Members Column メンバーズコラム

産学官連携は産業振興になくてはならないツール

村井淳 (盛岡市商工観光部)  Vol.249

市役所のすぐ裏を流れている中津川で羽を休める白鳥

私とKNSとの出逢いは,今からおよそ9年前の平成18年。市役所人生,25年目にして初めて産業振興に携わることになってからのことです。
定期人事異動で,商工観光部商工課企業立地推進室に異動。担当は,企業誘致と産学官連携。どちらも盛岡市としてはあまり取り組んでこなかった分野で,配属された「企業立地推進室」もその前年度にできたばかりの部署。市役所の中には精通している職員がいない中でのスタートでした。そうした環境なので,「産学官連携」という言葉さえ知らず,もちろんINSやKNSも知るはずがありません。産学官連携に対する取組は,岩手大学工学部内に盛岡市が「コラボMIU(盛岡市産学官連携研究センター)」を設置することが決まったことから始まったもので,建物の建設はともかく,産学官連携って何をすればいいの?というのが最初の印象でした。

初めてINSの総会・講演・懇親会に参加して,「すゞ禅」の会場,通路も全て使って200人近く参加しての大懇親会に圧倒されたことを記憶しています。確か,その場で堂野さんを紹介され,KNSの存在を知ったのでした。その年の11月,神戸産業振興センターで開催された「KNS定例会&INS in 関西」への参加が,KNSデビュー。INSに比べ平均年齢が低いことと,女性が多いことに驚いたことを覚えています。そして,懇親会。INSもそうですが,懇親会が本番というだけあって,その賑わい・活気のすごいこと。これが関西人パワーか,というような迫力を見せつけられました。あれから,KNSの魅力に引かれ,元気をいただきに1年に1度は参加しておりました。最近は仕事が変わり例会のある月は必ず市議会と重なっていることから,参加できずにおります。うーむ,悔しい。
INSやKNSのいいところは,出逢いの場を提供しているところ。無理してそこで何かを始めようとするのではなく,お酒の場で気軽に話をしながらも,しっかりと次の仕事に繋げていける,そうした場の提供をしているから長続きするんだろうと思っております。
あれから9年。産学官連携は,企業と大学(特に工学系)との共同研究というイメージが強かったのですが,今では,幅広い分野で「産学官+金民」連携が行われています。また,大学の教員のみならず学生が関わってくることでキャリア教育的な面も広がりを見せています。これからの地域振興にとって「産学官連携」は,今まで以上に重要なツールとなっています。今後も積極的な活動を期待するものです。

話は変わって,最近気になっていることを2つ紹介します。
1つ目は,「地方創生」。昨年,元岩手県知事であり,総務大臣も務めた増田寛也さんが執筆した「地方消滅」は,全国に衝撃を与えましたよね。2010年(平成22年)から2040年(平成52年)までの間に「20?39歳の女性人口」が5割以下に減少する市町村を「消滅可能性都市」としたもので,その数896。岩手県では33市町村のうち27市町村がその中に含まれているのです。全国の傾向では,北海道・東北地方で80%,次いで山陰地方の約75%,四国の約65%の自治体が「消滅可能性都市」に当てはまるというもの。ちなみに大阪府では66市区町村のうち14市区町村。あくまでも,このまま何の対策も打たず,今までと同様に人口が推移すればとの話であり,一刻も早い対策を打つ必要があるとのことです。
国では,昨年末に「まち・ひと・仕事創生長期ビジョン」と「同総合戦略」を閣議決定し,緊急経済対策とともに地方創生先行型の交付金を補正予算で計上しました。各自治体では,平成27年度中に地方版の長期ビジョンと総合戦略を策定しなければならないこととなっています。東京一極集中を是正し,地方で若者が働ける場を作り,出産・子育てがしやすい環境づくりを行うことが求められています。産業振興を担当するものとしては,雇用の創出をいかに作っていくかが問われています。それこそ,行政も企業も大学も地域が一緒になって取り組んでいく必要があり,産学官連携の底力の見せ所だと思っております。

2つ目は,ちょっと嬉しいお話。KNSメンバーにも岩手ファンは沢山いて,とても嬉しく感じておりますが,熱烈な盛岡ファンの方が本を出版したことで,地元の新聞でも取り上げられておりますので,ちょこっと紹介させていただきます。
「盛岡さんぽ」という本を自費出版した浅野聡子さん。浅野さんは平成24年に旦那様の転勤で盛岡に転居した方。はじめは何件なのかも分かっていなかったそうですが,すっかりと盛岡の虜になった方。平成26年2月には再び旦那様の転勤で,東京に移られましたが,街が好き過ぎて盛岡にも事務所を構えたとのこと。表紙には「余計なものがない,が揃っている。行ってみたくなる街,盛岡。」とのコメントがあり,岩手山や高松の池も気に入っていただきました。盛岡のよさは生活してみて初めて分かる「暮らし」と密接に関わっているとのこと。そっ,そうなのです。これといった有名な観光地がある訳でもない,人が集まる施設がある訳でもない。でも,街全体の醸し出す雰囲気がいいんだと,自分自身気付かされました。市役所のすぐ裏を流れる中津川には,春は桜が楽しめ,夏は鮎つり,秋には鮭が遡上し,冬は白鳥が飛来する。街のど真ん中でこんな自然を体感できる街はそんなにないですよね。おっと,自画自賛になってしまいましたが,つい,うれしくて紹介させていただきました。
浅野さんのブログのURLは,こちらです。気になったら覗いてみてください。http://moriokasanpo.net/
ちなみに,今年度,27年度から始まる新しい盛岡市の観光推進計画を策定しているのですが,ポイントは「盛岡ファン」を世界に広げる。盛岡を大好きになってくれる方をドンドン増やして行きたいと考えています。「ファンクラブ」を作ったら是非参加してくださいね。

産学官連携は産業振興にとって欠かせないツールですが,真面目な部分だけでは疲れてしまいます。その点,KNSの「必ず飲んで騒ぐ」ということは重要なポイントだと思っております。今後とも,呑みながら,息の長いお付き合いをお願いします。

PAGE TOP