Members Column メンバーズコラム
丹波焼の魅力を伝えたい
松田きこ (株式会社ウエストプラン) Vol.199
KNSのみなさん、こんにちは。
KNSには初期の頃から参加させていただいてますが、あまりお手伝いもできずに心苦しく思っています。
さて、私がここ何年かで一番関わりが深い場所、というと丹波篠山です。
といっても一つのまちではなく、兵庫県の丹波市と篠山市のエリアです。
ガイドブックの取材がきっかけで、地元の観光や企業のPRに関わらせていただいてます。自然が多くて、食べ物が美味しくて、もちろんKNSのテーマの一つである「必ず飲んで騒ぐ」を実行するための地酒も美味しい土地なのです。
月に何度も通ううちに友人知人も増え、「音楽と地酒」「古民家貸し切り大宴会」「手打ち蕎麦とジビエ」などのテーマで、関西の仲間を案内するプログラムも自然にできてきました。その中で昨秋開催したのが「丹波焼体験と地酒」ツアーです。
丹波焼というのは瀬戸・常滑・越前・信楽・備前と並んで「日本六古窯」と呼ばれる陶磁器の産地で焼かれるものです。かつて立杭焼と呼ばれていたといえばピンとくる方も多いのではないでしょうか。篠山市の南端、三田市に隣接する場所で、今から800年ほど前、平安時代の終わりから鎌倉時代のはじめごろに作陶が始まったといわれています。当時は農閑期を利用した手内職みたいな位置付けだったのでしょう。記録が残っていないため、詳しいことはわからないそうです。
江戸時代の末には100軒ほどの窯元があり、陶磁器の産地として栄えていました。減ったとはいえ、今でも南北6kmほどのエリアに約60軒の窯元が工房を構えています。代々の窯元に加え、最近は新たに弟子入りする若い陶芸家が増えている町です。
さて、今回のツアーは11月のとある土曜、JR篠山口駅に集合した10人(KNSメンバーもいます)は車2台に分乗し、まずは昼食を予約した薬膳料理の店「おかげさん」へ。といっても田畑に囲まれた普通の民家です。ご主人が自給自足で作ってくれた完全無農薬のベジタリアン料理をコースでいただきます。煎り玄米でダシをとった野菜スープに始まり、季節の釜飯まで全8品。1日1組だけの完全予約制、朝2時起きで一人で用意してくれたご主人に感謝しつつ、運転担当以外はもちろんお酒も。
次はいよいよ陶芸体験。今回は特別に初心者にもかかわらず、ろくろを体験させてもらうことができました。お願いしておいた雅峰窯に到着すると、壺市、陶勝窯、丹文窯の作家さんも来てくれて指導が始まります。参加者は料理関係の仕事をするなどグルメな人が多く、作りたい器がはっきりしているので大変です。自分の実力以上のものを作るわけですから……。大騒ぎの中、作家さん達の丁寧なお手伝いのおかげで成形することができました。土の感触、回るろくろのリズム、陶芸にハマる人の気持ちがわかります。
この日の体験は成形まで。彩色、焼成、乾燥は作家さんにお願いして、1ヵ月半後にお披露目となります。陶器の焼成は電気窯、ガス窯、登り窯と3種類あるのですが、この日はたまたま「立杭陶の郷」の登り窯に火が入るということで、そちらに見学に行くことになりました。
山の勾配にそって作られた登り窯に松薪がくべられ、小窓から黄色の炎に包まれる器が見えます。煙突からは黒い煙が炎とともに噴き出し、松薪の香りがあたりを包みます。交替で寝ずの番をして、登り窯は3日間かけて器を焼き上げます。そのあと24時間自然に冷めるのを待って、焼きあがった器を取り出します。先日、別の窯元でまだ温かいできたての器にふれた感触が忘れられません。
「立杭陶の郷」は陶芸体験、古丹波の展示、現代の作家作品の展示、ショップ、レストランがある施設ですので、丹波焼のことを知るにはまず立ち寄られたらいいと思います。
さて、ランチ、陶芸体験ときたら、次は夜の宴会に向けて買い出しです。
お待ちかねの蔵元訪問は、「立杭陶の郷」から車で10分ほどの「狩場酒造場」。蔵の近くにある田んぼで自家栽培する山田錦と清らかな伏流水で、丹波杜氏が寒仕込みする日本酒です。今季の新酒発売日ということもあり、試飲の段階ですでにメンバーは盛り上がっています。
宿泊は山の中にある茅葺き屋根の古民家「天空農園」。
築250年、土間があり、おくどさんがあり、囲炉裏がある、立派な古民家。ですが、昔ながらの設備を懐かしむ世代ではありません。便利さに慣れた私たちが泊まるには理由があって、実はおくどさんもあるけどIHのキッチンもあります。五右衛門風呂の形をしていますが、ワンタッチでお湯はりができます。
そんな快適かつレトロな環境で、合流した陶芸家さんたちと共に囲炉裏を囲んで深夜まで宴会が続いたのでした。
ふと外に出てみると、満天の星空。夜風の冷たさも心地よく、澄んだ山の空気に癒され、さらにお酒が進む私達でした。
1月末、焼きあがった器を届けに来てくれた作家さん達と、噂を聞きつけた仲間も加わって30名ほどのお披露目会を大阪で開きました。自画自賛の力作ばかり、やっぱり手づくりの器っていいですね。
実は我が家は阪神淡路大震災の時に、愛用の器が全滅。当時は買いそろえる気力も起こらず、実家の物置にあったもので間に合わせたまま今に至っています。丹波焼に出会ってから少しずつ作家さんのものを集めるようになり、落ち着いた風合いの器が食卓に増えてきました。
伝統工芸を受け継ぎ、異業種とのコラボレーションに挑戦しながら、新たな魅力のある器を後世に伝えようと努力している丹波焼の作家さん達。彼らとの交流から大きな刺激を受け、これからも丹波焼のファンとして応援していこうと思っています。
2月3月は、陶芸家と作品の魅力を伝えるイベントを大阪で計画しています。ぜひ皆さん足を運んでくださいね。次の定例会で丹波焼の魅力を発表したいと思います。
●丹波焼ファンサイト
http://tanbayaki.net/
●ウエストプランの近況はこちらへ
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