Members Column メンバーズコラム

ほんとに大変だったベトナムでの骨折入院ドキュメンタリー、金!金!金!!!!!

久保修 (Topdas株式会社)  Vol.435

久保修

こんにちは、Topdas(株)(トプダス)の久保修です。
私は11年前からビジネス出張でベトナムや近隣東南アジア各国に訪問しはじめ、昨年8月大阪からベトナム南部の経済都市ホーチミンに移住しました。

今回の記事は、海外ですべって転んで骨折入院、手術と病院のお世話になった最近の話です。海外に行かれる機会がある方にはちょっとはお役に立つ内容です。

今となっては笑い話ですので、あーあ可哀想にと読んでやってください。その時の本当の大変さを詳しくドキュメンタリータッチで報告します。

突然その日はやってきました。
長年海外に出かけて活動しているのですが、幸いにもこれまで一度も事故や大病を患ったことがありません。でもとうとう私にも不幸が降りかかってきました。

ベトナム中部のフエという世界遺産がある地方都市に出かけた今年10月13日土曜日の夜。そう、つい先月のことです。あいにくの雨模様で降ったり止んだりの中、レンタルバイクに乗ってあちらこちら観光して、ショッピングセンターに立ち寄った帰りのことでした。

出口のツルツルした床が雨に濡れて滑りやすくなっていたので、注意していたのですが、それでもつるっと足を滑らせてしまい、しりもちをつくように転倒、その際に左手首一本で支えようとしたのか、ポキッとやってしまいました。

骨折は初めてでしたが、瞬間的にこりゃ折れたなと自分でもわかりました。見る見るうちに左手首が膨れ上がり、明らかに段ズレしてしまっていました。

◆もしあなたが外国で、この状況になったとしたら、先ずどうしていたと思いますか?
想像してみてください。
・ベトナム語しか理解出来ない、少し離れた場所にいる見知らぬ誰かにどうやって助けを求めるか思い浮かびますか?
・もし掛けていた海外旅行保険の日本語対応窓口があったとして、直ぐに連絡先は出てきますか? ケガをしているその住所さえわからない場所で、どうやって伝えましょうか。

私は、どの方法も中途半端に頭の中にありましたが、いざという時に全く使える状態ではなかったことが、この事故でハッキリわかりました。
実は、ベトナムでもホーチミン市内なら、人も多いし、知人やお店など日本語や片言英語で何とかなるので、油断していたのです。

■不幸中の幸い
幸いにも今回、会社のベトナム人スタッフ2人と一緒に休日を過ごしていまして、1人はここフエの町出身20歳女性Yさんだったので、直ぐに夜間救急のある総合病院に電話して診察予約してくれ、ショッピングセンターに置いたままのバイクと荷物は友達に引き取りを頼んでくれました。もう一人はハノイ出身男性N君29歳でフエのことは私と同じくらいしかわかりませんが、職業が日本語教師。
複雑に分担されている病院の担当者との通訳がとても助かりました。

私が1人で買い物に来てこの事故に合ってたらどうなっていたのか?言葉の通じない人ばかりの中で、誰が病院まで連れて行ってくれただろうか? 連絡できずに閉店したショッピングセンターの駐車場に置いたままのバイクと荷物は無事だったでしょうか。
考えただけでも恐ろしいです。

さて、ここからまだ次の残念ステージがあります。

それから10分くらいでタクシーがつかまり、乗って約5分でフエの中央病院の救急医療に到着。一旦治療室に入るよう促されるも、外国人だとわかると、ここじゃない!あっち!と指さされ、出てきた私を見てスタッフが確認してくれたところ、この病院に隣接する場所にインターナショナルホスピタルがあるから、玄関の電動カートに乗せてもらって移動してとのこと。タバコをふかして談笑している運転手に声掛け、ゴルフ場の電動カートの荷物運搬用みたいなのに乗せられ、小雨降る中、振り落とされそうな猛スピードで移動。ガタガタ道路の振動が傷の痛みを3倍増にし、気絶するかと思ったギリギリに到着。

とりあえず、夜間診療受付のそばの椅子に座れというので痛みを堪えて待っているけど、5分経ち、10分経ち、看護師や当番医みたいな人はいるのに誰も怪我の状況を見に来ない。
そしてようやくうちのスタッフと共にやって来た婦長さん風のおば様に、通訳された最初の言葉がコレ

その1
「お金が要ります。
デポジット入金がないとここでは診察出来ません」

→あるよ、払うよ、いくら?

「先ず、300万ドン(約15000円)」

→分かった分かった、だから早く手当してー(心の声)

その2
「先に会計窓口に行って払った証明を持ってきてください」、と車椅子が用意されました。
真っ暗な隣り病棟の奥までベトナム人スタッフに押してもらって、会計係を叩き起こして何とか手持ち現金でお支払い完了。
戻ってようやく治療かと思いきや、
「外科医を予約したので、来るまで1時間ほど血圧や体温測って待ちましょう、、、」

予定よりやや遅れて、外科医登場。
カップラーメン喰った直後のような香りと証拠のつまようじ

その3
見て少し触って3秒
「これは骨折していますので、手術が必要です。どうしますか!」

→素人でも骨折したことわかるわ!早よしてくれ(心の声)

→はい、お願いします。

その4
「手術にはお金が必要です。
今から見積もりを作らせるので、その額を会計窓口で払って証明をもらってきてください」

「これが見積りです。
骨折手術費用として6000万ドン(約30万円)!!!
その額を会計窓口で払って証明をも、、、 」

→わかったわい! 払うがな(心の声)
また車椅子で会計窓口、手持ち現金がないので今度はカードでお支払い。

その5
「では、手術スタッフを集めますので、2時間後に開始します。」
「手術は麻酔を使いますか!使いませんか!」

えーーー?麻酔無しでする人おるんか? (心の声)
→使ってください。

ここまででお分かりのように、保険会社からもらった、文章で詳しく書かれた英語のガイドブックをもし持っていたとしても何の役にも立っていません。あれは、後々の問題を回避する保険会社保護ブックのようなものですね。(すいません、保険会社さんを敵に回すつもりはございません)

そして、その夜は手術室に運ばれてから、直ぐに麻酔で眠らされ、手術も無事終わったようで起きたのは救急病棟の一室。眩しい朝日に起こされました。ほとんど痛みもなく、昔みたいに石膏で固める様な事は必要ないみたいで、普通のケガで包帯が巻かれているのと同じくらい軽いです。最近は、骨にプレートをボルト留めして埋め込んでいるので、外部の固定具は要らないようです。でも一年後にプレートを取り出す手術をすると聞いてゾッとしています。

私が起きたのを確認すると、看護師さんがN君を連れてやってきました。「手術は無事に終わりました、良かったですね。」と、言ったのかと思ったら、

「手術費用とこれからの入院費でお金が足りません。あと2000万ドン(約10万円)追加で払ってもらわないと、薬が出せません。」

→、、、払うけど、その前に患者にかける労いの言葉があるやろ(心の声日本人代表)

→はい、でも器具に繋がれたこの状態でどうやって、遥か彼方の会計窓口に行くの??

それは私にはわかりません。払ったら証明書をもらって来てください。

→はい。

結局、ベトナム人スタッフN君を信じてパスワードを教えるしかなく、とりあえずそれで支払いを済ませましたが、これでいいのか?他の仕組みはないのか?病院セキュリティ。

翌日まで点滴器具がくっついていましたが、それ以降、退院までの約一週間は、朝昼晩の薬と抗生物質の注射、一日2回のリハビリテーションというパターンで過ごしました。

担当医は多分3人いて、毎朝一番に5、6人の看護師や研修医を連れて笑顔で来る偉そうな方、そしてリーダー的で賢そうな方、あとは新米の若造医。

退院時に、またひと悶着ありました。
金曜日の朝に来た偉いさんが、明日には退院できるでしょう、おめでとうと言い握手を求められ、その午後に確認に来たリーダー医も、OK!明日で退院です、と。

ところが翌日土曜の朝、薬と注射をしに来た看護師に、退院は今日の午後ですか?と尋ねたところ、いいえまだですよ、と言う。知らないんだと思って、確認するようにお願いしたら、しばらくして若造医がやってきて、傷の状態を見て今日は退院できません、と言う。

おかしいやろ!ちゃんと上司2人に確認しろ!と納得がいかない感情を露わにして通訳してもらいましたが、今日と明日は上司2人は休日で連絡が取れません。明日は日曜なので会計も閉まっていますから、最短でも月曜日になります、と。

入院費も追加でかかるし、増してや仕事先に3人抜けた穴をまた日延べ連絡するのも恥ずかしい。とは言え、弱者には待つしか選択肢はなし。(超ストレス)

耐えて耐えて月曜の朝。
看護師がうちのスタッフN君に何か話している。そしてこちらにやってきて、

「退院が伸びたのでお金が不足しています。
とりあえず、2000万ドン(約10万円)入金してください、、、」

→(もう、やけっくそで)はい。
支払い完了。

「退院は、今日の午後2時の予定です。」

午後2時、、、2時半、、、3時、、、誰も来ない
スタッフN君に尋ねてもらうと、

「入院費の単価の入力をベトナム人と間違えていまして、外国人は高いランクなのであと少しお金が足りません。」

→何だとー!これまでの経緯をちゃんと説明して欲しい。そして、これを払えば今すぐ退院できるのか約束して欲しい、と私カンカン!

また、会計に行って支払い。
金!金!金!金!金!!!
退院出来たのは、午後5時半過ぎでした。

そこから、手配された相乗り定員オーバーの白タクに乗って3時間、ようやくアパートにたどり着いたのでした。

海外旅行保険をしっかり掛けてるから安心などと安易に考えていてはいけませんでした。
保険内容充実、安心の日本語対応24時間サービスの海外旅行保険に加入していたとしても、この病院とのお金のやり取り交渉は、先ず無理でしたね。
日本の自動車保険の示談交渉サービスが手厚くなったように、海外で困ったら電話一本で丸投げ多言語緊急医療サポートサービスが受けられるといいですね。

いやはや、一人だとどうなっていたことやら、、、
皆さんも、保険掛けて安心ではなく、使う場面を想定してから出かけてくださいね(終)

PAGE TOP