Members Column メンバーズコラム

図書館でビジネス支援その後、『情報ナビゲーター交流会』について

小林隆志 (鳥取県立図書館)  Vol.459

昨年度、第7回情報ナビゲーター交流会のパネルディスカッションの様子

 『図書館は、本来様々な仕事に関連する情報が集積している所』、『図書館の職員の大切な仕事は、様々な情報を探していらっしゃるお客様と一緒に必要な情報を探すこと』という公立図書館の基本的な機能やビジネス支援図書館の国内における動向については、2011年3月に出版された『現場発!産学官民連携の地域力』の中で紹介させていただきました。今回、コラムの原稿を書く機会をいただいたので、私とKNSとの関係を元に生まれたその後の企画について紹介させていただこうと思います。

『定例会の大規模プレゼン大会をヒントに、情報ナビゲーター交流会を開催』
 図書館には、多くの皆さんが日常的に利用する公立図書館の他に、様々な背景を元にして設立され、特別な資料群を所蔵している専門図書館と呼ばれるものがあります。一般の皆さんには馴染みが薄いのかも知れませんが、専門図書館を束ねる組織として、「専門図書館協議会」という組織も存在します。5月3日時点でHPを確認すると正会員数は343館となっており、名前が掲載されている館の中には、味の素株式会社大阪支社が運営する「食のライブラリー」や「大阪産業労働資料館(通称:エルライブラリー)」、公益財団法人日本証券経済研究所が運営する「大阪研究所証券図書館」等の館名が見られます。専門図書館の中には企業が運営するものや議会図書室なども含まれますので、利用制限がある図書館もあるのですが、味の素株式会社のように、社会貢献事業の一環として図書館の運営をしている場合もあります。
 これらの専門図書館の多くは東京・大阪等の都市部に集中して立地しており、地方で生活する我々(筆者は鳥取県在住)が日常的に利用するのは難しい状況にあります。この特別な資料群や各館のもつ機能を地方でも使える環境を整えたい、そのことが地方の公立図書館の機能を向上させるだけでなく、専門図書館にとってもサービス対象を来館者に留まることなく全国に広げられることでその存在価値を高めることにつながるはずです。お互いがWin×Winとなる関係を築けるはず、そう信じて始めたのが『情報ナビゲーター交流会』です。図書館の世界では、公立図書館、専門図書館、大学図書館等、館種を越えた図書館の連携が重要であるということは、古くから指摘されているのですが、互いの機能・価値の向上を意識して意図的に連携強化を図っている事業というのは無かったといっても過言ではないように思っています。(全国図書館大会などが開催される折には、様々な館種の職員が全大会では一堂に会するのですが、分科会になると専門図書館は遠く離れた別会場というような笑えない経験を何度もしました。)
2011年に『第一回産学官民情報ナビゲーター交流会』と銘打って開催したこの会は、記念講演と公立・専門それぞれの図書館のミニプレゼン、そして最後が大交流会とどこかで聞いたことのあるような構成で開催しました。そもそもイベント名に『産学官民』という言葉が入っていることからもお分かりのことと思いますが、KNSで行われている定例会の大規模プレゼン大会の手法をそっくり真似させていただきました。
「記念講演は参加者の学びに対する満足度を上げるために旬な講師に旬なテーマでお話しいただく。プレゼン大会はお互いが何をしているのか、何を考えているのかを知り合うためのきっかけを提供してもらう。1機関の発表は10分間。最後の大交流会は、ミニプレゼン大会では分からなかった各館の詳細な活動や利用の仕方を、お酒を飲みながらやり取りする。」こんな構成です。
記録をみると当初は参加者70人という規模だったようですが、会を重ねる毎に参加者も増え、昨年の第7回の交流会では、北海道から沖縄まで全国各地からの参加者を得て、総勢150名規模の会に成長させていただきました。手法としての大規模プレゼン大会の構成が受け入れられたということもあると思いますが、図書館の世界で、公立図書館と専門図書館の連携強化の機会が求められているという事実を証明するものでもあると考えています。
 今年の第8回情報ナビゲーター交流会は、5月25日(土)に東京都港区南青山二丁目の公益財団法人日本交通公社が運営する『旅の図書館』を会場に開催する予定です。詳細はビジネス支援図書館推進協議会のHP内に掲載していますので、興味を持っていただいた方は御覧いただければと思います。 → http://www.business-library.jp/

 第1回 – 第8回まで開催会場は全て東京でした。全国から集まりやすいということや、専門図書館の数も多いという理由でこうしてきましたが、関西にも専門図書館は存在しますし、将来的には、関西での開催も考えていきたいと思っています。機運を高める一つの方法として関西近郊の公立図書館の職員を誘ってKNSのプレゼン大会に参加し、発表者としてもエントリーしてもらうというような地味な働きかけもつづけてきました。いつかやるではなくて、近いうちに必ずやるという気持ちでこのイベントに係っていけたらと思っております。KNSのメンバーの皆さんに御登壇いただいたり、参加者として顔を見せてくださったりと様々応援いただいておりますが、今後とも優しく見守っていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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