Members Column メンバーズコラム
ビジネスライブラリアン講習会と私
小林隆志 (ビジネス支援図書館推進協議会) Vol.551
私の所属しているビジネス支援図書館推進協議会(以下BL協議会)が誕生したのは2000年の仕事納の日、12月28日の夕方五時を過ぎたころ、場所は当時の通産省の一室であったと聞いています。実質活動が始まったのが翌2001年と数えるなら、今がちょうど20年を経過したことになります。もう20年という気持ちと、まだ20年という両方の感想を持つわけですが、この節目に、今回、KNSのメンバーズコラムの執筆をさせていただくことになったのも何かの縁と感じ、鳥取県のビジネス支援図書館草創期の記憶を活字にしておきたいと思います。
私が最初にBL協議会と関わりを持ったのは2004年。図書館員が、ビジネス支援に取り組もうとするときに必要な力を要請するための講座、『ビジネスライブラリアン講習会(以下BL講習会)』に参加したことでした。この講習会は、今のように全国から幅広く受講生を募集する形ではなく、静岡市と静岡県の図書館職員のビジネススキルの養成を目的に開催されたものでした。
静岡市立御幸町図書館は、ビジネス支援サービスに本格的な取組む図書館であることを宣言して、2004年に静岡駅近くの再開発ビル『ペガサート』の4階・5階で開館しました。この図書館の最大の特徴(武器)は、6階・7階に位置する産学交流センター『B-nest』に隣接していたことです。『B-nest』は、起業支援、経営支援等を目的に創られた機関です。これは、偶然この組合せになったのではありません。起業しやすいまちづくりを実現するための支援機関としての『B-nest』。起業に際して様々なツールを活用できる情報源としての図書館。計画段階からこの2つの機能の相乗効果を意図して建設されました。図書館には、商用データベース等が整備されるとともに、その活用の仕方のアドバイスができるサーチャーの資格をもつ職員が配置されたのも画期的なことでした。そう、図書館はツールを揃えておけば活用されるというふうに単純なものではありません。もちろん、ツールを揃えることは大切なことですが、それを使いこなして必要な情報を取り出すためには、それ相応のスキルが必要です。この部分を補うためにと職員の養成を目的に開催されたのが第一回のBL講習会でした。定員20名。圧倒的に多くの割合を占めたのはもちろん静岡市、静岡県の職員で15名。残りの5名が全国から集まった同志ともいえる図書館員たちでした。5名の所属は、足立区立竹ノ塚図書館、奈良県立図書情報館、岡山県立図書館、宮崎県立図書館、そして鳥取県立図書館です。私はこのBL講習会に静岡県内の図書館員だけの参加者ではなかったことが奏功して、現在のようにビジネス支援に取組む図書館が全国に広がっていったと思っています。実際、しばらくすると5つの図書館から確かな改革の歩みや成果を耳にするようになり、互いに刺激し会いながら進化してきたように思います。この学びを場を与えてくださった静岡の皆さんには感謝の気持ちで一杯です。
2004年に始まったBL講習会は、現在も開催されています。今年度は、去る2月15日16日、22日23日の4日間、完全オンラインの形で開催されました。愛知県安城市で開催された昨年の第19回の講習会は、ぎりぎりコロナウイルス感染拡大の影響を免れて、集合研修の形で開催されたので、リモートによる4日間にもわたる研修は協議会にとって初めての経験でした。講習会のメインプログラムであるグループワークをどう実現するか。全ての研修プログラムを生配信することは難しいので、オンデマンドの配信とどう組み合わせるのか、また、オンデマンドの配信をただ聞くだけに終わらせないで、気持ちを入れて受講してもらうために、どのように課題を設定するか。そもそも受講生は確実に受信できるのか、配信側は問題ないのか、などなどなど課題山積だったようです。実際、受講生も大変だったと思いますが、講師もそれなりの準備をしなければならず、慣れない環境の中での開催となりました。全ての講習が終わった後での意見交換では会長の竹内教授(電気通信大学特任教授)から、過去最高に教育効果が上がったとの総括があり、皆がほっと胸をなでおろしました。昨年の2月3月の頃を思い出すと、今のリモートによる会議が当たり前になっている状況は全く想像できていなかったと思います。
怪我の功名というと、コロナの影響で大変な思いをしている方に失礼かとも思いますが、この社会状況になったからこそ、自分自身が身に付けるスキルもあるのだと実感します。
私が受講生であった第一回目の開催からこの研修会の総受講者数を数えると、今年度の受講生を含めて550名を超えました。この研修会で学ばれた知識や経験や人脈が、全国各地で真摯に図書館の改革に取り組む皆さんが次の一歩を踏み出す時の力になればと願うばかりです。
この原稿では、ビジネス支援図書館を実現しようとする協議会の職員養成の研修会について紹介させていただきました。詳しくは、下のリンクをご覧いただいて、内容をご確認いただけたらと思います。多くの支援機関の皆様が所属されるKNS。プログラムの内容、カリキュラムの編成などご意見をお聞かせいただけたらありがたいと思います。
本年度から鳥取県商工労働部産業支援課先端技術推進担当として勤務しています元鳥取県立図書館の小林隆志の散文でした。最後まで読んでいただいてありがとうございます。
令和2年度の研修会のプログラムはこちらです。
⇒ http://www.business-library.jp/2020/10/23/20blseminar/
写真は愛知県安城市で開催された第19回のBL講習会の様子です。