Members Column メンバーズコラム

田舎発のチャレンジ

三澤誠 (有限会社エヌ・イー・ワークス)  Vol.68

三澤誠

 「息子が都会にいるのだが、帰って来いとも言えない…」と言う内容の話
を高齢のご夫婦から聞きました。
 島根県の奥出雲で生活をして事業を営む者として、限界集落の問題や少子
高齢化の問題は目に見えて感じると同時に、子供達や孫の時代の為に今自分
に何が出来るだろうと常に考えさせられます。
 九十歳を過ぎた方が孫のためにと植樹をしたり、東日本大震災で被災され
た方が震災直後に球根を探し出して植えられたりと、今を生きる責任とは将
来に何を伝えられるか、どんな選択肢を次の世代に残せるかではないかと思
います。

 特に農業などは、荒廃した土地を二十年後の子供達が新たに耕すなど容易
ではありませんし、一度その土地を離れた人達を再び呼び戻すことも容易で
はありません。
 新しく物事を始めることのエネルギーと、今あることを継続することのエ
ネルギーを簡単に比較することは出来ないですし、エネルギーの質が違うこ
とはその通りです。
 やりたいことと、やらなければいけないことは本質的に違う事とよく似て
います。
 そのやらなければいけないことと、やりたい事をうまく併せ持った事業こ
そソーシャルビジネスであり、今後田舎ではなくてはならない存在になると
考えています。
 3月11日には国難と言われる東日本大震災が発生しました。
 この様な時だからこそ、普段当たり前のように居る隣人、田畑で農作業を
している人、公園で歓声あげて遊んでいる子供達の為を思い、未来に向けて
自分に出来る取り組みをしなければならないと強く思います。
 そして、それは自分達だけでは完結しないかもしれない、今の時代では解
決しないかもしれないけれど、将来の選択肢を増やせる努力を積み重ねてい
こうと強く誓っています。
 今の子供の世代、孫の世代に何の選択肢も無くしてしまった故郷では淋し
すぎる。
 自らがまがいなりにも経営者として日々感じる事は、経験や知識が乏しい
事は言うまでも無いが、選択肢が無いという事ほど絶望感と無力感に苛まれ
ることはありません。
 自分と言う小さな存在でも出来ることは、最良のものを残すことは出来な
いかもしれないが、選択肢の一つを残せればと思います。
 「所得のない所に定住なし」という言葉を聞きますが、正確に言うと「所
得の無い所に定住出来ない」というのが正しい表現です。
 冒頭にあげた御高齢の夫婦のお話はまさに所得の無い所に定住出来ないと
いう悲しい現実です。
 親は子供に気を使い、子供は両親の事が気になりながらも生活が成り立た
ないので帰郷できない。
 私には制度や法律を変える力は無いが、現金収入を得る手段を創造する事
は出来ると信じてチャレンジを続けています。
 様々なチャレンジを続ける中で、多くの人に出会い、多くの人に教えを頂
き、多くの人に支えられてきました。
 この夏から田舎だからこそできるビジネスを立ち上げ、地域の多くの方に
現金収入を得る場を提供できるように頑張りたいと思います。
 若い時や進学などで都会に行きたい気持ちもよく理解できます。
 帰って来たい時に帰ってくる事が出来る田舎、帰って来て欲しい人に帰っ
ておいで!と言えるいなか故郷を創りたい。
 地域にとって最良の事は出来ないと思いますが、将来この地域を担う子供
達や孫の世代が、この地域で生きていく為の「術」の一つの選択肢になるよ
うな事業にしたいと思います。
これからも田舎発のチャレンジを続けて参ります。

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