方も多いかもしれません。まず、日本のアニメやキャラクターなどのコンテンツは、火の鳥や鉄腕アトムやブラックジャックといった手塚治虫作品をはじめ、クレヨンしんちゃん、キティちゃん、ポケモン、ワンピースの海賊、などなど、世界的に人気を博しているものがたくさんあります。しかしながら、ディズニーランドのようなリアルの場でバーチャルなキャラクターの人気を拡大再生産する場が一部のキャラクターを除いて何故かありません。ミッキーマウスは、90年前に登場したキャラクターですが、誰も「古いから嫌い。」と言わないのは、ディズニーランドというリアルな場に登場させて、世代を超えて子供からお年寄りまで老若男女を楽しませる仕組みを長年にわたって提供しているからでしょう。では、何故、アニメコンテンツで世界的に人気を博している日本にこうした仕組みがないのでしょうか?
このようなもったいない状況を打破するとともに、日本のアニメコンテンツをプロジェクションマッピングなどの最先端の技術で見せることにより技術のショーケースとしたり、来訪者に地元の食材を使った美味しい料理を食べてもらい食文化のショーケースとしたりするなど、単にアニメだけをコンテンツとするのではなく、そのストーリーと関連させた日本の魅力を見せるプラットフォームとしての機能がNALに期待されるのです。
ディズニーのアニメに必ずしも関心がない人でもディズニーランドに行って楽しむことができるように、日本のアニメコンテンツが目的でない人でも楽しめ、日本の魅力を拡散してもらえる仕組みこそ重要ではないかと考えるわけです。
インバウンドの重要性は、単に外の地域や国から来た人にお金を落としてもらうことだけではなく、その地域の魅力を拡散してもらうこと、それを通じて日本のファンを一人でも増やすこと、その結果として、我が国の経済発展やさらには安全保障の実現に寄与していくことではないでしょうか? 地域の発展は、その地域だけではなく、我が国全体にとっての意味があるということが地域振興の重要性の理由の一つではないか問う所以です。
つまり、地域振興を考えるとき、何をやるのか(WHAT)、どうやるのか(HOW)も重要なのですが、何故・何のためにするのか(WHY)が基本にあるべきだと考えます。戦略(WYH)が間違っていると、その実現のための戦術(WHAT)や方法論(HOW)がおかしくなってしまいます。
何故、地方創生や地域振興なのか、何故、橘街道プロジェクトなのか、何故、日本アニメランドなのか、その答えを「何が地方を起こすのか」に書いたつもりです。
結果的に私の著書の宣伝のようになりましたが、本書の内容には、日々の仕事や生き方のヒントになる話を満載してあり、必ずや皆さんの何らかのご参考になると思いますので、ぜひご一読頂くことを期待する次第です。
加えて、本書の内容に対するご感想やご意見とともに、皆さんにとっての「何が地方を起こすのか」の答えをお聞かせ願えることも期待しまして報告といたします。